後期高齢者医療制度が自民党に致命傷(小野盛司)
(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第74弾です。)
自民党も福田内閣も支持率の低下が止まらない。福岡政行氏が週刊朝日5月23日号に書いた記事によると、福田首相で衆議院選を行った場合、自民党は現有議席305から189議席にまで議席を落とし、麻生首相で闘っても212議席にまで議席を減らすそうだ。先日、衆議院山口2区補選で民主党の平岡氏が大勝したが、与党支持層から民主党へ投票したその理由を調べたら、圧倒的に後期高齢者医療制度が多かった。つまり、この制度が自民党に致命傷になったようだ。
この制度は2年前小泉氏が首相の時に決めたものである。小泉構造改革の実体が、だんだん明らかになってきた。要するに、国が国民に渡すお金を少なくすればするほどよいという、小泉氏の単純思考だ。高齢者は金がかかるから早く死んでくれと言っているような印象を受ける制度だ。死に際に、どこで治療を打ち切るかを、老人にアンケート調査をさせるという。医療費削減にここまでやるのかとあきれてしまう。
この問題を議論するには、経済だけでなく、人間は何のために生きるのか、幸せとは何かという根本問題を避けて通れない。哲学的な議論をするつもりはない。あくまで科学的に人間を見つめたときの議論である。その答えは進化論から得られる。人間は進化が生み出した一生物である。どのような行動をする生物が進化的に有利なのか、シミュレーションで探ることができる。結論から言えば、人間が生きる目的は、すべての他の生物を同じで、「子孫を残すこと」であり、その目的に貢献できたときに、人は幸せを感じ、そうでなかったときに不幸と感じる。このことに関し、説明し始めたら長くなるので、もっと詳しくは『人間の行動と進化論』小野盛司著
http://www.tek.co.jp/president/intro.html
http://www.tek.co.jp/book.html
を見て頂きたい。
若干、混乱を招く議論がドーキンスによる「利己的な遺伝子」だ。ノーベル賞に最有力と噂されるドーキンスだが、利己的という言葉の意味を誤用しており、そのことも詳しく『人間の行動と進化論』で説明し、国際会議(IUSSI(2002))でも発表した(Group selection vs. mutation balance can explain the occurrence pattern of selfish phenotypes:a computer simulation model for the parthenogenetic ant.)。
人は、長く生きれば、それだけで幸せになるということでもない。植物人間になり、人工呼吸器をつけて、何の意味もなく苦しみに耐えながらひたすら延命治療を望むわけでもない。しかし、国の財政が厳しいから、お前の治療はここまでにして、早く死んでくれと国に言われれば国民は猛反発する。日本経済をここまで発展させてきた人たちに、そういう扱いをすべきではない。「子孫を残す」という意味で、一定程度の貢献をした後は、次の世代にバトンを渡す。すべての生物は、次世代にバトンを渡しながら、生き残っているのであり、個体が永遠に生き続けようとしている訳ではない。人生の中で、やらなければならないことはたくさんあるが、死ぬことは、その中の一つである。しかし、最終医療の段階で、一律の医療費抑制の話が登場したら、大変な反発が出ることを覚悟すべきだろう。
では、どうすれば人間は幸せになれるのか。お金を刷って、75歳以上の老人はすべて医療費をタダにすればよいのだろうか。それは何の解決にはならない。そうしたら、病院はどこも老人であふれ、患者は長時間待たされ、重い患者も十分な治療を受けられなくなるだけだ。お金だけの問題ではないのだ。医者の数も、病院の施設も限られており、それを有効に利用する仕組みを作ることが重要になってくる。
どうやれば有効利用ができるか。その鍵を握るのが医療のIT化だ。医者や看護師が行っている医療行為のうち、コンピュータができるものをコンピュータにやらせる工夫をしていかなければならない。そのためには患者のカルテの電子化が重要な第一歩だ。厚生労働省は01年、「06年度に診療所と400床以上の大規模病院での普及率6割」という数値目標を掲げたが、導入のピッチはそれよりずっと遅い。その理由はコストがかかりすぎるということ。システムを各病院ごとに作らせるのでなく、国が標準仕様で作りサーバーを一括管理し、端末を病院に安く使用させればよい。
個人の病歴、家族の病歴、アレルギーの有無、各種検査結果、DNAのタイプ等の情報をそのサーバーで一括管理したほうがよい。個人情報保護ができるのかということが議論されるだろう。確かに超えなければならないハードルは高い。しかし、我々がより良い医療サービスを受け続けるための絶対条件であり、何としてもこのハードルを越える努力をすべきである。それによるディメリットより、メリットのほうがはるかに大きいことは、必ず理解されるときが来る。
電子カルテが普及し、個人のデータが十分蓄積されたら、次は診断システムである。インターネットにつなぎ、病状を入力すれば、その人のデータを基にコンピュータが適切な指示をしてくれるシステムだ。十分なデータと、最新の医薬に関する情報が入れば、診断は通常の医者の診断よりも正確だというレベルにするのは容易なことだろう。そうであれば、医者に行かなくても、インターネットに接続されたコンピュータさえあれば、自宅から診断してもらえる。コンピュータは入力された情報に基づいて、救急車を呼べとか、暫く寝ているだけでよいとか、市販のどの薬を飲めとか、あるいはどの病院のどの医者と相談せよとかの指示を出す。コンピュータの入力が苦手な人もいるかもしれないが、合成音声と音声認識の技術を使えば、普通に人と会話するように、コンピュータと会話するだけで、キーボードに頼らなくても良くなる。もちろん完璧なレベルに達するには時間が掛かるが、これは確実に進歩していく。
もちろん、病院で医者に診察を受けることが無くなるわけではない。コンピュータによる予備検診の後、コンピュータが詳細な分析を行い、その結果を持って医者の診察を受ければ、医者もより高度な診断が可能となる。この診断システムは、医者の負担を軽減し、収入増にもつながり、本当に必要な医療サービスに医者が専念できるようになる。
このように、一つ一つ人間が行っている仕事をコンピュータに覚えさえ、コンピュータに替わりにやってもらうようにすることが、医療サービスの質も向上に繋がってくるし、医療費削減も可能となる。そのようなシステムの開発に金が掛かりすぎるということであれば、その部分は刷ったお金を使えばよいということだ。
政府は75歳以上の老人を一般の人と切り離して医療保険制度を作り、75歳以上の老人向けの健康保険料をこれからどんどん上げていくつもりのようだが、老人いじめをやっているようでは、自民党の未来は無い。コンピュータの活用により、より高度な医療が、より多くの国民に受けられるように努力すべきだ。
コンピュータの進歩は早い。今世紀中にロボットはほとんどの能力で人間を上回ることは間違いない。ロボットが提供する医療サービスも例外ではなく、それを前提で医療を改革していくべきだ。
“おしらせ”
明日(5月21日水曜日)は日本経済復活の会・第51回定例会があります。憂国のエコノミスト・紺谷典子先生です。小野盛司会長のお話もあります。読者さんもこぞってご参加ください。(神州の泉)
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日本に希望を与える信念の男、城内実
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