« 次期安倍政権は従米売国路線踏襲内閣である | トップページ | 呑んだら乗るな »

2006年9月13日 (水)

日本人劣化の原因は教育問題の前にある

安倍晋三に関わらず、自民党、民主党、公明党、その他の党に関わらず、
政治家連中はこぞって教育問題を訴え、その改革や指導方針を訴える。し
かし、口角泡を飛ばして教育を語る彼らの言説がなぜかことごとく空々し
い感じで聞こえてくるのは私だけであろうか。

 確かに、今の日本社会で国民を特に暗澹とさせている暗いニュースは、
殺人、強盗、傷害、窃盗など、かつての日本が誇った安全神話の完全崩
壊を示唆する事件で目白押しである。そこで慌てた政治家や大人連中は
何の考慮も歴史的な思考過程も経ずに短兵急に教育問題に飛びついた。
教育さえしっかりと行えば今からでも何とかなる。犯罪を招来しない青少
年の育成をしなければならないと、みんなそういう方向に思考を持ってき
ている。

 はたしてそれは効果のあることだろうか。今の日本社会の乱れや規範
崩壊の原因を、教育というジャンルのみに帰趨させてもいいのだろうか。
広い意味で言うなら、確かに大人も含めて青少年の犯罪傾向は教育の
失敗に帰するところが大半ではあろう。しかし、教育というものの根拠が
何に由来するのかを深く観た場合、今の日本人が凄まじいまでに倫理や
道徳規範を喪失した根本的な原因は戦後パラダイムそのものにある。

 つまり、大戦が終えてアメリカが主導した近代主義的な価値観そのもの
に日本人の究極的退嬰の原因があったのである。教育というものは民族
固有の伝統的価値観や文化的価値観を、民族自体があまねく共有すると
いう前提が主体になって生じるものであると私は考えている。わかりやす
い例をあげるならユダヤ民族である。彼らは二千年前に祖国を失い、流
浪の民となって世界各地に離散した。そして1948年にパレスティナに
イスラエル共和国を建設した。

 ディアスポラ(離散)の艱難辛苦に耐え抜き、ヒトラーのユダヤ人殲滅の
政策にも耐え抜き、彼らが確固たる自己同一性を守り抜いてきた理由は
彼らが、国家を失っても歴史の背骨を失わなかったからである。その背骨
に相当するものが、ユダヤの聖典である旧約聖書(トーラ)と戒律などを説
いたタルムードである。これらにはユダヤ人が約束の地を与えられている
ことが示されており、彼らは選民意識とシオニズムをけっして失わなかった
という事実がある。それが彼らの民族的な教育体系であった。

 民族の自己証明をしっかりと保てば、民族は滅びないという最大の証明
がユダヤ人である。日本もその例に倣えば、戦前と戦後では民族の自己
同一性の性格がまったく異なってしまっていることに気が付くであろう。日
本人は大東亜戦争を経過して、国家と民族はもとのままに残ったのだが、
日本人の固有の背骨となる自己証明を失った。その理由は固有で長く続
いた日本の伝統精神を捨てて西欧近代主義的価値観へ移行することを
民族の主眼に置いたからである。ここに日本民族劣化の最大の原因があ
るのである。

 そもそも、日本固有の伝統的価値観を捨てておいて、科学技術至上主
義的な価値観と、放埓で享楽主義的な価値観しか持たない新興擬似文
明国家のアメリカを模倣することを国是にした日本が、どうして真の教育
が施せるのだろうか。物質至上主義、金銭至上主義の価値観しか持た
ない新自由主義社会の中で、倫理や道徳の涵養を期待するほうが無理
というものであろう。

 日本に新自由主義体制、すなわち市場原理至上主義社会を敷設して
おきながら、犯罪を惹起しない教育改革を行おうという魂胆が最初から
筋違いなのである。なぜなら、弱肉強食の社会ダーウィニズムで稼動す
る社会機構が今、小泉政権やそれを引き継ぐ安倍が進めている構造改
革の本質なのである。ことは今の戦後民主主義的価値観の中ではけっ
して改善できないことなのである。

 日本人は思い切って精神世界の質的変更をする必要に置かれている。
すなわち、国民精神を戦後パラダイムから戦前パラダイムに変換するこ
とである。何も難しいことではない。核家族化をもとに戻し、三世代が同
居するか、すぐそばに居て互いに家族として交流できる状況に復帰する
べきである。私は幼い頃、おばあさんの背中に負ぶされて、その着物に
鼻汁を垂らした。おばあさんはいろいろな話を私にしてくれた。仔細は記
憶にはないが、子供の私は感性的に、情緒的に何か大事なことを伝えて
もらったと思っている。私と同世代の人間はそういう経験を持っているは
ずである。

 教育はそこから始まっていると私は考えている。おばあさん、おじいさ
んは孫に学校教育のような知育は教えない。しかし、人としてどうあるべ
きか、日本人としてどう考えるべきかという原初的な思考の枠は教えて
いたのである。代々、日本人はそうやって何か民族の魂を受け継いでき
ていたのである。その基本の上に教育はなされるのだと私は思う。おじ
いちゃん、おばあちゃんが孫に教えてきたのは、先祖の大切さ、郷土へ
の愛情なのであった。これが土台となって真の愛国心は芽生える。今の
個性尊重とかいうバラバラな相対主義的な人間関係の中で、どうやって
歴史の背骨が我々の中に継承されるというのか。

 小泉や安倍は、日本社会を新自由主義というアンモラルな社会構造に
転換した。こういう激越な日本破壊を行っていて、そこから生まれる教育
とは、人殺しを野放しにする方向性以外に何があるというのか。社会の
在り方と教育体系は乖離しないはずである。実社会では弱肉強食の金
銭至上主義を最上の価値に置いて、教育だけは愛国心や人倫の道を
涵養するなどということが有りうるはずがない。しかし、今の自民党が語
っていることはそういう欺瞞の教育改革なのである。自国の誇り高い高
次な伝統精神を忘却し、低次元な欲望だけで成り立つアメリカ社会をモ
デルにして日本人がまともな教育を施せるわけがない。教育や社会を
モラルあるものに変えるなら、日本人自身の精神からアメリカナイズさ
れたものを剥ぎ取る以外にないではないか。

 ユダヤ人にはトーラという民族の背骨があった。今の日本人はこれに
相当する民族の魂がどこにあるのか考えて、それをしっかりと掌中にし、
それを求心力として教育を考えることである。少なくとも教育基本法や現
行憲法にはそれはまったくない。まったくないどころか、それは日本人の
背骨を覆い隠しているのである。核家族化を昔の大家族制へ復帰せよ
と言うのではない。理想的にはスープの冷めない距離に三世代がうまく
住んでいることである。三世代が近しく暮らせる社会インフラを整える計
画を行うことである。理由は生活の中から日本人の伝統精神を継承して
行くことができるからである。それによって社会構造はかなり変わってく
るだろう。仕事の形態や地域社会の構造がそういう方向を持つように政
治が指針を示し、実行することである。しかし、その前に戦前文明の価
値観の重要なエッセンスは再構築されなければならない。それは国民
的覚醒の中で行われる必要がある。簡単なことである。アメリカのポッ
プコーン文明を根底において否定することである。

言い方を間違えた。アメリカのポップコーン文明は楽しんでもよいが過度
に惑溺しないことである。こんなものは二千六百年のわが国の歴史から
見れば泡沫のようなものである。しかし、アメリカの文明は無害なポップ
コーンだけではない。この文明の最も悪質なところは、西欧近代主義の
有毒な観念が余すところなく凝集されているところにある。日本人はこの
毒を飲むことをもうやめるべきである。これ以上飲むとアナフィラキシー
ショックで民族の生命が枯渇する。

|

« 次期安倍政権は従米売国路線踏襲内閣である | トップページ | 呑んだら乗るな »

コメント

はじめまして。
記事拝見させていただきました。

高橋さんの議論は、「戦後より戦前の方が優れている」という前提に成立していると思いました。その根拠がいまいちわからないです。
この50年、ほぼ一貫して犯罪発生率が低下していることを考えると、戦後もそれほど悪くない世界だと思うのですが。そんなに、戦前ってよかったんですか?

あと、「二千六百年のわが国の歴史」とおっしゃいますが、どこから数えたんですか?
アメリカの文明も、(西欧文明の連続と捉えれますから)、ギリシャ・ローマから数えれば3000年ぐらいですね。

以上がとりあえず疑問に思ったことです。失礼な物言いになっていたら申し訳ありません。

投稿: Echar | 2006年9月20日 (水) 07時23分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/141377/11878879

この記事へのトラックバック一覧です: 日本人劣化の原因は教育問題の前にある:

« 次期安倍政権は従米売国路線踏襲内閣である | トップページ | 呑んだら乗るな »