植草つぶしは「りそな問題」の隠蔽にある(12)
日本はアニマルファームを過ぎて収穫農場になった
さて、再びコアーな話に戻ろう。橋本内閣時代、96年以降推進された金
融ビッグバンは、名目上はバブル崩壊後の金融システムの再生を目的と
し、業態・業務の自由化、自由な内外取引、自己責任原則の確立、情報
公開の徹底、国際水準の法制、会計および事前規制から事後規制へ監
督体制を構築する等々が具現化された。その旗振り標語として呼称され
たのが、フリー(Free)、 フェアー(Fair)、グローバル(Global)であった。
これによって行われたことは、敢えて俗っぽい表現をするなら、日本が博
打(ばくち)経済に書割変更されたということである。
「業態・業務の自由化」とは、銀行と証券、生保と損保業務の規制緩和
が行われて相互乗り入れが出来るようになった。銀行でも証券業務が可
能になり、その逆も出来るよう垣根が取り払われた。こういう経緯をたどり
ながら、10年を経て、日本の都市銀行、信託銀行、長期信用銀行などが
メガバンクへ収斂されて行った。そこへ竹中平蔵が指揮する金融庁の金
融再生プログラムによって銀行業界は完全にグローバルスタンダードに
塗り替えられてしまった。
金融ビッグバンは、見かけ上は日本の自主的政策で行われたかに見え
るのだが、90年代後半に「アジア通貨・経済危機」が発生した時は、日本
人が自国の閉鎖的な「鎖国論理体制」を恥と思うように仕向け、それを否
定して、昨今のグローバリズムの趨勢に合わせるように考えを切り替える
ことを促したのはアメリカである。そして、この金融改革の動きには、日本
を間接金融から直接金融へシフトさせることを最大の眼目にしていたので
ある。直接金融は、銀行の業務形態を多様化、自由化したと言うが、ざっ
くばらんに言えば先ほど言ったように「株バクチ経済」への移行なのであ
る。金融活動の主要な現場が、銀行から証券会社へとシフトしたのであ
る。
この間の推移において、米国の内政干渉的な関与については、故吉川
元忠氏の「マネー敗戦」や関口英之氏の「拒否できない日本」などは重要
な示唆に満ちている。また、原田武夫氏の「騙すアメリカ 騙される日本」
は日本の第二敗戦の真実をよく捉えていると思う。日米構造協議という
一方的ではあったが、まだ二国間協議の体裁を有していたものが、いつ
の間にか「年次改革要望書」という占領政策みたいな「命令書」に変わっ
ていた。ところが、実質的には身動きの取れない占領政策的指令である
米国の対日経済政策は、表面上は日本人が自らの意志で行ったように
推移してきたのである。米大使館HPで、「年次改革要望書」は堂々と公
開されている。この理由は、日本人自らが隷米状況をひた隠しにしてしま
うという本性がすっかり身に付いてしまったと米国側が知っているからな
のであろう。つまり、日本人はここまで米国への跪拝心理が出来上がっ
てしまっているということである。
かつては、日本人の怒りを直接米国に向けないことと、東京裁判史観
へ疑念を生じさせないままに日本を意のままに統治するという米国の実
に繊細で巧妙な作戦が実行されていたが、アメリカはもう占領統治意識
を隠そうともしていない。以前は巧妙に対日画策をおこなっていた。この
辺りの真相は原田武夫氏の並外れた炯眼で書かれた「騙すアメリカ 騙
される日本」に的確に解説されている。植草一秀氏は「ウエクサ・レポー
ト」で、関口英之氏の「拒否できない日本」を例にして、植草氏自身も、
1990年に日本経済がアメリカの膝下に置かれていることを指摘する論
考を書いたと言っている。
日本人は自国の政治のみならず、経済、特に金融経済がオーウェルの
「アニマルファーム」(飼育農場)状態になっていることに無頓着なので
ある。アニマルファームに生きる自己同一性を知らずに、どのような高邁
な思想や哲学を語ろうとも、己の宿命は飼い主に喰われるだけの家畜な
のである。ましてや「美しい国へ」などという標語には、そのあまりのアイ
ロニーのきつさに、ただ、ため息だけが出るのみである。しかも・・、今の
日本はアメリカの「実験飼育農場プラント」の段階を超えて、本格的な「収
穫農場」に変わってしまったのである。ここまで急速に国富の収穫場に
経済国体を変貌させたのが小泉・竹中構造改革路線である。そのことを、
いったい、日本人の何人が認識しているのであろうか。
りそな金融疑惑にしてもそうであるが、日本の根本問題は、外資、特に
アメリカ系金融資本の意が政策に反映されてしまうということと、意識的
に売国政策を買って出て、国益をアメリカにもたらし、国民を裏切る政治
家連中がいるということに尽きるのである。非常に深刻な内憂外患にあ
るのだが、内憂、つまり売国政治家たちを見抜けずに権力を与えてしま
う国民の知性退潮や民度低下も大問題である。日本人は真の敵が誰
であるかまったく自覚していないのである。この敵が最も強い執着心を
もって用意周到に根回しして、実現にこぎつけたものが「郵政民営化関
連法案」であった。
植草氏は最近の「ウエクサ・レポート(2006年を規定するファクター)」
で、「大政翼賛が助長する三度目の経済悪化」の中に「2.郵政民営化は
誰のために強行されるのか」(P215から217)でこういう意味のことを書い
ている。
国民にはきわめて関心度の薄い議案が国会での最重要案件となり、
抵抗勢力という反対グループを構造刷新に歯向かう敵と見立ててこの法
案をごり押ししたが、国民には郵政公社をなぜ民営化しなければならな
いのかは非常にわかりにくい。小泉がこの法案を強行した理由は二つあ
って、第一には銀行界の強い要請があったこと、第二は米国が郵政事業
の民営化を求めていたことにある。バブル崩壊後、銀行業界は住宅金融
公庫と共に郵便貯金の打倒が悲願であった。米国の要望としての郵政民
営化は、1996年、2003年、そして2004年の年次改革要望書に記載され
ていることを小泉が実行したのである。コクドや西武鉄道保有の莫大な金
融がどう流れるか気になるが、外国に日本の金が流れた典型は、旧長期
信用銀行のリップルウッドへの売却である。
(次回に続く)
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コメント
まろん 様
はじめまして。
ご親切にありがとうございました。
山崎行太郎先生のところですね。
投稿: 高橋博彦(管理人) | 2006年11月 8日 (水) 12時55分
菓子たんぽ 様
>我が関心事は高邁な事にあらずして、植草氏痴
>漢逮捕事件の真相である。TVで堂々の論陣を張
>ってた植草氏と、物証として本人も認めざるを
>得ぬセーラー服、このミスマッチのもたらす揺
>曳感を一日も早く払拭して頂きたい
もちろん、そうです。テレビで竹中と植草氏の
対決は是非とも実現していただきたい。あらゆる
レベルで最高の視聴率を稼ぐでしょう。
被害にあったと称する女子高生も、何らかの形
で国民に対してその被害事実を表して欲しい。し
かし、ことの性質上、絶対に彼女の個人を特定さ
れることはあってはならないでしょう。好奇の視線
に晒されるだけでも彼女の人生の脅威となりま
すから。
しかし、植草氏の人生すべての名誉をかけたこ
の件の真相を明らかにするためにも、被害者はき
ちんと起きた事実を国民に公表していただきたい
と思う。被害状況が本人以外の者の言葉だけで流
されている現状だけで、あたかも犯罪事実が立件
されたかのような話では困ります。
>グローバルな熾烈な競争、国境を越えた企業買
>収や合従連衡の活発化が日常茶飯の事となった。
>外資に対し、頭から吸血鬼,禿たか、ハイエナ、
>悪魔の金融工学と決め付けたり、国内に対して
>も外国に隷属の傀儡政権、それに気付かぬ国民
>の知的退潮といった常套句。辟易である。
そうおっしゃいますが、米国「奥の院」の対日
プログラムは確実にあるわけでして、問題は二層
に渡っております。一つは文字通り米国の対日占
領の遂行です。もう一つはエージェントと化した
国内にいる日本人の動きです。政治の動きでも、
経済の動きでも、そのダイナミズムの背景には
明らかに、日本以外の力があるわけです。
あとは、マスコミや言論界の変質です。いまや
ジャーナリズムは死に掛かっています。理由は米
国批判が自由に出来ないことに明確に現われてい
ます。書き物で飯を食っている連中は、本質的な
米国批判を筆にした途端に生業(たっき)の道が
塞がれる現状があります。これは事実です。
電波的な陰謀論というステレオタイプの決め付
けが真相を覆い隠す場合もあります。対日強制プ
ログラムが着実に実行されているときに、それに
気が付かないか、あるいは気が付いていても、米
国ならば別にいいではないかという親米跪米心理
にある日本人が多いことが真の危機なんです。こ
れじゃ戦略も計画もあったものじゃない。
投稿: 高橋博彦(管理人) | 2006年11月 8日 (水) 12時50分
こんにちは、管理人さま
ttp://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/
こちらのサイトにもありますが、冤罪説が濃くなっている模様ですね。
投稿: まろん | 2006年11月 8日 (水) 10時49分
管理人様
コメント有り難う御座いました。雑感再び、スペースお借りします。
世界に君臨する国は、軍事・経済の両面に於いてAs No.1の筈である。
その覇権国は、庇護の必要な弱小国には慈母のごとく接するが、一方、経済面軍事面で自国を凌駕せんばかりに力を付けた国には、厳しく政策的譲歩やスキーム変更要求あるいは応分の金銭負担を迫ったりする事もあるだろう。国益は本来双方利害相反するもので,国家間交渉は全体的バランスが重視され、一方的圧力は相手国の猛烈な反発を食らうから、横暴にもおのずから限界があると思う。外国に買収されてなど論外、人事を尽くしたものなら、よしんば、交渉が結果として国益を損なうものであったとしても、売国奴や走狗呼ばわりすべきでなく、国民全体で沙汰の拙さを泣くべきである。
焦土と化した敗戦国日本が不死鳥のように灰の中から蘇ったのは、日本人の能力と努力は勿論だが、メイドインジャパンを世界市場が受け入れて呉れた事が大きい。自動車の集中豪雨的輸出(高品質あっての事だが)など、過去未来通じて世界市場への依存度No.1は日本かも知れない。又、かなりの軍備費相当を他の投資に回せたのも経済的に大きくプラスに働いた。その日本が、国内市場を世界に対し閉ざす事は出来まい。
バブル崩壊後、官民挙げての努力の結果、筋肉質の企業体質に転換、韓国及びBRICs台頭の中で比較優位はキープしてるものの、グローバルな熾烈な競争、国境を越えた企業買収や合従連衡の活発化が日常茶飯の事となった。外資に対し、頭から吸血鬼,禿たか、ハイエナ、悪魔の金融工学と決め付けたり、国内に対しても外国に隷属の傀儡政権、それに気付かぬ国民の知的退潮といった常套句。辟易である。
グローバリゼーション。日本も、この「地球」と言う括りの中で、精一杯頑張るしかない。国粋的懐古の情に耽溺のあまり、変遷対応がお留守になっちゃ困る。
真しやかな国外逃亡説もあった竹中平蔵氏だが、元の鞘、慶応大学教授に納まった。「りそな」に係わる竹中植草直接対決も夢ではない。我が関心事は高邁な事にあらずして、植草氏痴漢逮捕事件の真相である。TVで堂々の論陣を張ってた植草氏と、物証として本人も認めざるを得ぬセーラー服、このミスマッチのもたらす揺曳感を一日も早く払拭して頂きたい
投稿: 菓子たんぽ | 2006年11月 8日 (水) 10時01分
denn様
ありがとうございました。
BIS規制自体が、日本を狙って出来たものらし
いですね。邦銀が海外に進出しようとした時、こ
の規制枠がかけられました。そもそも、自己資本
8パーセントの根拠はないですね。
当時株高の日本は含み益がだいであることを利
用して、その45パーセントを自己資本として参
入できるように認めさせました。ここにあの怪し
いフェアー(透明性)の力が働いて邦銀がだんだ
ん身動きが取れなくなる素地が出来上がった。バ
ブル崩壊後の邦銀はイバラの道に投げ出された。
そういう流れの最果てに竹中がいたということ
ですね。BIS規制の成立過程がヤクザ的でし
た。米英が結託して無理やり国際合意をもとめま
した。
投稿: 高橋博彦(管理人) | 2006年11月 7日 (火) 01時32分
菓子たんぽ様
コメントありがとうございました。
>無資源国日本は、率先グローバリズムを先導し、
>各国間の利害得失の平坦化に努める位じゃなく
>ちゃね。
むかし、ある右系の人々が、「グローバリスム
そのものを否定するのではなく、その潮流に屹然
と対向できるくらいの力がなくちゃ、日本文明な
んて意味ないよと言っていたのを思い出しまし
た。グローバリスムを先導し、各国の利害得失を
平坦化すると言っていますが机上の空論もいいと
ころですね。
要はこんなことを言う人たちは、文明論的思考
を放棄しているように思えます。なぜなら、最も
わかりやすい社会ダーウィニズムの域を出ていな
いからです。その線で言うのであれば、核武装論
から入れば現実的でしょう。しかし、日本が収奪
と占領の論理で行く国なら大東亜戦争はありえな
かったと思います。力の論理だけで日本論を言う
人たちは、力の論理でアメリカに隷属するか中国
に隷属するかという硬直した考え方に進むだけで
す。
岡蒸気の時代に籠か、などという言い方も、文
明か、さもなくば原始時代かなどという輩と同じ
ですね。宿命論的に弱肉強食の進歩主義に拘泥し
ているだけです。護送船団方式がいいのか、グロ
ーバリズムがいいのかなどという陳腐な二者択一
には辟易します。私の論点は簡明です。護送船団
方式を全否定する前に日本的な良さを考慮せよと
いうことです。
アジア的な共同体論理が旧弊で、グローバリズ
ムが新しく正しい。遅いスピードは価値がなくて
早いものがなんでもいい。腕っぷしが強いものが
優れていてその他の価値は認めない。アメリカ人
の思考様式そのものですね。産業革命をいち早く
成し遂げた国がえらいわけですね。
無資源国だから強い国々に隷属しておもらいさ
んの道を歩めですか。日本は無資源国ではあり
ません。精巧な工作機械もそうですが、中小企業
の高度な技術力はそれ自体が日本の有力な資源です。たとえば。
護送船団方式は低速かもしれませんが着実です
し、相互に助け合いが出来る。低速の船に合わせ
て進むことを小ばかにしていますが、まるで童話
のウサギと亀でみたいですね。
日本が率先してグローバリズムを敷くくらいの
気概とか言いますが、米国人と同じパラダイムに
乗っかって行けと行っているみたいですね。斬新
さを装ってほとんど陳腐で言い古された論法に思
えます。失礼ながら。
投稿: 高橋博彦(管理人) | 2006年11月 7日 (火) 00時10分
植草氏はこの様な竹中主導の金融システムをみて「神様がやっても儲からない」と銀行行政を批判した。
これは全く正しい指摘で、1400兆円の預貯金が行き場をなくし本来なら市中に融資と言う形で循環しなければならない富がBIS規制と言う邦銀潰しの企てにより国債しか買えない状態にした。
ところが国債しか買えない状態にしながら国債発行を押さえたから更に資金の行き場を失った、その結果エマージングマネーに行き着き本来のバンカーとはかけ離れたリスクの高い商品に手出しをするようになった。
生き馬の目を抜く国際金融で融資に勝る利益を上げられる筈も無く今のように行き着く所は手数料収入に頼る銀行に成り下がった、現在の銀行の存在価値は無くなったと言える。
本来竹中が言うように銀行を少なくするのであれば、その前に国民貯蓄を無くすような政策を取らなければ成らない、しかし極めて脆弱な社会保障の我が国では現実には成らない、銀行を減らして預貯金を減らしたいなら社会保障を整備するのが先だ、社会保障が完璧なら国民は貯蓄など要らないからだ。
つまり、その様な国の形を考えもせず銀行を減らし国際金融の荒波の元に国民資産1400兆円を晒せばどうなるかは凡そ想像が付く、これが竹中売国政策の基本である。
投稿: denn | 2006年11月 7日 (火) 00時03分
[長銀問題]は確か、植草氏が「経世済民治国平天下」指南だった小渕政権の頃の話だよね。
ここのグローバリズム論、まるで岡蒸気出現時の駕篭かき達を彷彿とさせるね。
無資源国日本は、率先グローバリズムを先導し、各国間の利害得失の平坦化に努める位じゃなくちゃね。
護送船団方式で、一番低速の船に、全体が船足を合わせてちゃ、駄目なのよ。
投稿: 菓子たんぽ | 2006年11月 6日 (月) 16時10分