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2007年1月29日 (月)

(2)植草事件の突破口(痴漢犯罪の偽装を見破る)

 植草氏のネクタイをつかんだ膂力の強い乗客が何者であろうとも、警察
に連絡する前に必ずやるべきことが二つある。一つは被害者と称する女子
高生と、加害者の立場で扱われた植草氏の双方から、然るべき事情聴取
をすることである。この二人の聴取が離れたところで同時に別々に行われ
たとしても、わずか3分間で確証的な言質を得ることは不可能であろう。ま
してや、被害者と加害者が連続的に聴取されたなら、なおさら長い時間を
要するはずである。しかし、今回の場合、被害者、加害者の双方から事情
を聴くという過程がすっぽりと抜け落ちていたとしか言いようがない。

 駅員事務室に植草氏と女子高生を連れて行き、間髪を容れずにパトカー
の巡査に連絡を入れることの不自然さはあまりにも作為的である。準備を
整えていたとしか思えない用意周到さである。まるで、京浜蒲田駅に着く
前の走行中の電車内から、痴漢を確信している誰かが電話であらかじめ
駅員を納得させ、すぐに蒲田署へ連行する段取りをつけていたとしか思え
ないのである。

 考えてもわかるが、善意の一般乗客あるいは乗務員が事の成り行きを
見ていて、機転を利かせて駅員に到着前に連絡していたとすれば、それ
も甚だしく異様である。しかし、それで納得する駅員であれば、その知性
と職業倫理を疑わざるを得なくなる。要は駅員室に二人を連れて行く目的
は、加害者、被害者の身柄を確保し、然るべき事情を把握する場所を提供
することにある。双方の事情を聴いて、場合によっては勘違いなどで和解
に至ることもあるだろう。しかし、被害者が強固に被害を訴え続け、加害者
の弁明に説得性がなければ、初めて警察を呼ぶという展開なのであろう。
このような過程が完全に抜けている痴漢容疑などというものが成立するの
だろうか。

 植草氏が、誰ともわからない「私服の男」にネクタイをつかまれ、蒲田署
に連行されるまでの間、一度でも弁明の機会は与えられただろうか。彼の
犯罪を遡及できるのは、今まで一度も公の場に出てこない、得体の知れな
い女子高生のみである。第二回公判に出た目撃証言者も、当日は当事者
たちと接触もしていなければ、駅員に連絡も取っていない。最初から最後
まで傍観者であり、後日、目撃を名乗り出ただけである。重要なことは当
日、この証言者が駅員や警察に目撃談を語ることなのである。ということ
は、当日関わった者の中で、誰一人として植草氏の犯罪を確証して駅員
に報告した者は居なかったはずである。

 しかし、電車が到着してからわずか3分で警邏中の巡査を呼び寄せてい
るのである。ここに、通常の対応とは異なる警察側の予測されていた行動
があったということである。この時間のミステリーも異様なことではあるが、
それよりももっと異様なことはこの事件の初頭にすでに起こっていたのであ
る。それは被害者と称する女子高生の取った行動様式の不可解さにある。

 冒頭にも言ったように、私は電車内の状況について、仕掛ける側の決定
的な「瑕疵」に気が付いた。それはあまりにも単純すぎてこれまで見落とし
ていた重大事である。当日の品川駅では、仕掛けを行うスタッフが、植草氏
を罠に嵌めるための最適な条件が整った状況とタイミングを狙ったはずで
ある。はたして、この偽装犯罪が、当初プランニングしたとおりの最適な状
況下で実行されたのであろうか。私は仕掛けたスタッフが、仕掛ける最適
条件が整っていない段階で無理やり仕掛けを決行したものと見ている。

 つまり言い換えれば、植草氏が痴漢行為を行ったとする当日の電車内状
況とは、痴漢常習者がけっして行わない状況下にあったという見解なので
ある。仕掛ける側が残した決定的な瑕疵、それは当該事件が起こった電車
内の混み具合そのものなのである。


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