PSE法(電気用品安全法)に対する疑念
電気用品安全法(PSE法)に対する疑念
最近、テレビなどで騒然としたから、このPSE法というもの
はかなり知られてしまった法律だが、ミュージシャンの坂本
龍一や、多くの人が抗議の意志をあらわすまで、正直私は
まったく知らなかった。おそらく多くの人が知らなかった法律
なんだろうと思う。なぜなら、この法律によって多大な影響
を受ける音楽業界の人や、直接中古電気製品を扱う業者
が死活問題として大騒ぎするまではほとんど誰も注意を払わ
なかったからである。思うのだが、政府がひっそりと法案を
通しているときは、例外なく後ろめたい内容のものが多い
ような気がするのだが。
この法案は、2001年に成立施行され、2006年3月31ま
で猶予期間があったそうだ。今4月だからすでに完全施行期
に入っている。しかし、考えれば考えるほど馬鹿丸出しの法
律である。この法律でいったい誰がメリットを受けるのだろう
か。この法律の縛りは明らかに有害無益である。
ざっくばらんに言うなら、この法律のテーマは、中古電気製
品、または輸入電気製品、新規電気製品の絶縁抵抗が安全
であるというお墨付きを政府が与えるというものである。つま
り、漏電で火災や感電事故が発生する恐れがないようにと
いう配慮らしい。
私は、突出したこの安全基準の考え方そのものに無理があ
ると思う。電気製品は一般に極端なコンパクト化や安全思想
を欠いた設計を行うと、電源負荷がかかった時、回路間、ある
いは回路とその他の構造体との間で、絶縁抵抗が低くなる、
つまり導電しては行けない箇所に導電現象が起こりやすいと
いうことは考えられるかもしれない。
だが、世界で膨大な種類の製品が生産される今日、工場
出荷品に対して、政府がボルテージ耐圧試験を、一概に何
キロボルト、何メガボルトと決め、それをチェックすること自
体がそもそもナンセンスだと思うのである。なぜなら、そうい
う大きな耐圧電圧が必要な機器は限られているからである。
たとえばブラウン管(CRT)を使う機器は、カソードからアノ
ードに電子線を飛ばすために数千~数万ボルトの電圧がか
けられる回路になっているが、ヘアドライヤーや掃除機など
の機器は通常は100ボルトで使われている。高圧回路が
存在しない製品に大きな電気的耐圧試験を行うことに意味
があるのだろうか。しかも絶縁耐圧なんてものは、工場出荷
前に常識的にどこの工場でも行っているはずである。それを、
政府機関が勝手にやって良不良を選別するという魂胆がさ
っぱりわからない。
電化製品の絶縁容量は、湿気や粉塵、空気中の不純物
など、環境要因によって変わってくる。つまり、使う場所や
使い方によって安全度合いは大きく変わるものなのである。
たとえば、飲食店の厨房などのテレビを思い出せばよくわ
かる。炊事の煙や油煙、湿気などが製品の寿命を短くする
だけではなく、中の回路の絶縁度を下げてしまうこともある。
わかりやすいのは、綿埃が機器の中に入って電気回路に
付着し、それが湿気を帯びてしまった場合であろう。これは
即、ショート(短絡)回路を形成する。
一般に、実際の使用場所とは異なる、たとえば試験室の
ような安定した場所で絶縁耐圧試験を行っても、ほとんど意
味はないと考える。製品の感電事故や漏電火災事故の安
全を考えるのであれば、一定条件下の絶縁耐圧試験よりも、
実際に製品が使われる環境や雰囲気の問題、あるいは器
具の適切な使い方に注意を喚起することがむしろ、よっぽど
安全というものを実効的に捉える考え方である。
そういうわけで、強制的にPSEマークをつけることに、合
理的な意味は見出せない。しかし、政府はなぜこのような
無用な法案を考えたのだろうか。意味のない法案作成は
あり得ない。この法案の本当の意味が、実は国民の安全
ではなく、政府の都合でやられたものだとしたら、どんなこ
とが考えられるだろうか。
これは小泉構造改革の経済思想を考えると見えてくる。
彼らの経済政策の誤りは、不況の原因が需要サイド不足
から来ているのを見誤って、あるいは故意にそうしている
とも考えられるが、需要の喚起を行うべきときに、供給(サ
プライ)サイドの改善しか考えていないということに尽きる
と思う。
供給拡大の一つの窮余の策として、PSE法の規制で電
化製品の中古市場をつぶすことによって、巷に強制的に
新規の電化製品を行き渡らせようという考えなのではな
いだろうか。デフレ不況のときは総需要を喚起することが
経済政策の定番である。ところが小泉政権は逆に供給サ
イドに血眼になっているのである。そのための思いつきで、
中古製品の流通を止めて、新しい製品を消費者に回す魂
胆ではないだろうか。これはほとんど効果はない。一時し
のぎにもならないだろう。なぜなら、国民側の消費マインド
から生じた需要喚起ではないからである。
とにかく、この法案はわけがわからない。
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