生ワサビの美味い食べ方を伝授する
伝授すると言うほどの大仰なものではない。私自身
が、奥義伝授とか極意伝授など、そういう類の言葉が
持つ古風な響きが好きなのである。自分の好みを伝
授することは相手の嗜好もあることだし別に伝達され
なくてもいっこうにかまわない。強制性はまったくない。(笑)
私はプロフィールに生ワサビが大好物だと書いた。こ
こ数年、私は知人と南伊豆や西伊豆などに行くことがよ
くあるが、帰りはお土産屋さんでワサビ漬けを買ってくる
のが楽しみである。天城は有数の山葵産地でも有名で
ある。実はこのワサビ漬けの質の良し悪しはワサビ漬
けを作っている方々の良心によっている。
良心というと穏やかな感じではないが、ワサビ好きの
私がそう言う理由(わけ)は、市販の物に不味いワサビ
漬けがあまりにも多いからである。ワサビ漬けが美味し
いということ、すなわちその品質の高低は、ワサビ自体
をたくさん使っているということと、良質な酒粕を使って
いるということに尽きる。たったこれだけでワサビ漬けは
この上なく美味なものになる。
ところが、あまたある市販の物は妙な味付けをしたり、
ワサビ自体の量を減じたりして感心しない。山葵(ワサ
ビ)というものはそれ自体が特殊な山菜である。清涼な
湧き水が豊富に湧出している環境のきれいな場所でな
いと良質のワサビはできないのである。
ワサビが好きな人は何も自分だけではなく大勢いる
と思う。その人たちはワサビの一番好みの食べ方をどの
ようにしているのだろうか。多分、私の知らない食べ方が
あるような気がする。一般の人は、茎と葉っぱの付いた
植物としての生ワサビをなかなか手に入れられないと思
う。今はスーパーなどでも生ワサビはそろえてあるが、完
全な姿をしたワサビ本体にはなかなかお目にかかれない。
実はワサビは茎も葉っぱも非常に美味いのである。ワ
サビの根茎を摩り下ろして、刺身につけて食べるのは全
国一般的であり、特にそれについては説明しないが、ワ
サビ漬け以外で、茎と葉っぱを効率よく美味しく食べる
調理方法は案外知られていないのではないかと思う今日
この頃である。では私が秋田育ちの母から伝授された方
法を披瀝しよう。
用意するものは、生ワサビの茎と葉っぱ、これに根茎も
あるとなおさらいい。まな板でこれらを細かくみじん切りに
する。あと用意するものは高熱に耐えられる密閉容器(タ
ッパー)である。その密閉容器に先ほどの細かく切ったワ
サビを入れ、その上からヤカンなどで沸騰させた熱いお
湯を並々と注いでしっかりと蓋をするのである。この時、
中の蒸気圧で開いてしまうような容器だと良くない。あ、
そうそう、ワサビとお湯の比率は目分量で1対2、あるい
は1.5対2くらいがいいと思う。
容器の温度がかなり下がってきたら、そのまま冷蔵庫
に入れて一晩寝かせておく。これで仕上がりである。蓋を
開けると絶妙なワサビスープが出来上がっているのだ。
それをスプーンなどで小皿に取り、醤油を適当に混ぜて
食す(あるいは飲むというほうが適当か)のである。口中
から咽元を通る時、鼻につんと抜けるワサビ特有の清冽
な香気はたまらない。しかも透明な液体の上品な辛さは
食べる者を至福の境地にいざなってくれるのだ。
信じてもらえないかもしれないが、このワサビ総体(?)
の抽出液体は和食の王道なのである。是非お試しあれ!
尚、副次的効果として、多少の鼻の詰まりは即解消され
る。もしかしたら、この調理法は秋田県のある地方では
ごく常識的な食べ方なのかもしれない。ワサビをそのよう
に食べたことがない方には是非ともお勧めする。ワサビ
が好きな人ならば必ずやみつきになること請け合いであ
る。
ワサビの味をひとことであらわすなら、それは奥山深山
の清澄な空気の衝撃である。馥郁(ふくいく)として凛冽な
る香気は口福、鼻福そのものである。(^^)
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コメント
テツ様、こんばんは。
ワサビスープを炊き立てのご飯にかけて食べるとそれは美味し
いですよ。あまりにも美味しくて私はその食べ方を自分に対して
ご法度にしております。なぜなら他のおかずが色あせるからで
す。
>ブナ林で、ひとりの初老の方からそこでとれた
>ワサビをすこしわけていただいたことがありま
>す。それは市場のものとは別物でその芳しさ、
>すがすがしさに山の神の恵みを感じました。
それはきっと山ワサビ(野生のもの)ですね。私の父も、私が
小さい頃、源流の沢に岩魚釣りに行ってよく採ってきていたなぁ
とおぼろげな記憶にあります。しかし、当時はワサビを食べる大
人たちを奇異な目で見ていましたから自分は食べていません。
長じてから、こんなに美味いものだったんだなと知りました。山
ワサビ、一度食してみたいと思っています。
その山ワサビでワサビスープを作ってどんな味か試してみた
いですね。
投稿: 高橋博彦 | 2006年7月27日 (木) 23時24分
>ワサビスープ、すぐにでも味わいたいものです。ご飯にかけてもいけるのではと想像します。エジプト人の友人から教えてもらったモロヘイヤのスープを思い出しました。わたしがイワナ釣りに行くほとんど人に会うことがないブナ林で、ひとりの初老の方からそこでとれたワサビをすこしわけていただいたことがあります。それは市場のものとは別物でその芳しさ、すがすがしさに山の神の恵みを感じました。地酒とイワナの燻製や香草焼き、最後はいただいたワサビで食する蕎麦と、至福の時間を過ごしました。ワサビスープすぐ試して見たいと思います。
投稿: テツ | 2006年7月27日 (木) 08時32分