植草つぶしは「りそな問題」の隠蔽にある(9)
景気の逆噴射を好んでやった竹中平蔵
竹中平蔵金融相は、昨年10月末に不良債権処理を加速する「金融再生
プログラム」を公表。資産査定の厳格化、自己資本の質向上、ガバナンス
(統治)強化の3原則に沿って、大手銀行の不良債権を2004年度に半減す
る目標を掲げた。「ウエクサ・レポート 2006年を規定するファクター」で植
草氏は言う。バブル崩壊から15年が経過し、日本企業の体力を象徴する
株価が、2003年4月に日経平均株価で7600円に暴落した。こういう局面
で株式による企業買収を外国企業に認めるという政策は、完全に日本の
無条件降伏と同じである。政府が外資による対日投資を激しく推進してい
た時、ホリエモンによる日本放送株買収騒動が起きた。これが「外資の対
日投資促進政策」の是非へと国民の関心を向けたのは、盲目的隷米政策
続きの最中にあって、ほんの少しはいい傾向だった。
かつて、米国にはグラス・スティーガル法があり、銀行と証券は明確に
区分されていたが、制度の抜本的変革を行って、業態間の垣根が取り払
われ、相互参入が可能となった。日本も証券取引法第65条で証券及び銀
行は明確に区分されていたが、米国は日本にも制度変更を迫り、米国型
に切り替えさせた。日本版金融ビッグバンを提案したのはアメリカであっ
た。97年、98年の金融大波乱を契機に、銀行、証券、保険、消費者金融、
企業再生、不良債権処理は外国資本の跳梁跋扈する所となった。彼らの
狙いとする最後の宝の山は郵政公社が保有する350兆円の国民資金で
あり、これを獲得することで米国による第二次日本占領政策はほぼ完結
することになる。
こういう事態の推移に対して、国会はほとんど審議をせずに成り行きに
任せている。またマスコミはその真実を報道することを実に強い意志で忌
避しているのだ。日本は完全に米国の対日占領政策に飲み込まれている
のであり、国民はこの巨大な流れに身を任せているだけである。このよう
な対日占領政策を日本内部から支え、それを意識的に推進した急先鋒が
いる。竹中平蔵その人である。彼は民族に対する裏切り者として鮮明な形
で売国政策を主導した。小泉純一郎は竹中の政策主導を誰にも邪魔させ
ないために、総理としてのその権力を最大限に行使して竹中を庇った。彼
らの売国政策の最大値が郵政民営化であり、りそなショックはその先駆け
として、日本の安全弁を壊すために金融庁が恣意的に起こした政府犯罪
の可能性が非常に高い。
第一次小泉内閣の金融担当大臣には柳澤伯夫氏が就任した。旧大蔵
省OBであり、金融監督庁を所管していた金融再生委員会の初代委員長
でもあった人である。金融庁は2000年に金融監督庁と大蔵省金融企画
局が統合してできた行政機関であるが、大蔵省という歴史的に由緒ある
省庁の名が失われたこと自体、小泉内閣の構造改革の本質をある意味
で象徴している。日本の金融構造改悪は橋本時代から進んでいたので
ある。初代金融庁大臣である柳澤伯夫氏は、2002年の内閣改造で更迭
され、その代わり竹中平蔵がその役職に就いた。これは、小泉が柳澤氏
の従来的ソフトランディング路線を嫌ったというよりも、子飼いの竹中を使
って性急に金融改革を日本にやらせる必要があったアメリカの意向なの
であろう。アメリカが日本の金融改造をハードランディング路線で行うため
に、刺客として竹中平蔵が送り込まれたと言ってもよい。結果的に竹中
はアメリカの期待通り、有能な刺客として日本金融界の咽の深部にドス
を突き刺した。
さて、竹中の金融再編プログラムは、自分と親しい木村剛など、民間の
有識者を招いて発足したプロジェクトチームで始められた。発足当時は、
「繰り延べ税金資産の算定ルール見直し」、「国有化による経営者の退
陣」など、それまでの日本金融界の慣習や常識などを完膚なきまでに無
視する強硬路線が盛り込まれた。「完膚なきまでに無視」した内容とは、
大蔵省が金融庁に改名されたことが象徴するように、それまでの伝統構
造を悪として無価値化・害悪化し、アメリカ一辺倒の資産査定方式を取り
入れたことになる。アメリカの金融対日プログラムは、橋本時代の金融ビ
ッグバンから、後の会計ビッグバンを経て、竹中金融庁で急激なピークを
迎えたのである。竹中の役目は日本金融システムの完全書割転換なの
であった。
ここでも構造改革の美名の下に、日本伝統構造の破壊が行われてい
たのである。しかし、銀行や与党内部からの激しい反発があり、竹中は
一定の譲歩を迫られたが、大方では米国流のやり方がそのまま踏襲さ
れた。この時、銀行家の反対者の急先鋒であった勝田泰久氏は金融庁
の姿勢を熾烈に非難したため、勝田氏は竹中の怨恨を買い、これが後
のりそなショックの直接の契機となっている。しかし、りそなが狙い撃ちさ
れた真相は、植草一秀氏が何度も指摘しているように、政府と外国資本
がつるんだインサイダー取引による経済犯罪だった可能性が非常に強
い。
竹中が登場する以前の柳澤金融庁の指針は、金融システム自体は大
勢としては安定しているから、個別の成績の悪い金融機関には個別対
応で行くというソフトランディング路線であった。対症療法で済むという考
えであった。旧あさひ銀行と旧大和銀行を統合させたのも、その政策の
具体化であった。しかし、アメリカの肝煎りで登場した竹中は、金融シス
テム全体も深刻な危機にあるとして金融再生プログラムを発動させた。
これが大手銀行の恐怖感を招き、株式相場の値崩れを引き起こした。性
急な不良債権処理と経営の健全化という背中合わせの方策を強いたた
めに、銀行は必死になって合理化やその他できる限りのことを行った。し
かし、竹中がこういうハードランディング路線を実行している時に、国内中
小零細企業が、その改革の軋みをまともに受けて、どれほど途端の苦し
みに喘いだか、マスコミはほとんどその社会的損失と悲劇を報道しない。
植草氏が繰り返して言うように、経営の健全化も、不良債権の処理も両
方重要である。両方とも重要ではあるが、両者を同時的に性急に行えば、
合成の誤謬が生じて結果的に経営的生命力が低下してしまうことになる。
マクロ経済が下降気味になっている時に企業整理を行えば、景気はます
ます下降へ傾くのと同様である。
(次回に続く)
参考図書
「ウエクサ・レポート 2006年を規定するファクター」植草一秀
| 固定リンク








コメント
cameraman 様
>やれ東大ー一流証券会社ー大学教授でも下には
>人格が無い、云々。おそらく事件を仕掛けた人
>間の計算通りなんでしょう。
そういう部分はたしかにありますね。東大卒や一流証券会社
などの経歴だけで、人格が不完全に陶冶された奴という、ステ
レオタイプのイメージ化を狙った面はかなりあります。
特に週刊誌ネタなどにされた場合は、そのイメージを惹起する
ような意図で記事が書かれます。
人間は人を評価するよりもこき下ろす方が性に合っている部
分もありますが、権力側がそういう卑俗な大衆性を利用するこ
とはあるでしょうね。
特に知識人のイメージ墜落を意図した場合は痴漢などの下
衆犯罪ででっち上げた方が効果があると考えているのでしょう。
植草さんの著書などを読ませたくない場合は、効果がありま
す。最もわかりやすい人格否定ですから。よく植草経済論を否
定するためだったら、経済犯罪の方が効果あるじゃないかとい
う人がいますが、その効果は経済通にはあっても、一般大衆
的には大したことはありません。
なぜなら中身に興味を持たないからです。それよりも破廉恥
罪の方が効果絶大で、確実に人格否定に結びつきます。それ
に経済犯罪をでっち上げるなどということは、大掛かりな仕掛
けになりすぎて、やるほうのリスクが格段に大きい。
仕掛けるほうのリスクが格段に僅少で、効果絶大な犯罪と
は、誰でもが良心の仮借なく日常的にやってしまいがちな、
いわゆる「化罰的違法性」に限りなく接近した性格を併せ持
つ犯罪でしょう。たとえば他人の柿の木から落ちた柿を一個
失敬する場合などです。
痴漢犯罪は悪質ですが、間違えて接触する場合を犯行と
捉えてしまう局面も存在する犯罪です。
つまり、化罰的違法性の領域も持っているように思います。
これを恣意的にピックアップすることで、悪質さのイメージ付
与は可能です。植草氏の場合、実刑云々よりも、世間にイメ
ージ喚起を先行させて置きながら、できるだけ長く拘留する
することを目的にされているように思います。
情報リテラシーをある程度持つ人なら、植草氏の長期拘
留がいかに異常であるかすぐに理解できることでしょう。
投稿: 高橋博彦(管理人) | 2006年10月28日 (土) 16時31分
Webをつらつら見ると、植草氏に対する雑言は比較的弱者の立場の人間のものが多いように思います。やれ東大ー一流証券会社ー大学教授でも下には人格が無い、云々。おそらく事件を仕掛けた人間の計算通りなんでしょう。植草氏の思想の根幹が理解できていない、したがって単なる痴話事件としか捉えられない。これによって後に続こうという人間もなえるでしょう。かつて中曽根元総理が在任中に、「サラリーマンは愚かだから相手にしない」といったことをあからさまに述べています。権力者の基本的姿勢なのでしょう。
投稿: cameraman | 2006年10月28日 (土) 13時33分