今、郵政民営化問題をブログに書いていて、植草さんのご著書の紹介文、及び感想文が遅れ、植草さんには大変申し訳ないと思っている。もっと早く書きたかった。このようなきわめて優れた本の全貌を無学非才の私が上手く解説することはできないが、感じた部分を思いをこめて書いてみた。 なお、第二章と第三章は植草さんの人となりがよく出ていて、読み物としても、とても面白いが、字数の関係でその部分の感想は割愛した。しかし、このようにすぐれた有識者の植草さんに、昭和30年代に色濃く残存していた日本人の美風が醸し出されていることには驚かされる。この時代の暖かさと思いやりが植草さんに強くあるからこそ、彼の経済視点は一貫して国民の幸せに向いているのだ。ご自分の青春時代や世の中、歴史などに対する思いが素直に書かれている。
神州の泉・管理人 高橋
『知られざる真実 - 勾留地にて -』の感想文
プロローグ 想像力
この中で植草氏は酩酊して事件に巻き込まれた要因をつくったことを反省しているが、けっして疑われているような罪は犯していないと断言。彼は「本書執筆当時においては裁判所が真相を正しく究明し適正な審判を下してくれることを念願するが、裁判所の判断と独立に真実は存在する」と明記している。これは品川事件の裁判を踏まえて、裁判所が公正な裁定基準を厳格に堅持してほしいという植草氏の切実な願いが込められている。逆に言うなら、裁判所が独立していない、すなわち他の権力機構からの干渉があれば正しい裁定は望むべくもないということである。彼は前回の裁判で最も採用して欲しい審議内容が不採用にされた不条理を経験している。そのようなことが本裁判でも起こらないようにという強い希求がこの文には込められてある。裁判所の独立とは、他の権力機構の影響を受けない厳格性だと私は受け止めている。
メディアの俗悪趣味は個人のプライバシーを拾い集めて針小棒大に騒ぎ立て、事実無根の虚偽情報を無責任に流布すると彼は言う。しかし、私(神州)から言わせるなら、この執拗さ、申し合わせたように画一的で低劣な内容など、これらを鑑みれば、植草さんをメディアが扱ったレベルは「俗悪趣味」をはるかに超えている。それはメディアの背後に横たわる得体の知れない巨大な権力的策謀を浮かび上がらせるものである。マスコミによる大泥流のような植草さん攻撃は、彼が言うように「いじめの構図」そのものではあるのだが、このいじめを生み出した底意には明らかに政治的な背景が存在する。しかし、大きく言えば、マスコミといういう巨大権力に個人がいじめられている現実を、大勢の国民が感知できないところに大きな問題がある。国民は戦後民主主義教育で権力機構の横暴にはすこぶる敏感になった。しかし、どういうわけか、マス・メディアという巨大権力に対しては従順というか、思考停止的でさえある。
植草さんはメディアについて深い指摘をしている。今日本列島を覆い尽くしているいじめ問題をマス・メディアはこぞって取り上げるが、肝心のマス・メディアが行なっている大がかりないじめをきちんと見つめる必要があると言う。大掛かりないじめ、そう、この言い方は意味深である。彼はマス・メディアが国策捜査に加担する今の日本の体たらくを、言外に嘆いているのだ。もちろん、植草さんは自身の巻き込まれた状況を国策捜査とは言っていないが、メディアが政治と結託した場合の悪しき世論誘導がどれほど深刻に真実と乖離するか、その警鐘を鳴らしている。
第一章 偽装
この章のタイトルが「偽装」と付けられたのは、りそな銀行問題が主題となっているからであるが、植草さんが巻き込まれた事件の本質を表していて意味深である。
1 沖縄知事選と徳洲会病院臓器売買事件
この本の最も最初に植草さんは愛媛県宇和島の徳洲会生体腎移植問題が不自然に大きく取り上げられ、これもまた不自然にいきなりその話題が終息したことを指摘して、これと沖縄知事選の相関関係を国策捜査の観点から捉えている。ここに政治権力に介入された司法とメディアの作為が存在した可能性を見ている。
2 テレビ・メディアの浅薄さ
テレビが政治権力に加担して恣意的な世論誘導を行なう危険について、メディア論を展開している。小泉政権は政治権力、司法、メディアの三位一体による世論誘導政権だった。植草さんの名誉が著しく傷つけられることに、メディアは強い役割を果たしている。本質的なことは伝えないのに、どうでもいいことや愚劣なことは執拗に伝え続ける今のメディアは、国民総愚民化を目指す洗脳機関に成り下がっている。
3 偽装三兄弟
郵政民営化選挙で、追い出された自民党議員を復党させたこと。それとタウンミーティング、耐震構造偽装事件を偽装三兄弟と言ってる。
4 耐震構造偽装
5 偽装タウンミーティング
小泉政権は発足年の2001年6月から2006年9月まで、合計174回のタウンミーティングが行なわれ、小泉政権の妥当性を国民に知らしめたと言っているが、それはやらせだった。このことは国民の意見を反映して推し進めたと、誇らしげに強弁しながら遂行した小泉・竹中構造改革路線の実態をよくあらわしている。つまり彼らの実行した構造改革は「偽装」なのである。
6 福井日銀総裁追及の深層
福井日銀総裁バッシングの深層を植草さんがするどい切り込みで追求している。昨年の量的金融緩和政策の解除やゼロ金利政策解除を実行した福井氏を強く評価している。しかし、財政当局は別の思惑があり、福井氏を叩いた。ここにも表に出ない謀(はか)りごとがある。
7 摘発される人・されない人
国策捜査で摘発される人と摘発されない人の違いは、米国にとっての「抵抗勢力」の度合いであるということが指摘されている。西村眞悟議員は北朝鮮問題で米国の思惑に反したから抵抗勢力度を高く見られて国策捜査に嵌められた。また、木村剛氏のことにも言及している。木村氏はりそな銀行実質国有化を発表する前とあとでは、言動が完全に異なっていると言っている。
8 りそな銀実質国有化
本章の主題に位置する重要な内容である。植草氏は小泉政権が発足し、国民が熱狂的に支持している時に、有識者としては唯一と言っていいくらい異端的な存在だった。りそな銀行の実質国有化は大掛かりな偽装であり、小泉政権の実質的破綻を意味していると植草氏は言う。しかし、民主党はこれを追及しなかった。りそな銀行の実質公的救済が発表された日、2003年5月17日、大阪読売テレビのウェークアップ(桂文珍司会)に出演していた植草さんは、番組中に求められたコメントで、「常識的に考えれば週明けの株式市場は大混乱に陥るでしょう」と答えた。すると番組のエンディングで桂文珍氏が、金融庁から入ったとされるメッセージを読み上げた。「現状においては金融システム全体に影響が及ぶ状況にはありません。・・・」
神州の泉・管理人の意見であるが、このテレビ番組で、偽装を見抜いた植草さんの慧眼に惧れをなした竹中平蔵前金融担当大臣が、慌てて番組に植草さんの見解を否定するメッセージを出したものと思える。このエピソードは植草さんが偽装事件に嵌められる要因を成す重要な契機の一つかもしれないのだ。
9 小泉政権五つの大罪
小泉政権の本質が国民を不幸に陥れる売国姿勢にあったことを見事に説明している。興味深いことを植草さんは書いている。郵政民営化は小泉氏個人の怨念=ルサンティマンと米国政府の要求によって推し進められたこと。
10 自由党定例研究会
2001年3月、自由党幹部の定例研究会で植草氏が講師をし、80年代の後半部から2001年までの日本経済の推移を経済政策との関連を軸に講義した。2001年当時に日本経済が直面した不況、財政赤字、不良債権の三重苦は90年代初頭に米国が直面した状況に類似しており、これを解決するためには経済改善が優先されるべきであることを説明。経済改善が資産価格下落の回避に有効であり、金融問題解決や財政赤字が縮小されると。米国は先代ブッシュの時代にS&L(貯蓄貸付組合)預金者を公的資金で保護した。公的資金投入による不良債権問題解決策を法律に盛り込んだことが大きな効果を生んだ。米国の金融問題処理では、巨額の公的資金投入によって金融システム破綻を防ぐが、責任は厳格に問うという原則が貫かれた。(※これは植草さんがりそな銀行インサイダー取引疑惑を語る時の根拠にも使われているから重要である。植草さんはこの原則を日本の金融問題に当て嵌めてみた時、小泉構造改革が「まやかし」であることをあざやかに指摘した)
米国の財政再建は景気回復実現によって実現したことが、定例会の主要テーマとなっている。(小泉純一郎氏はこの歴史に学ぶ前に、植草さんの言葉自体を耳に入れなかったようだ。この時点で小泉氏には国家国民を不幸に導く愚宰相の徴候が出ているようだ)
11 日本経済混迷の真相
90年代以降の日本経済の推移を植草さんが解説している。これは彼の著書「現代日本経済政策論」で書いたことの抄録を「自由党定例研究会」で発表したことをかいつまんで説明している。ここに1992年から2007年までの日本経済推移の植草さんのグラフがあるが、これは小泉構造改革派が最も忌み嫌っているグラフである。なぜなら、このグラフ自体が視覚的に小泉・竹中的経済政策の偽装性、不当性を端的に示すからである。経済に関心のある方は必読部分である。
12 異論の表明
ここにも植草さんと竹中氏の金融問題についての見解が真っ向から対立していたエピソードが書かれている。自由党定例研究会で竹中氏は植草さんにかなり腹を立てていたようだ。
13 小泉純一郎氏への進講
自由党の定例研究会の一年半前、植草さんは小泉氏に経済政策の進講を行なった。日本経済新聞の現社長と小泉氏は深い親交があり、社長(当時は副社長)の依頼によるものだった。(留意してもらいたいのはこの席に中川秀直氏がいたこと。神州の泉・管理人の独断で言うなら安倍政権の幹事長を勤めた中川氏は、構造改革継承のお目付け役として配置されたのだ)この時、植草さんは小泉氏に持論を言おうとしたが、小泉氏は遮って緊縮財政論一点張りの主張をまくし立てたそうだ。何のための勉強会?この時、植草さんは彼が宰相になったら、日本経済はお先真っ暗だと感じたそうである。
14 日本経済の崩壊
ここでは、小泉氏が緊縮財政政策を行なって日本経済をジリ貧に誘導したことが解説されている。
15 標的にされたりそな銀
竹中氏が発足させた金融再生プログラムの時から、りそな銀行が標的にされた経緯。
16 1・3・5の秘密
りそな銀行を追い落とすために、竹中金融相、奥山公認会計士協会会長、木村剛氏が連携して謀議を企んだ可能性を指摘。その際、繰延税金資産の計上に秘密があったこと。1・3・5とは、1年、3年、5年のことである。知りたい方は本文を読んでいただきたい。
17 小泉・竹中経済政策の破綻
彼らは植草さんの提言を無視したために、文字通り日本経済は奈落に突き落とされた。
しかし、植草さんは言う。背後に米国政府と米国金融資本の誘導があったのではと。
18 巨大国家犯罪疑惑
19 りそな銀処理の闇
20 求められる事実検証
21 天下り全廃なくして改革なし
22 第一種国家公務員の廃止
18~22までは「知られざる真実」の山場なので、本で読んでください。
23 切り捨てられる弱者
小泉氏は官僚利権は温存して、弱い人々を冷酷に切り捨てた。また政府税調会長に就任した本間正明氏はすぐに失脚したが、就任早々法人税を引き下げるという新自由主義路線そのものの政策を行なった。植草さんはここで興味深いことを言っている。米国の財政支出には福祉予算が自動機械的に決められる「プログラム支出」と、額が個別に裁量される「裁量支出」がある。日本の財務省は、国税配分である地方交付税を、このプログラム支出から裁量支出に切り替えようとしている。理由は官僚利権死守と権力増大志向。
24 米国隷属の外交
25 外国資本への利益供与
26 露見した郵政米英化の実態
27 濫用される権力
28 蔑視されていた国民
29 言論封殺のメディア・コントロール
24~29は本を読んでください。
30 竹中氏の抗議
竹中氏は植草氏の言論を徹底的に嫌悪していた。当時植草氏は夕刊フジの「快刀乱麻」でコラムを書いていたが竹中氏はこれに圧力をかけた。植草さんが勤めていた研究所の上司からコラムの表現に手心を加えるように言われた。(刑事ドラマでは、政治家の犯罪を追及していた刑事が上司から担当を外される場面などはよくあるが、まさか竹中氏がこれに類似したことをやっていたとは驚きである。露骨な言論介入である。しかし、植草さんに生起するいろいろな良くないことには不思議と竹中氏が頻繁に登場しているようだ)
第二章 炎
1 『オールウェイズ?三丁目の夕日』
2 小学校
3 中学校
4 こっくりさん
5 百字作文
6 炎
7 受験
8 『隠された十字架』
9 みんなちがって、みんないい
10 『エデンの東』
11 経済学
12 TPR
13 情報操作
14 公益法人の実態
15 転機
16 消えた放送委員会
17 政治権力に支配されるNHK
18 テレビ・メディアの偏向
19 多様な価値観との共生
第三章 不撓不屈
1 美しい地上
2 人類の歴史
3 弱き者のためにある政治
特にこの部分で植草さんの重要な視点が出ているので書いておく。彼によれば、近年、日本の政治思潮は従来の「ケインズ的経済政策と市民的自由」の組み合わせから、「ハイエク的経済政策と治安管理を重視する政治体制」の組み合わせに大きく旋回したように思えると書いている。(※神州の泉・管理人の捉え方では植草さんが言う「ハイエク的政策と治安管理の重視」とは、新自由主義の極相である「夜警国家」に日本が変化したということだと思う。特に国策捜査が頻発した小泉体制は「警察国家」の特徴が色濃く出ている。)
4 信長ぎらい
5 望ましい政治
6 平和国家の追求
7 個性を尊重する教育
8 不条理
9 救済
10 執筆の契機
11 他者への祈り
12 弱くもろい社会
13 不撓不屈
エピローグ
巻末資料 真実
1 2006年事件
2 自殺未遂
3 捏造
4 懇親会
5 電車利用
6 脅迫
7 2004年事件
8 横浜駅ビル「シアル」
9 変遷した追跡開始経緯の供述
10 決定的な矛盾
11 12分間の出来事
12 卒業生への電話
13 N氏への電話
14 刺客
15 弁解録取
16 錯乱
17 1998年事件
18 創作された調書
19 罠
20 隠滅された防犯カメラ映像
21 隠蔽された神奈川県警不祥事
22 控訴拒絶
以下は神州の泉・管理人の見解であるが、巻末資料では1998年、2004年、2006年の事件の経緯が詳述されている。第一章の「偽装」を念頭において読めば、彼が国策捜査に陥れられた背景が明瞭になるとともに、国策捜査を別個に置いて考えたとしても、三度の事件がいかに不自然なものかよくわかるのである。2004年の品川事件における構内カメラの録画の扱いは、植草さんが無実証明として検証するように提示したにも関わらず、無視されたまま、録画は自動消去された。この故意の放置は不可解そのものである。被疑者から訴えているのに、最も有力な証拠が隠滅されている。この事件の公判中に、神奈川県警の現職警察官による多数の盗撮事件が発生していた。すべての事件において警察官は逮捕されておらず、それどころか退職金が支払われている。問題はこれらの事件が植草さんの裁判が終結するまで公表されなかったことにある。皆さんは妙だとは思われないだろうか。
現職警官が盗撮行為をすれば、テレビや新聞、他のマスコミがこぞってニュース報道を行なうはずである。ところが、植草さんの公判中は故意に報道を控えているのである。明らかに植草さんの裁判への影響が出ないように意図されているのだ。この構図を見れば、植草さんの逮捕、勾留、裁判の流れが、ただの個人的事件の取り扱いではないことがはっきりと見て取れる。植草さんは官邸主導を行なった権力筋によって政治的言論を封殺されたのである。
虚心坦懐にこの「知られざる真実」を読めば、植草さんの身に起きた理不尽な出来事の真相が透視できるのである。真相とは何か。それは国策捜査である。私、神州の泉は今、10月1日から始まる郵政民営化の亡国性をしろうとなりに検証し、警鐘を発しているが、小泉政権の国家毀損という犯罪性は、植草さんが指摘していた「りそなインサイダー疑惑」のみならず、郵政民営化という究極的な売国法案にも色濃く出ているのだ。従って、郵政民営化のペテン性に気が付いているかたがたも、この「知られざる真実」をお読みいただければ、小泉・竹中路線の売国本質がよく見えてくるのである。何度も言うが、植草氏のこの著書は戦後史の中でも稀に見る名著である。現在おかれている日本の位相が非常に明確に認識できる内容なのだ。是非、読んで欲しい。読めば売国構造改革推進論者にはだまされなくなる。
この本は最初から最後まで本物の憂国心情に溢れている。読み進めるうちに、きっと読者にも鶏鳴の轟(とどろき)がひびきわたるだろう。これからの日本は国賊的改悪を断行した小泉政権の本質を明確に総括し、断固として悪い部分を見定めて置かなければ先へは進めないのだ。安倍晋三前総理の失敗は、それを怠って構造改革をそのまま踏襲したことにある。「美しい国へ」の構想そのものは全体としてはけっして悪くはない。しかし日本を思う展望と、実体が売国本質の構造改革の狭間で、彼が地層の断層のように引き裂かれるのは時間の問題であった。私はケインズ的な政策がいいか、新自由主義的な政策がいいかという二項対立的な視点でこの問題を捉えていない。この二者の間には絶妙な中間領域が存在するのだ。しかし、このどちらかを選べと言われればもちろん前者である。植草氏は、たとえば企業や銀行が回復の余地を残していて運営破綻に直面した場合、政府救済のシステムは温存していて、なおかつ自己責任原則を守るという一見二律背反的な考えを基本とする。しかし、これには絶妙なバランス感覚が必要なのである。そういう中庸の感覚は日本人の繊細な神経の使い方によく出ている。このバランス感覚を持つエコノミストが、植草さん以外に我が国にいったい何人いると言うのだろうか。怪獣のように粗野な日本破壊を行なった稀代のデストロイヤー・小泉純一郎氏、この男の根本姿勢に疑念を持ち始めた人々は、いまこそ植草一秀という人物の真価を評価しなければならないと思う。
この本全編に、植草さんの誠実なお人柄が横溢していることを感じるだろう。マスメディアが故意に作り上げた植草氏の人物像と、この本からにじみ出る彼の人格がどれほど極端に乖離しているか、読み進むうちに読者は思い知らされるだろう。今の日本のマスコミには「真」、「善」、「美」が完全に欠落しているのだ。
神州の泉・管理人 高橋博彦
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