2008年5月20日 (火)

後期高齢者医療制度が自民党に致命傷(小野盛司)

(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第74弾です。)

 自民党も福田内閣も支持率の低下が止まらない。福岡政行氏が週刊朝日5月23日号に書いた記事によると、福田首相で衆議院選を行った場合、自民党は現有議席305から189議席にまで議席を落とし、麻生首相で闘っても212議席にまで議席を減らすそうだ。先日、衆議院山口2区補選で民主党の平岡氏が大勝したが、与党支持層から民主党へ投票したその理由を調べたら、圧倒的に後期高齢者医療制度が多かった。つまり、この制度が自民党に致命傷になったようだ。

 この制度は2年前小泉氏が首相の時に決めたものである。小泉構造改革の実体が、だんだん明らかになってきた。要するに、国が国民に渡すお金を少なくすればするほどよいという、小泉氏の単純思考だ。高齢者は金がかかるから早く死んでくれと言っているような印象を受ける制度だ。死に際に、どこで治療を打ち切るかを、老人にアンケート調査をさせるという。医療費削減にここまでやるのかとあきれてしまう。

 この問題を議論するには、経済だけでなく、人間は何のために生きるのか、幸せとは何かという根本問題を避けて通れない。哲学的な議論をするつもりはない。あくまで科学的に人間を見つめたときの議論である。その答えは進化論から得られる。人間は進化が生み出した一生物である。どのような行動をする生物が進化的に有利なのか、シミュレーションで探ることができる。結論から言えば、人間が生きる目的は、すべての他の生物を同じで、「子孫を残すこと」であり、その目的に貢献できたときに、人は幸せを感じ、そうでなかったときに不幸と感じる。このことに関し、説明し始めたら長くなるので、もっと詳しくは『人間の行動と進化論』小野盛司著
http://www.tek.co.jp/president/intro.html
http://www.tek.co.jp/book.html
を見て頂きたい。

 若干、混乱を招く議論がドーキンスによる「利己的な遺伝子」だ。ノーベル賞に最有力と噂されるドーキンスだが、利己的という言葉の意味を誤用しており、そのことも詳しく『人間の行動と進化論』で説明し、国際会議(IUSSI(2002))でも発表した(Group selection vs. mutation balance can explain the occurrence pattern of selfish phenotypes:a computer simulation model for the parthenogenetic ant.)。

 人は、長く生きれば、それだけで幸せになるということでもない。植物人間になり、人工呼吸器をつけて、何の意味もなく苦しみに耐えながらひたすら延命治療を望むわけでもない。しかし、国の財政が厳しいから、お前の治療はここまでにして、早く死んでくれと国に言われれば国民は猛反発する。日本経済をここまで発展させてきた人たちに、そういう扱いをすべきではない。「子孫を残す」という意味で、一定程度の貢献をした後は、次の世代にバトンを渡す。すべての生物は、次世代にバトンを渡しながら、生き残っているのであり、個体が永遠に生き続けようとしている訳ではない。人生の中で、やらなければならないことはたくさんあるが、死ぬことは、その中の一つである。しかし、最終医療の段階で、一律の医療費抑制の話が登場したら、大変な反発が出ることを覚悟すべきだろう。

 では、どうすれば人間は幸せになれるのか。お金を刷って、75歳以上の老人はすべて医療費をタダにすればよいのだろうか。それは何の解決にはならない。そうしたら、病院はどこも老人であふれ、患者は長時間待たされ、重い患者も十分な治療を受けられなくなるだけだ。お金だけの問題ではないのだ。医者の数も、病院の施設も限られており、それを有効に利用する仕組みを作ることが重要になってくる。

 どうやれば有効利用ができるか。その鍵を握るのが医療のIT化だ。医者や看護師が行っている医療行為のうち、コンピュータができるものをコンピュータにやらせる工夫をしていかなければならない。そのためには患者のカルテの電子化が重要な第一歩だ。厚生労働省は01年、「06年度に診療所と400床以上の大規模病院での普及率6割」という数値目標を掲げたが、導入のピッチはそれよりずっと遅い。その理由はコストがかかりすぎるということ。システムを各病院ごとに作らせるのでなく、国が標準仕様で作りサーバーを一括管理し、端末を病院に安く使用させればよい。

 個人の病歴、家族の病歴、アレルギーの有無、各種検査結果、DNAのタイプ等の情報をそのサーバーで一括管理したほうがよい。個人情報保護ができるのかということが議論されるだろう。確かに超えなければならないハードルは高い。しかし、我々がより良い医療サービスを受け続けるための絶対条件であり、何としてもこのハードルを越える努力をすべきである。それによるディメリットより、メリットのほうがはるかに大きいことは、必ず理解されるときが来る。

 電子カルテが普及し、個人のデータが十分蓄積されたら、次は診断システムである。インターネットにつなぎ、病状を入力すれば、その人のデータを基にコンピュータが適切な指示をしてくれるシステムだ。十分なデータと、最新の医薬に関する情報が入れば、診断は通常の医者の診断よりも正確だというレベルにするのは容易なことだろう。そうであれば、医者に行かなくても、インターネットに接続されたコンピュータさえあれば、自宅から診断してもらえる。コンピュータは入力された情報に基づいて、救急車を呼べとか、暫く寝ているだけでよいとか、市販のどの薬を飲めとか、あるいはどの病院のどの医者と相談せよとかの指示を出す。コンピュータの入力が苦手な人もいるかもしれないが、合成音声と音声認識の技術を使えば、普通に人と会話するように、コンピュータと会話するだけで、キーボードに頼らなくても良くなる。もちろん完璧なレベルに達するには時間が掛かるが、これは確実に進歩していく。

 もちろん、病院で医者に診察を受けることが無くなるわけではない。コンピュータによる予備検診の後、コンピュータが詳細な分析を行い、その結果を持って医者の診察を受ければ、医者もより高度な診断が可能となる。この診断システムは、医者の負担を軽減し、収入増にもつながり、本当に必要な医療サービスに医者が専念できるようになる。

 このように、一つ一つ人間が行っている仕事をコンピュータに覚えさえ、コンピュータに替わりにやってもらうようにすることが、医療サービスの質も向上に繋がってくるし、医療費削減も可能となる。そのようなシステムの開発に金が掛かりすぎるということであれば、その部分は刷ったお金を使えばよいということだ。

 政府は75歳以上の老人を一般の人と切り離して医療保険制度を作り、75歳以上の老人向けの健康保険料をこれからどんどん上げていくつもりのようだが、老人いじめをやっているようでは、自民党の未来は無い。コンピュータの活用により、より高度な医療が、より多くの国民に受けられるように努力すべきだ。

 コンピュータの進歩は早い。今世紀中にロボットはほとんどの能力で人間を上回ることは間違いない。ロボットが提供する医療サービスも例外ではなく、それを前提で医療を改革していくべきだ。

“おしらせ”

明日(5月21日水曜日)は日本経済復活の会・第51回定例会があります。憂国のエコノミスト・紺谷典子先生です。小野盛司会長のお話もあります。読者さんもこぞってご参加ください。(神州の泉)

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2008年5月14日 (水)

減税をしても、長期的には税収は増える(小野盛司)

(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第73弾です。)

 お金を刷って、減税をせよと言うと、心配性の人は、ずっとお金を刷り続けなければ、また元のデフレに逆戻りするのではないかという。しかしそれは違う。日経のモデルで説明しよう。これは財政出動として法人税減税と公共投資を同額づつ行った場合の、税収の変化を示したものである。

Photo

 確かに最初の頃は、減税のために税収は減ってくる。しかし、3年目あたりから、景気拡大のために税収は逆に増えてくる。そして減税を行っているのに、税収は増えるという現象が、それ以後は顕著になる。景気が良くなると、給料も上がり、高所得者が増える。所得税は累進課税になっているので、急激に所得税が増え出す。もちろん、企業の利益が拡大すると法人税が増えてくるし、取引の拡大で消費税も増える。資産インフレも進み、土地も値上がりし、固定資産税も増えてくる。

 最初は減税だったが、税収が増えるということは増税だ。お金を刷るのは最初だけで、その後は、刷るどころか、逆にお金が戻ってくる。減税というのは、税率を下げるという意味での減税であり、それでも景気が良くなれば税収は増えてくる。デフレという病的な経済状態を脱するためにお金を一時的に刷るのであり、デフレが解消されれば、自立的な発展が始まり、政府が特別な景気対策を行わなくても、経済拡大が続いていく。
 日本においても、例えば高度成長期においては、減税しても税収はどんどん増えていった。ある程度の名目成長率があれば、税収はどんどん増えていく。デフレで経済が成長しない唯一の国である日本は税収は増えませんが、現在でも日本以外の国はどこでもそれを当然の事のように経験しているのです。

 例えば、昭和30年代、名目成長率は毎年10~20%を記録しており、税収の伸びはなんと毎年30%を超えていました。そのまま放置していると、納税者の所得税負担が過重になるということで、毎年減税が実施されました。昭和40年度まで毎年大規模な減税が次々と行われました。この頃の新聞記事を読んでいると、減税の記事が繰り返し載っており、そんなに減税を繰り返すのであれば、税金はそのうちタダになるのではないかと思うほどでした。しかし実際はそれでも税収は増えていたのです。

 例えば、昭和30年には国税は9360億円でしたが、昭和40年には3兆2780億円になっています。実に3.5倍です。年平均に直すと13%程度です。経済成長がどれだけ素晴らしいかということです。現在は日本は成熟した経済だから成長しない、人口が減るから成長しないと言う人がいるでしょう。それは実質成長率の話です。お金を刷れば、名目成長率はいくらでも高くできるのです。そして名目成長率が高くなると、それに伴って実質成長率も上がってきます。だから、財政危機は不況の時にしか起きません。適度の名目成長率さえ確保されれば、日本の財政問題は解決します。

 それだけではありません。当然ですが、税率が低い国には、金持ち(個人も企業も)が集まってきて、国は金持ちになり、税率が高い国は、金持ちが逃げて、国は貧乏になります。例えば、日本の最高所得税率は地方税まで含めると50%になり、世界最高水準です。税率の低い国、例えばスイスや香港は11.5%ですが、世界中から金持ちが押しかけてきています。法人税も日本は40.7%でOECD諸国の中では最も高く、日本企業の海外流出が続いています。諸外国では、海外から優良企業を呼び込むために、そして企業の海外流出を防ぐために、法人税の引き下げ合戦が行われています。1997年には世界平均は33.2%であったのに、2007年には26.8%にまで下がりました。
 世界の中で、日本が没落を続けている時に、政治家やマスコミは増税のことしか話題にしません。増税がデフレを加速させ、金持ちも投資マネーも逃がし、日本をますます貧乏にしてしまうというのに。

 なお、4月21日の『お金がなければ刷りなさい』の出版記念パーティーでの、綿貫民輔氏や中川秀直氏等の講演が動画で見ることができるようになりました。
http://tek.jp/p/ 
をご覧下さい。

“おしらせ”

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2008年5月12日 (月)

財政が破綻したらどうなるのか?(小野盛司)

(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第72弾です。)

 2000年11月に幸田真音の『日本国債』という本が出版され、国債の暴落の危機が書いてあると評判となった。しかし、8年後の今、暴落ところか、金利は2%を超えないという国際的にも異常なほどの低金利、つまり国債の異常な高値が続いている。国債の暴落と言えば、一般の人は感心を持つから、本が売れるのだ。「死の商人」と同じような儲け方をしたにすぎないことは明白だ。ハルマゲドンという危機をちらつかせ金を巻き上げたオウム真理教と、手口は全く同じ。財務省だって財政危機を煽って、増税で国民から不当に金を巻き上げる。単細胞な国民はすぐ騙される。

 国債が暴落し、財政が破綻したら、どうなるというのだろう。私は3600円をいう「大金」を投じて、幸田真音の『日本国債』を買って読んだ。当然、国債が暴落した後の事が書かれていると信じたからだ。驚くことに、そのことには一切触れていなかった。まさに危機を煽るだけの本だった。

 実際に、国債を誰も買わなくなり、財政が破綻したら、何が起きるのだろう。国が公務員に払う金も無くなるから、自衛隊も警察も国会議員ですらすべて解雇されるのか。国債が売れなかったから、自分たちの給料をゼロにしますと国会議員は言うのだろうか。そんなわけないということは誰にも分かる。いや、誰もが知っていることだ。国債を誰も買わなくなったら、日銀が買うだけだ。つまりお金を刷るのだ。

 そのときは、国は十分なお金を手にし、それを国民に渡すことができるから、デフレは終わり、日本の没落が止まり、日本経済の復活が始まる。その輝かしい復活の世界を書けば、なぁ~んだ、危機じゃあないじゃないと言われ、本は売れなかっただろう。儲けるためには、口が裂けても財政が破綻した後の事は言えないのだ。ここまで言えばお分かりだろうか。国民のことを真に考えるならば、むしろ財政は一刻も早く財政は破綻したほうがよいのではないか。

 今年の3月26日の日経新聞には、慶応大学の櫻川氏と学習院大学の細野氏のシミュレーションが載っている。財政破綻の確率が6割になったとデカデカ書いてある。正確には62.5%なのだそうだ。私は、櫻川氏にメールを送って、財政が破綻したら、国債が紙切れになるのですか、日銀に国債を買ってもらえばいいだけではないのですかと質問した。その回答は次のようなものだった。

 『国債の破たんによって確実に生じるのは、元本割れです。紙切れになるかどうかはわかりません。日銀券は、政府の負債で、国債と日銀券の交換は、政府の負債同士の交換なので、実質的には政府の負債は減りません。したがって、際限なく日銀が成功裏に国債を買い続けることは不可能です。』
 要するに、日銀は際限なく、国債を買うことはできても、成功裏には変えないのだそうだ。えぇ~。成功裏ってどういう意味?? 成功裏とは、「国の借金を増やすことなく」と彼は言いたいようだ。そんなこと当たり前だ。国債を多く発行すれば、国債発行残高は増える。国債発行残高を減らしたいならデノミをやればいい。100分の1のデノミをやれば800兆円の発行残高も一気に8兆円に減らせる。一方で、国債発行残高のGDP比が問題だと言うなら、それはすでに減りつつあるし、日銀が国債を買えば、お金が国民に渡り経済が活性化するから、間違いなく、GDP比は減ってくる。歴史的にも、国の借金のGDP比が増えすぎたとき、国の借金を減らしたのは、GDPを大きくすることによるものであり、借金そのものを減らした例は無い。このことを説明したら、2回目の櫻川氏の説明は次のようなものだった。

 『財政政策が景気刺激策の効果をもてば、可能かもしれません。しかしながら、政府部門の生産性の低さを考えると、政府部門の肥大化は長期的に経済成長の減速をもたらすという定説を覆すのは容易ではないと思います。また現在の政治家に「最適な」経済政策の実行を期待するのは容易ではないと思います。』

 そういうことであれば、政府部門の生産性の低さを、数値で表さない限り、彼のいうような、財政破綻確率62.5%という数値が何の意味もないということになる。ひどい論文だ。なぜこんな論文が日経の経済教室に載るのか。財政破綻で国民を脅せば、新聞の読者を増やすのに有利だから、日経はこういう無茶苦茶なシミュレーションを載せる。我々が、日本経済復活のシミュレーションを日経のモデルできちんと計算して送っても絶対に載せない。日経の経済モデルを使ったのだから、この計算結果は信用できないといは言えないはずだし、そのモデルを使って日本経済の復活の方法を明確に示しているのであれば、絶対に掲載しなければおかしい。しかし、積極財政で経済が蘇り、財政も健全化するという事実を明らかにしてしまっては、二度と財務省からは、シミュレーションの依頼は受けられなくなるという思惑があったのだろう。

 櫻川氏のように、日本の経済学者は、政府が駄目だから、経済は発展しないと言う。しかし、日本は驚異的な経済発展を成し遂げた国だ。あの当時に比べ政治家がそんなに悪くなったのか。違う。デフレでお金が消え、経済活動に必要なお金が国民に渡らなくなっただけだ。世界の中で見ても、日本の財政規模は小さすぎる。デフレで巨額のお金が消え、しかも政府の緊縮財政政策のために、国民のために使うお金が少なすぎるのだ。

 政府が無駄遣いをしているのだろうか。談合とか天下りの問題とか、不正はある。不正に流れたお金の国際比較をしてみるとよい。日本は中国の10分の1以下だろう。アメリカ人経営者は言う。日本はいい。物を売ったら、代金をきちんと払ってもらえる。アメリカではそうはいかないそうだ。不正は世界中どこでもあるが、日本は諸外国よりはるかに少ない。アメリカで自転車を借りたことがある。彼らは、夕方には必ず返せという。もし路上に自転車を放置したら、夜のうちに盗まれるのだそう。私は東京で約30年間自転車を路上放置しているが、盗まれたことは一度もない。不正も犯罪も日本は諸外国よりはるかに少ない。不正のために、お金が国民に渡らなくなっているのではなく、歳出の絶対額が小さすぎるのだ。無駄遣いと言えば、アメリカは軍事費だけで、50兆円を使っている。日本の10倍だ。道路特定財源で100万円のカラオケセットを買ったのが、日本政府の無駄遣いなのか。外国では日本よりはるかに巨額の無駄遣いをしているが、経済成長率は日本の5~10倍だ。無駄を無くすという大義名分で、財政支出を圧縮するのがいけない。それで国民に渡すお金を削っているから、デフレがいつまで経っても終わらず、日本がどんどん貧乏になっていく。お金を刷って、国民に渡せというのが我々の主張だ。歳出拡大が国民的合意を得られないなら、減税でいい。無駄・不正は、防ぐ努力は必要だが、それはマクロ経済とは別次元の問題だ。インフレの時でも、デフレの時でも、無駄・不正は同じように防がなければならない。

“おしらせ”

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2008年5月10日 (土)

経済成長vs財政再建の議論について(小野盛司)

(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第71弾です。)

 1994年にデフレーターがマイナスになって以来、日本ではデフレが長く続いている。お金を刷って、国民に渡せば、デフレは簡単に脱却できる。積極財政が国を救う。それをやる勇気が無いなら、せめて積極財政をすべきか、緊縮財政をすべきかで激論を闘わせていなければならない時なのだが、残念ながら、現在積極財政を主張しているのは我々、日本経済復活の会以外にほとんどいない。国会議員の中には、積極財政を主張したい人が多数いるが、ほとんど本音を言えない状態にある。見えない圧力により押しつぶされている。その中で、国民新党だけは、明確に財政出動を言っている。少し前、20兆円の財政出動の提案を発表したが、マスコミはほとんど取り上げなかった。民主党と公民新党で、政策協定を結び、その中で6兆円の財政出動を提案しているが、それもマスコミは封印した。

 そういった中で、経済成長か財政再建かという論争が、マスコミに取り上げられている。経済成長派は、霞ヶ関埋蔵金等の資金を使って景気対策をし、経済を成長させるというもので、中川秀直氏がその代表格だ。財政再建派はデフレは続いて良いから増税をやろうというもので、与謝野馨氏が、中心的に唱えている。ポスト福田も視野に入れ、この論争が注目を浴びる。

 4月21日の出版記念パーティーの事を話してみよう。『お金がなければ刷りなさい』という本の出版記念パーティーに10名の国会議員が参加した。その中に、綿貫民輔前衆議院議長と中川秀直氏がいた。実は、我々としては、非常に神経を使っていた。綿貫氏は日本経済復活の会を強く支持して下さっている大物議員であり、会にとって極めて重要人物なのだが、郵政問題で中川氏と鋭く対立した経緯があり、同席させて大丈夫なのか心配していた。最初に綿貫氏のスピーチがあった。その中の少しだけ引用する。

綿貫民輔氏:
「今日は、お二人の御本の中身がこれからの日本を変える大きな起爆剤になってもらいたいなと思っております。今、全く政党政治はありません。自民党も馬鹿、民主党もアホ、馬鹿とアホのなれあいで、全く私ども困っておりますが、何とかしなければならないと思っているのが国民新党でございます。」

 自民党や民主党の議員が多数いる中で、こういった発言ができるのは綿貫氏しかいないだろう。さすが当選13回、選挙での得票数で日本最高記録を作った彼は、国会議員の中でも別格と思わせるスピーチだった。

 その後で、中川氏のスピーチがあった。結構、私の書いた本や、朝日新聞に出した意見広告等をきちんと読んでいただいているようで、何度も引用して頂いた。以下に、その一部を書く。録音が不明瞭な箇所があり、若干間違えている箇所があるかもしれない。

中川秀直氏:
皆さんがご一緒に勉強されていることは、私自身が常日頃主張していることと変わらない。今日はお祝い申し上げる次第です。今マクロ経済の話がございましたが、世の中というものは変化著しいものがあります。世界は音を立てて動いてる。そういう意味から申しますとマクロ計量モデルというものも常に新しく構築していかないと役に立ちません。現実問題として我が国の直近の毎年の経済見通しが当たった年が一度でもあったでしょうか。一度たりとも無いのであります。まさに90年代の古いデフレ時代の景気が大幅に後退している時代の内閣府のモデルをそのまま使っている。私はそこにも根本の誤りがすでに存在していると、そういつも申し上げるのでございますが、なかなかそこを公開もしないし、変えようともしない。

 小野さんの新聞広告にございましたノーベル経済学者のローレンス・クラインさんに党としてシミュレーションの調査をお願いいたしました。我が国の潜在成長率は、つまり政策よろしきを得れば成長可能な成長率は、3%から3.5%だと、実は1年半前にレポートしていただいたのでございます。ところが実際は1%半ばだと政府の見通しでは仮定しています。1%台半ばなら実質成長は2%を超えていたことがあるわけです。そうすれば物価は当然上昇するはずなんです。ところが生鮮食料品を除く一般物価はずっとマイナスできたのであります。理屈に合わないではありませんか。やっぱりローレンス・クラインさんの言う潜在成長率は3%以上あるからこそですね、実質3%成長しないから物価が伸びずデフレが続いている。これはもう真相なんだろうと私は硬く信じます。デフレが終わらないのに消費税増税をしようなどという政府がこの世の中にあるでしょうか。考えてみれば、我が国の経済が名目で0.7%の成長しかないとするならば、僅か一年間に富は3.5兆円しか富は創造されないということですね。これはまた5%消費されれば13兆円、なぜ10兆円いわゆる民間の経済活動をしないという、行わないということですね。

そのような政策を当たり前のように見ているということが僕には全く信じられない。まあ私の色々主張するところは今月号のVoiceに、対談はお断りしましたが、インタビューに応じましたら結果的に与謝野先生にも、取材されたそうで論争という形になりました。そこに大きく書いてありますので繰り返しませんけれど、官僚国家、ここを根本からも変えないと日本経済はいつまで経ってもよくならないと信じて疑わないのであります。どう考えましても我が国の財政再建というものは、債務残高GDPだけを言うのではなくて一般会計と特別会計で980兆円国家財政はそれだけ借金を抱えてる、それだけ強調するということは、絶望感にさいなまれるだけではないか。私はそう思います。もちろん、財政再建をしていく、財政規律を持たしていく、この重要性は、消費税増税のときには断固主張して選挙をした人間ですから、すべて分かっているつもりです。しかし、一方で資産もあるということを忘れてはいけない。債務と資産の差額こそ第一義的に考えていかなければいけない。

およそ我が国ほど政府資産が多い国はございません。アメリカも連邦制であるから州政府まで入れた数字はまた変わってくるかもしれませんが、それでも連邦政府の資産はGDP比1~2%しか持っていません。あの英国ですら32%です。ヨーロッパの中で比較的高いと言われるあのイタリアでも77%です。GDP比で140%、先進国でこれほど資産を保有している国は無いのであります。もちろん、道路、河川など売れないものもあります。売れる実物資産もございます。取り敢えず12兆円売るという計画を私が政調会長のときに制度がスタートしたのでありますが、それ以外に金融資産がいっぱいあるのです。日銀に政府預金というのが4兆円ありますが、これも世界唯一のものであります。アメリカは5000
億円、雲泥の差であります。それとまた、現先の運用で合わせて20兆円、それ以外に金融資産、政府系金融機関を一つにすることにしまして、これは圧縮することにしましたが、それでも300兆円近くある。

 加えて特別会計の様々な実質金融運用事業をやっております。そのような金融資産をすべて合わせれば、だいたい700兆円。道路など売れない物を除いてみましても、私の見るところ500ないし700兆円ではないかと思います。そうすると980兆円の債務と申しましても差し引きするところは700兆円を引けば280兆円、売れないものを含めましてもせいぜい400兆円くらいではないかなあ。それをGDP対比で5割以下に持って行く、それが正しい考え方だと思うのであります。そして消費税増税の議論は、この経済の実態を考えれば、やはり財政再建というのは90年代前半の我が国の例に思い起こすまでもなく、まず経済を伸ばすこと、足下で0.9%年金の運用利回りが上がり、高齢者報酬が0.4%上がったって、40年後の年金予測は8万2千円も違うんです。まず経済を伸ばすこと。これがですねインフレ政策だという人の神経がわからない。いま日銀が議会も含めてヘッドも含めて福井さんの時に0%から2%だと、これが物価安定の目安だと言いました。しかし実質は0%台なのです。

 物価統計というのは上ぶれで出ますので、0.7%というのは恐らくマイナス物価です。デフレは悪くないと言うのです。まあ、小野さんの資料の中にもございましたように、おおむね欧米の物価安定というのは1から3%、場合によっては4.(テン)いくつから5%という所もある。平均すればだいたい2%台というのが物価安定の目安です。イングランド銀行アーサー・キングさんとお会いして、色々伺いましたが、これも1から3%ということで、2%台を目安に物価安定の調整をしているということでございます。日本もその程度として、そしてなおかつクラインさんの言うような3%を越えるような潜在成長率が実質成長率になるようにすれば、あっという間に4か5%の成長率になる。欧米先進国のほとんどがその水準の成長率を期待している。まあ、中国の12%成長、5年で所得倍増は論外としても、4%の成長ならば十七、八年で所得倍増する。0.7%の伸びでは100年掛かるのです。そんなの、政策と言えますか。そんな経済を実現しないで、消費税増税などと言っている、そんなことを考えて、それが日本の正しい政策などかというのは、世界の常識から言って、アホかと、馬鹿かと言われているのであります(大拍手)。

 インフレ率を例えば1から2~3%ぐらいをやっていくことが悪魔的手法だという。じゃあ、世界の主要国の経済の実態は悪魔的手法による懸念すべき状態にあるのか、そんなことを言っている国はどこにもありません。やはりインフレあって物価スタイルです。そしてまた、雇用者報酬もそれに連れて引き上げていくことが可能で、非正規を正規にしていくことも、そのことによって始めて経営者が分かることですが、可能性が出てくる。法人税も減税して海外への所得移転している、生産拠点を海外に置くと言うことも、日本は法人税40%、向こうは法人税2割。当然こっちへ持ってきたら2割課税される。それなら皆、海外へ置きます。そのお金だけでも16兆円ぐらいあるのではないかと思います。製造業ですね。それが国内に帰ってきて始めて非正規を正規にもできるわけでありまして、法人税の減税もしなければ、この国は沈んでいくということでしょう。どう考えたって、小野さんや私たちの言うことの方が正しい。声を大にしてこれからも、私も、お互い、皆さんも我々の考えを主張してゆきましょう。よろしくお願いします。終わります。ありがとうございました。」

 どうやら、綿貫氏と中川氏を同じパーティーでスピーチをして頂いたことでは、問題は起こらなかったようだ。綿貫氏や中川氏を始め多くの国会議員等の方々から一緒に主張をしていこうと言って頂き、我々は元気百倍と言ったところである。もちろん、日本経済復活の会は超党派であり、郵政選挙等、過去のことを言い出せば対立の火種はたくさんあるし、党派間の意見の違いもある。しかし、デフレを脱却し、日本経済を復活させたいという思いでは一致している。このような活動をしている団体は、日本中捜しても、どこにもない。与謝野さんのような大増税をもくろむ人が次期首相になってしまっては、日本の将来は真っ暗だ。是非、一緒に「お金がなければ刷りなさい」と、声を大にして、主張していきたいと思います。

“おしらせ”

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借金帳消し作戦:タブーは破るしかない(いかりや爆さん第6弾)

(6)借金帳消し作戦:タブーは破るしかない

 『名目GDPの上昇は財政問題を解決するか』について

 小野会長、第62弾 『経済を良く理解している国会議員に期待しよう』に関連して、「ななし」さんのコメント(4月23日)で原田泰氏の論文を引用しておられる。
 まず、それ関連して意見をのべさせていただきます。
 その原田氏の論文の一部を下記、孫引きします。

◆名目GDPが増大することが、財政にどのような影響を及ぼすかについては2つの考え方がある。第1は、名目GDPの上昇が税収の増大を通じて財政赤字を縮小するという考えである。第2は、名目GDPの上昇が金利を上昇させることを通じて国債の利払いを増大させ、かえって財政赤字を拡大してしまうという考えである。

◆本稿の試算によれば、国債残高が膨大なものとなっている状況でも、名目GDPの増大が税収を増大させる力は、金利上昇が利払い負担を増大させる力よりも長期的には大きい。税収を増大させる力は等比級数的に上昇するが、利払い負担を増大させる力は等差級数的にしか増大せず、やがてゼロになってしまうからだ。しかし、短期的には、名目GDP成長率の上昇が金利上昇を通じて引き起こす利払いの増加額は、名目GDP成長率の上昇がもたらす税収の増加額を上回る。

 上述の「名目GDPの増大は、税収を増大させる力は等比級数的上昇で」という部分は一応理解できる。だが、「利払い負担を増大させる力は、等差級数的にしか増大せず、やがてゼロになる」はどのような前提を置いているのかによって、いかようにも変化するので、「やがてゼロになってしまう」というのには論理の飛躍がありすぎて理解に苦しむ。

 大雑把だが、仮に、国と地方の借金を1000兆円、名目GDP500兆円、年5%成長で、金利が3%、均衡財政(税収の黒字部分は次年度予算増にあてる)を前提として計算(複利)すると名目GDP対借金は以下のようになります。

名目GDP:借金 10年後814兆円:1344兆円、 20年後1327:1806、 30年後2161:2427、40年後3520:3262

36年でやっと名目GDP=借金:約2900兆円となります。
 
 無論、金利の利率が成長率5%よりも上回る話は最早論外です。仮に税収が幾何級数的に増加して、一部を借金の返済に充てたとしても、対GDP比が下がるだけで、借金ゼロには程遠い。

 それ故、「国の借金をチャラにする方法」で述べたような大胆な施策を採るしかない。無論、一挙に「帳消しにする」必要はなく、計画性をもって段階的に減らしていくなどの方がむしろ妥当だと思う。
 日本は超デフレ経済下にあり、そういう政策がとれる唯一の国です。円高に物価高、今の状態をこのまま放置すれば庶民は悲鳴をあげる。いよいよ日本は世界から信用を失い、貧しい国に転落します。

 「借金帳消し作戦」は、経済学者とって身に危険が及ぶタブーという人もいる。しかしここまできたら、断固としてタブーは破るしかない。

 バブル後、20年近くにもなるのに、日本経済がこんなに疲弊していること自体が異常事態です。まともなら、名目GDPは1500兆円になってもおかしくない。『(3)多重債務者「おちこぼれ」ニッポン』で述べたように、1996~2006年の11年間に全く経済成長なく名目GDPが変わらず、むしろ落ち込んで「おちこぼれ」になっていることもアブノーマルなら、その間に国の借金をさらに500兆円も膨らませて、「蟻地獄」に落としこんだことも超異常現象、恣意的なものを感じざるをえない。
 
 日本を並の国に転落させたのは、誰か?さらに並み以下に貶めようとしているのではないかと危惧する。

蛇足: 今の金余り状況のなかで、「借金帳消し作戦」だけでは、金余り現象に拍車をかけ、実体経済を活性化させる大きな力となりうるかどうかは疑問があります。
一方で低所得者向けの施策が必要、例えば、時間あたりの賃金を200円以上アップさせるなど、そのための政府の予算やバックアップ体制を整える必要があります。

 具体的にいえば、仮に1700万人の非正規雇用者の人たちに、時給を200円アップし、1日8.5時間労働、年間300日働いたとすれば、年間8.7兆円が彼らの手にわたります。
8.7兆円は殆どすべて実体経済に循環し、その金が回転すれば名目GDPに大きく貢献するはずである。
 これだけでも、どれだけ多くの人が救われることか。そしてそれが名目GDPをふくらませ、税収増へとつながっていくに違いない。

“おしらせ”

第51回日本経済復活の会・定例会(5月21日)は紺谷典子先生です。小野盛司会長のお話もあります。読者さんもこぞってご参加ください。(神州の泉)

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