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2007年10月 8日 (月)

9月総裁選、麻生氏のネガティブ・キャンペーンの真相を分析する

 私は9月17日のエントリー、「 クーデターの主犯はメディア (水間政憲)」で、読売新聞や読売テレビの恣意的報道、つまり世論誘導報道を取り上げた政治ジャーナリスト・水間政憲氏の記事を全文掲載した。この論文の重要性はいくら言っても言い尽くせないくらいである。なぜならこの記事は戦後メディアに重石のように置かれた真相を語っているからである。我が国の言論機関はGHQ統治時代と何ら変わることのない言論閉鎖状況に置かれている。ただし、統制主体が終戦直後当時に比べて見えないという厄介な状況になっているだけにたちが悪い。江藤淳氏風に言うなら、この状況は「閉ざされた言語空間」ではあるが、統治主体がアメリカのエスタブリッシュメントと強いかかわりを持つ日本の売国勢力であり、彼らは巧妙に姿を隠している。一般の人は考えもしないだろうが、第三次産業革命と言われるIT情報革命の今日に至っても、我々国民は、「閉ざされた言語空間」に囲繞されているのだ。読売系メディアによる麻生氏のネガティブ・キャンペーンはGHQが行なった洗脳放送「真相箱」と基本構図は同じである。では、先月(9月)に起きた総裁選レースの事例を手にとって、この現実の恐ろしさを述べてみようと思う。

 実は先月9月の「麻生氏vs福田氏」の総裁選に関する報道で、日テレと読売新聞が先鋭的な反麻生氏キャンペーンを行なった。つまり、自民党本部や秋葉原の街頭演説における麻生人気は圧倒的に高かったのだが、日テレと読売新聞は、事実に反して逆に福田氏が圧倒的に有利だという恣意的な誘導報道を行なったのだ。NHKも「年配者は福田、若者は麻生」という実態とは違う状況説明を故意に行なった。またテレビニュースでは、麻生氏の秋葉原の演説で、彼のコミック好きを引き合いに出して、あたかも「お宅」の若者だけに人気があったかのような報道が繰り返されていた。実際は違うのである。麻生氏は老若男女すべての層から圧倒的な支持があり、拍手も掛け声も約8割がた麻生氏支持が上まわっていたそうである。ところが読売系の報道媒体は圧倒的に福田優勢を報じた。

 興味深いことに、今まで反日の代表格だと思われていた朝日系列は比較的抑制された報道だったが、国民認識では保守と思われていた読売系が、福田氏優勢の圧倒的な虚偽誘導キャンペーンを大々的に行なった。このキャンペーンの初期から、麻生氏の評判を故意に貶めるできごとで決定的なことは、水間氏が指摘した次のことに尽きる。

 それは、鳩山邦夫氏の発言からすべてが明らかになった。そもそも、雪崩を打って自民党の派閥が福田氏支持に回るきっかけとなったのは、10日夜都内のホテルで開催された「太郎会」終了後の映像が各テレビ局が、繰り返し報道したことによ る。

 それは、テレビカメラに向かって鳩山氏が「太郎会は、みんなで麻生さんに総理大臣になってもらうため集まっている会」です。それが、鳩山氏は安倍首相が退陣する意向を麻生氏から聞いた上での発言として、ネガティブキャンペーンに利用されたのです。

 映像メディアが繰り返し、この様な放送を行なえば、事実上メディア・リテラシーを持たない受動的な国民が、否定的な麻生氏のイメージを刷り込まれるのは当然である。鳩山邦夫氏のこの異常な発言には明らかに言論統制主体の強い意図が感じ取れる。

 さて、ここからが「神州の泉」の本論である。読者の皆さんはマスコミ、特に読売系のメディアが行なったこの顕著な偏向報道の真意が「郵政民営化」遂行にあると私が指摘したら奇異に思われるだろうか。私には確信がある。総裁選報道における麻生氏のネガティブ・キャンペーンは明らかに郵政民営化のためだと断言できる。その理由を語ろう。大きく言うなら、九月の安倍総理退任騒動と総裁選はパックになっており、これらは9月の国会審議を潰すためであった。その最大の目的は、10月1日スタートの郵政民営化に阻害要因を出さないためなのだ。

 水間正憲氏が論文で指摘されているように、読売・日テレ系は麻生氏が総理大臣になると絶対に都合が悪いことがあり、彼らの焦燥は熾烈なものだったと考えられる。水間氏は読売系が突出して麻生氏のネガティブ・キャンペーンをやった背景には、日本の戦後史の闇があると書いている。米国が麻生総理大臣を望んでいないのだ。私には日本を牛耳る米国エージェントが麻生首相の登場を忌避した真の理由が透けて見えている。

 小泉・竹中・安倍構造改革路線は国家構造を脆弱化する「悪魔の国策」であった。その理由は、植草さん、内橋克人さん、紺谷典子さんなど、この路線の重篤な疾患に気付いた気骨ある立派なエコノミストたちが随所でくわしく説明しているので読んでいただきたい。さて国家を脆弱化するこの構造改革の最大のかなめが郵政民営化なのである。米国エスタブリッシュメントは冷戦構造が終焉してすぐに、世界戦略を経済ヘゲモニーに勝つことに転換した。その最大のターゲットがこの日本だった。ところが日本は冷戦時代の米国による核の傘下で自主防衛の精神をすっかり忘却し、寄らば大樹の陰の温室感覚にすっかり染まって惰弱になっていた。米国の国際戦略が軍事覇権から経済覇権に転換し、その最大のターゲットが日本に定められたことに気付かないというていたらくであった。その感覚が今でも継続しているのだ。

 米国が対日政策として行なった戦略は実に奸智に長けた方法だった。東西冷戦終結の少し前に予備段階としてプラザ合意を行い、変動為替相場制を厳然と課し、貿易立国として世界の頂点に君臨した我が国に円高(ドル安)の苦吟を強いて国力の低下をはかった。これで米国は国内産業の低落を防止したのみか、日本の完全破壊を求めず、これを生かさず殺さず状態にして日本の国富収奪に目を向けたのである。日米構造協議の米国の論調は一貫して、日本の伝統的因習的市場構造が、外国製品の流入を阻害しているから徹底的に改めろということであった。実は当時のこの戦略方針が結実して、1994年の年次改革要望書となったわけである。日本人は構造という言葉にだまされやすい。日本人にわかるように構造協議とか構造調整という言葉を、別の言葉で言い表せば、それは明瞭に国柄の破壊と断言できる。国柄破壊としての構造改革を最も先鋭的に行なったのが小泉政権なのである。何度も言うが、小泉氏はリフォーマー(改革者)ではなくデストロイヤー(破壊神)であった。

 小泉構造改革のダイナミズムを決定付けたのは年次改革要望書である。この片務的合意形成の最大の眼目こそ「郵政民営化」であった。350兆円という莫大な資金を抱える世界一巨大な国営事業体としての郵政事業、これを拙速に民営化する理由はまったく不明瞭である。それどころか、この売国法案は、国民の共有財産である巨大資産の防衛的対策についての国会審議を、政権筋が念入りにかつ周到に拒否したという経緯で成立しているのだ。これに巨大マスメディアが徹底して協力した。2005年の9月11日の郵政解散総選挙、その一ヶ月くらい前は、テレビや新聞に外資系保険会社のコマーシャルが執拗に繰り返されていたことを記憶されている方も多いだろう。マスコミに米国系外資が莫大な宣伝費を投入し、郵政民営化関連法案が成立するように言論統制をかけたのだ。かくしてこの国家毀損の法案は成立し、今月の1日から郵政公社の分社化が実現した。

 本題に戻ろう。郵政民営化を強行させた黒幕は、8月に突然提出された国民新党の「郵政民営化凍結法案」に心底慌てたのである。そのままにしておいては、国民新党が火付け役となり、郵政法案そのものが見直される懸念があった。だから、何としてもこの気運を頭打ちにするために、9月の国会審議を中止する必要があった。そこで起きたのが安倍総理の時機を逸した退任表明と総裁選だった。これで九月中の国会開催は絶望的になった。これに加えて、彼らは麻生氏の出馬に心底警戒感を抱いたのだった。なぜ麻生氏は米国エスタブリッシュメントに嫌われたのだろうか?

 それが本論で私が最も言いたいことである。2005年、郵政民営化関連法案が正式に可決となる第163回特別国会の半年前の4月、当時総務大臣であった麻生氏は、郵政民営化担当大臣の竹中平蔵氏と、郵政公社の「分社化」について激しい意見対立を行なっている。麻生氏は郵政四分社の一体性維持を強硬に主張した。しかし、竹中氏は郵貯銀行、簡保会社株の完全売却に徹底的に固執した。喧々諤々の白熱した議論があったようである。麻生氏は言った。「株の一部を持ち合って一体化を維持することが大切だ。」これに対し、竹中氏は反論した。「金融は違う。それでは金融が持たない

 結局、議論が続いた末に、当時の細田氏が竹中案と麻生案を小泉首相に持って行き、彼の裁定を仰いだ。小泉氏は竹中案を採用して決着が着いたという経緯があった。この時、麻生氏が無念を抱いていたことは確実だったろうと私は思う。総裁選において米国が麻生氏を忌避した理由は完全にこれである。私はすでに「マスコミが麻生氏劣勢の誘導報道を行なった理由(わけ)」でも説明しているが、もし麻生氏が新総理の座に着けば、麻生氏はあの持ち前の行動力で、一旦は郵政公社の分社化を停止した可能性が強い。2004年当時、麻生太郎総務相、生田正治郵政公社総裁は、民営化当初の経営形態を、最初単一会社にしておいて、徐々に(段階的に)分社化していくということを主張していたのである。

 麻生氏は、竹中氏との論争に終止符を打った小泉純一郎氏がいない今、自身が総理大臣になった場合、当初の考えどおり、郵政四分社の一体性を維持するという方針を採ったことはほぼ確実だろう。そうなった場合、困るのは年次改革要望書をもたらした米国エスタブリッシュメントなのである。麻生氏の目論見どおり四分社相互が株の一部を持ち合えば外資が手をつけにくい状況になる。小泉氏や竹中氏の売国計画は郵政公社の分社化なのである。彼ら売国奴たちの最終目論見は、実は2017年の完全民営化にはない。彼らの真の目的は「分社化」そのものにある。


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コメント

JAXVNさん

 おはようございます。紺谷さんと麻生氏のこと
をありがとうございました。以前、小林よしのり
氏の「わしズム」で紺谷典子さんの小泉構造改革
批判を読みまして、このお人は植草さんや内橋克
人さんと同様に物事の真相をきちんと捉えている
と注目していました。

 麻生氏ですが、たしかに彼は舌禍傾向がありま
すが、本音は小泉構造改革に批判的で、積極財政
論者なのかもしれません。少なくも総裁選が二者
択一ならば麻生氏がなっていれば局面は大きく
変わっていただろうと考えます。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2007年10月12日 (金) 10時14分

こんにちは。
> yasuji様、高橋様

麻生氏は確かに、以前は「構造改革路線」に否定的だった事があります。最初に総裁選に立候補した時は、「まず財政出動による景気回復を」と主張していました。
「「女性投資家の会」会報 第8号  2001年 5月 小泉政権の改革は危険
エコノミスト(代表幹事) 紺谷典子(紺谷さんも
小泉政権当初から「構造改革の危険性」を指摘しておられました)
(中略)
総裁選に立候補した橋本、亀井、麻生の三氏は小泉さんとはまったく逆のことをおっしゃっていました。「景気回復が先だ。この時点での構造改革は景気を悪化させ、結果的に構造改革をむしろ遅らせる」と。体質が弱いために病気になったとしても、病人にダイエットやジョギングはさせられません。ダイエットやジョギングはこんど病気にならないためのもので、病気を治す力を持っていないだけでなく、むしろ悪化させるからです。一時期よりずいぶん安定したとはいえ、「橋本改革」を始めた時にくらべ体力が大きく落ちている現状で、「小泉改革」を行えば橋本改革より大きな傷を負いかねません。(後略)」
http://www5d.biglobe.ne.jp/~wia/kaihou/8.htm
麻生氏の経済認識にも、問題点は確かにあります。(経済コラムマガジン491号(http://adpweb.com/eco/eco491.html)に、あのアルツハイマー発言のもう一つの問題点が指摘されています。)しかし、福田氏に比べれば基本認識は「よりまし」という可能性は高いでしょう。だからこそ、あそこまで性急な「ひっくり返し」があった、とも言えますが(はっきり覚えています。真っ先に「麻生氏追い落とし工作」を始めたのは確かに日本テレビ(=読売新聞)でした)。

投稿: JAXVN | 2007年10月11日 (木) 13時10分

yasuji 様

 レスが遅れてすみませんでした。いろいろと
調べて行くうちに、麻生氏が郵政民営化に本音で
はかなり批判的であることを確信しました。

 竹中氏とぶつかり合っていましたからね。
分社化も拙速にはしないほうがいいという腹でし
たね。彼が総理になった場合、郵政民営化は見直
された可能性は高いと思います。あとの祭りです
が。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2007年10月10日 (水) 13時47分

麻生氏が強行に分社化に反対していたとは知りませんでした、麻生氏ならありえる話だと思います。
安倍辞任報道を受けてっきり麻生新首相の誕生と喜んだ一人ですが、これで急激に福田体制になったいきさつが理解できました。
民営化法案に賛成したのも本意でなく自らが生き延びる事によって目的を遂げようとしたのではないでしょうか。
麻生総理誕生を逃した国民の失ったものの大きさは計り知れません、返す返すも残念です。

投稿: yasuji | 2007年10月 9日 (火) 00時15分

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