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2007年11月12日 (月)

小野盛司著『日本はここまで貧乏になった』書評!

Photo_2   今年の9月、『日本経済復活の会』の会長さんでもある小野盛司氏が、現状日本におけるのっぴきならない経済の実情を訴えるきわめて重要な本を出版した。その書名は『日本はここまで貧乏になった』(ナビ出版)である。2001年に小泉政権による急進的な構造改革が推進され、紆余曲折はあったが、日本の景気は一応は回復したことにされている。しかし、庶民側の生活感覚から言えば、景気が上向いたという実感はまったくない。我が国は異様なデフレ固定の状況が長く続いて、2007年の今年になってもいまだに“デフレ脱却宣言”が出ていない。

 小野氏によれば、我が国において、(※)GDPデフレーターがマイナスという意味のデフレは1994年から始まっている。その後、わずかに1997年を除外してデフレーターは継続してマイナスを維持している。先進国中、これほど長期間デフレが続いている国は日本だけである。このデフレ固定(?)のおかげで日本はどんどん貧乏になってきている。

 ( ※GDPとは、国内総生産の略で、国内で生産された商品やサービスの総額を表し、国内の経済状態を測る指標となる。GDPには、単純に市場価格だけで考えた名目GDPと、物価変動を考慮した実質GDPがある。またGDPデフレーターとは、商品やサービスの価格変動を示す指標。物価が上昇するとプラスになり、下落するとマイナスになる。消費者物価指数が個人消費者が購入するものに視点を置くのに対し、GDPデフレーターとは、設備投資など、経済全体のダイナミックな動きを示すため、物価の変動をより正確に把握することができる指標。財貨やサービスの値段は、需給バランスによって決定付けられる。たとえば給料が2倍に上がっても(名目GDPが増えても)、物価が2倍になってしまえば、実際は経済が活発になったとはいえない(実質GDPが上がったとは言えない)。
      
    GDPデフレーター=名目GDP/実質GDP

 物価の変動による影響分を取り除いた実質GDPを使って経済の活況を知ることが重で、その名目GDPと実質GDPの差額を調整する指標がデフレーター。 )

 一人当たりの名目GDPは1993年と1994年は世界第一であったが、昨年2006年は世界第18番目まで低落した。小野氏によればこれは1971年の水準だそうだ。22年もかけて日本は豊かな国へ邁進してきたのが、特に小泉政権に至って、我が国は先進国中、最も貧乏な国へと加速的に転落しつつある。植草さんも、小泉政権が2001年から2003年にかけて急速に景気悪化させた原因を超緊縮財政政策というマクロ政策の過ちのせいだと指摘し続け、また政府がりそな銀行への公的資金を注入した後の株価猛反発を、小泉元総理が“構造改革の成果”だとうそぶいたことの非も指摘した。小泉政権はさまざまな点でいかがわしさが目立ち、それまでは存在しなかったタイプの深刻な格差社会を現出し、老人福祉の切捨てや実質増税路線を無慈悲に遂行して国民生活を逼迫させた元凶となっている。

 著者の小野氏は、小泉内閣が国の借金も借金のGDP比も大幅に増加したことを指摘し、もしも小泉内閣が緊縮財政路線ではなく積極財政路線をとっていたなら、どういう結果になっていたかを、日経新聞社の日本経済モデルを使ってシュミレーションを行なったことを書いている。それによると5年後には、緊縮財政よりも積極財政のほうがGDPが約四割増しで、国の債務は二割以上小さくなるという結果が出た。内閣府で行なわれた試算でも同じ結果が出ている。当時、この結果を衆議院議員の小泉俊明氏が竹中平蔵財務大臣に示したら、答えは「勉強しておきます」だったそうだ。

 本書ではこのシュミレーション結果を、衆議院議員の滝実氏が“質問主意書”で国会で質問した答弁の様子が書かれている。政府は積極財政のほうが財政が健全化することを認めておきながら、滝氏の質問に対しての答弁は“誤差が大きいから従わなくてもよい”ということだった。誤差を問題にするなら試算そのものを出すなよということである。

 第一章  貧乏になった日本、今後どうすべきか

 世界のGDPに占める日本の比率は1999年の17%から2005年には10.3%まで落ちた。ここに世界のGDPに日本が占める割合を示したグラフがあるが、ほとんど急激な右肩下がりである。不思議なことは、世界経済がここ30年間で最も良くなっている時に、日本だけがこういう凋落のカーブを描いていることについて政府もマスコミも何も言わないということだ。もうひとつのグラフは2007年2008年の名目GDP予測が、OECD加盟30ヶ国中、日本が最低の水準になっていることを図示している。下記のグラフは一人当たりの名目GDPの国際順位である。右側の急峻な崖のような斜面が小泉政権時代である。まさに奈落へ向かって一直線に滑り落ちている。

Photo_3

 1994年は世界一豊かな国であったが、継続的な経済政策の失敗で、2006年には18位まで順位を下げた。国民がどんどん貧乏になっていることがはっきりとわかるグラフである。ただし、小渕内閣の時だけは一時的に積極財政を行なった成果が現われて世界第二位まで行ったが、すぐに積極財政への逆噴射をかけて経済は墜落した。森政権と小泉政権の失敗で日本経済は1971年の水準まで凋落した。大手マスコミの報道姿勢が世論を誘導していると思われる節(ふし)があるから、小渕さんが評価されなかったのは、何らかの恣意的な画策が働いていた可能性がある。逆にマスコミは小泉構造改革を、まるで救世的な政策であるかのように大々的にかつ肯定的に報道しまくった。まるで日本だけが“積極財政策”を取るのを嫌っている大きな力が働いているのではないかという疑念が生じてくる。

 安倍氏の積極財政に対する考え方は、まるで小泉構造改革が逆戻りしてはならない素晴らしい景気回復であるかのような言い方をした。改革を止めたら時代が逆行してしまうかのような言い方である。これは新自由主義特有の単線的な進歩史観モデルに沿っているのである。こういう言い方は小泉元首相が最も顕著で、竹中平蔵氏なども、この欺瞞の進歩史観を構造改革推進の常套句として使った。すなわち“改革か後戻りか”の二者択一であり、改革に批判的な者はすべて“抵抗勢力”と決め付けた。積極財政こそ取るべき第三の道だった。経済をよくわかっている人たちや、外国、例えばニュージーランドや南米諸国の事例をよく見ていた人たちには、新自由主義経済の適用が結果において、ことごとく無残な失敗に帰していることをよく承知していたはずだ。ところがマスコミはそういう本物の知識人たちの言葉をテレビや新聞で紹介しなかった。それどころか、小泉構造改革の本質が新自由主義(ネオリベ)であるということさえ伏せて、頭ごなしに賞賛していた節があるのだ。

 歴史に学ぶデフレ脱却法

  デフレ脱却法は良く知られていて、政府が日銀と協力しながら適切な規模の財政出動をすること。その事例として、小野氏は大恐慌時の大蔵大臣・高橋是清と日銀総裁・深井英五の協力体制を築き、国債の日銀引き受けという形で財政と金融両面から景気を刺激した話を掲げている。

 特に小泉政権が顕著だったが、最初からデフレ脱却は不可能という姿勢があったようだ。新聞(特に日本経済新聞)は、積極財政論的な予測を行なったとしても、けっしてそれを発表することはない。このように積極財政を頭ごなし否定する根拠として、“いったい財源はどこから出てくるのか?”という設問が必ず出される。財源は国債の増発と仮定して金利を低めに誘導する必要があると持っていく。そのように多くの国債を発行してもいいのかという問題提起だが、結果としてGDPが増え、景気が良くなって税収は増える。国の借金のGDP比は減る。これを示す図も必見である。小野氏が積極財政による再生というこれらの試算を発表しようとしたら、日経新聞が公表するなと言ってきたらしい。このあたりのことは本書を読んでもらいたい。要はこの日本には“積極財政”を忌避しようとする何らかの勢力が目を光らせているということなんだろうか。こういう経過はあまりにも異常である。

 日本は過去に“資産デフレ”で千数百兆円という膨大な資産価値が失われている。しかし、政府は40兆円足らずしか景気対策を行なわなかった。積極財政はある程度持続的に行なう必要があるが、これまではそれをやったとしてもすぐにブレーキをかけたために効果が出る前に景気が活性化しなかった。適切な規模で適当な時間を持続させる必要がある。しかし、小渕政権の例を見れば、積極財政はやれば必ずそれなりの効果が出ることが証明されている。1999年以降、国民の可処分所得は減り続け、貯蓄を切り崩して生活しているという悲惨な状況に立ち至ってきた。小泉政権ではメディアの画策がかなり大きいが、結果として国民は自分たちを痛めつける政権と政策を受容してしまった。小野氏はこのまま可処分所得が減少し続けたらどうなるかについては、あまりにも恐ろしい想像が襲ってきて計算を放棄したらしい。しかし、可処分所得が今後変化しなかった場合と、毎年2.5%ずづ増加した場合は数年後には直線的に増え始めることを確認している。

 デフレ下では賃金はさがり、リストラは促進される。こういう状況で消費が伸びるわけはない。一刻も早くデフレを解消しないと日本は貧乏になる一方である。

 国債の大量発行で国債の格付けが下がり、国債が暴落するという嘘

 この箇所には著者の面白い記述が書かれている。国債の増発で国債の信用低下が起こり、財政が破綻すると主張して国民の恐怖感を煽っているエコノミストに対して、著者が怒りとともに痛烈な批判をしている。それは本書で読んで欲しい。こういうエコノミストも国民の貧乏に積極加担しているということだ。もしも、十年以上も前に「国債を増発すれば国債が暴落する」ということが大間違いであることに気が付いていたなら、適切な規模の国債を適切な時期に発行し、日本経済の没落を未然に防げたと著者は語っている。

 景気が良くなって金利が上がることを、あらゆる手段を講じて阻止しようとしているのが財務省である。金利が上がれば膨大な国債の利払いが増え、財政が破綻する。だから景気が良くなっては困るという論理である。小泉元首相も安倍前首相も財務省の言いなりだった。(ただ、管理人が思うに、安倍前首相の場合は辞任寸前に財務省に反旗を翻したためか、大臣の金銭スキャンダルが軒並みに続いていたのかもしれない)

 日銀にもっと国債を保有させれば日本の貧乏は食い止められる。これを阻んでいるのが日銀の“自主規制”である。日銀の不文律として、“長期国債の保有は日銀券発行残高まで”という自主規制がある。神州の泉・管理人も知らないし、これをマスコミが言った事はないのだろう。これについては滝議員が安倍首相に質問し、答えを得ているので本書を読んでもらいたい。政府はこの質問に逃げ腰である。日銀がこういう自主規制を持つことで長期国債の保有が厳しく制限され、その結果として日本は財政悪化に陥り貧乏国家になっている。

 その他、日本の公共投資は悪者扱いされて久しいが、我が国は国土の特異性や自然環境の風災害が多いことなどから、防災的治山治水や道路整備などは不可欠な投資環境にある。ここで、一つの有効な試みとして九州大学名誉教授の“洋上風力発電構想”が提言されている。この装置を日本の各海岸沿いに設置すれば、原子力発電の半分のコストで、二酸化炭素を排出しないクリーンな電気が発電できることがあげられている。効率のいい風力発電であるから、政府が決断すれば実行可能である。

  第二章および第三章は質問主意書を使った安倍前総理との質疑応答の解説である。これを読むと、積極財政に対する政府の異常な忌避姿勢が浮かび上がってくる。

 以上、小野盛司氏の『日本はここまで貧乏になった』の概要を紹介したが、日本がなぜここまで貧乏になったかをこの本は、見やすいグラフとわかりやすい説明できわめて端的に説明している画期的な本である。なぜ、実力のある日本経済がここまで閉塞的な状況に置かれているかを考察する非常に有力な一助になることは間違いない。今は、有象無象のエコノミストモドキが書いた本が数多く出ているが、本書はエコノミストの植草一秀さんや、内橋克人氏の本と同様に、真摯に国民の立場に立った数少ない良書の一つである。皆さんも是非ご覧になって欲しいと思う。

                     神州の泉・管理人

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コメント

JAXVNさん、こんにちは。

 小泉政権が行なった構造改革で、考えてみれば
最も悪質なことは若者に絶対的な希望格差社会を
強いたことにあるかもしれません。勝ち組願望と
は言いますが、ほんとうにパチンコや宝くじと同
じような虚無的な射幸心を与えましたね。

 ここには、いやオレは地道に働いてまっとうな
生活をするんだという選択肢さえなくなっている
のが現実です。何と言いますか、一億総家畜化・
奴隷化が進行しているという感じですね。小泉政
権によって、日本人の勤勉性や誠実さが反映され
ない社会になりました。NHKでヤクザ資金が通
常の企業に入り込んで還流し、企業生命を弱らせ
ていることをルポしていました。その際、カタギ
であるはずの普通の証券マンなどがヤクザに協力
して資金の偽装に加担しているそうです。この普
通の投資家はヤクザと共生しているから“共
生者”と呼ばれているそうです。

 司法もそうですが、公平性、厳格性を担保しな
ければならない国家システムが崩れ始めているこ
とをありありと感じます。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2007年11月13日 (火) 10時35分

こんにちは。
この小野盛司氏の著書の帯には「小泉構造改革は失敗だった。」とありますが、実際はどうなのでしょうか。小泉元首相の関しては、元同級生の栗本慎一郎氏に「小泉はとにかく頭が悪い。森元首相も頭が悪いと言われていたが、森氏は自分が物を知らない、という事は分かっていた。しかしそれすら分からないのが小泉だ。だから森の方がまだ小泉よりましだ。」と言われていたくらいなので、構造改革の結果がどうなるのか本当に分かっていなかった可能性はあります。しかし竹中氏などは、例えば森永卓郎氏の「竹中さんは頭は悪くないんです。性格が悪いんです。」という発言にもあるように、失敗する事は分かっていたように思います。彼らからみれば、この現状はむしろ「成功」なのでしょうね。だからこそ、例えば山崎行太郎氏は「彼ら構造改革派に国家反逆罪を適用すべし。」と言っておられるのだと思います。もちろん、分かっていなかった小泉元首相にも「無知の罪」はある訳ですが。
ちなみに前記の森永氏と雨宮処凛氏との対談記事では、こんな話が出ています。
「雨宮:勝ち組の人は、小泉内閣が戦後日本で最高の、一番いい内閣だったといいますからね。びっくりするんですけど、そっちから見るとほんとにそうなんですね。
森永:そうなんです。彼らにとっては、本当にいい内閣です。それでね、これもほとんどメディアには出てこない話なんですけれども、失業者の反対側に、働いていない人というのが、たくさんいるんですよ、今の日本には。その人たちは株を山のように持っています。この5年間で、企業が株主に払う配当金は、3倍に増えているんです。ということは、彼らは5年で所得が3倍になっているってことなんですよ。まったく働いてないくせに。
 私、基本的に働かない人は、嫌いなんですね。働けない人は別にして、やっぱり人間は、「働いて飯を食う」というのが基本だと思いますから。でも、今の日本には、働いていない奴らがいっぱいいて、巨万の冨を手にしているのです。
雨宮:その一方で、働きづくめなのに、喰えない人も増えているという・・・。
森永:彼らが利口なのは、メディアには決して出ないんですよ。出ましょうよ、といっても、「何のメリットがあるんだ?」と言いますから。
(マガジン憲法9条)編集部:出てきたら反感買いますからね。その人たちは株の所得者ということですか? いわゆる不労所得がたくさんあるということですよね。
森永:株主というのはあまり正確じゃなくて、株の他に、例えばビルのオーナーとか不動産をたくさん持っているとか。いわゆる資本家です。今までは、あまりいなかったんですよ、日本には。
雨宮:それも新自由主義的なものでどんどん増えていったんですね。
森永:そういう人たちが次々と生み出されていったというのが、構造改革、弱肉強食の新自由主義の成果なんです。だからごく一部の資本家を生み出す一方で、一般庶民をどんどん低所得者に落としていく。
雨宮:小泉さんのうまかったところは、若者に対して、自分も「勝ち組」になれるんじゃないかと、錯覚させてしまったっていうところですね。
森永:そうなんですよ。今、大学で教えているんですけど、うちの大学って、ざっくり言うと偏差値50の普通の大学です。今、普通の大学なんか出ても勝ち組なんかには、なれないですよ。ゴールドマンサックスに就職できるわけじゃない。そんな彼らに聞いてみたことがあるんです。「一発大逆転はないんだけど、終身雇用のある安定した世の中と、一夜にしてホリエモンが生まれるような弱肉強食社会とどっちがいいですか」って。そうしたら、大部分の学生が、弱肉強食の社会を選ぶんです。なぜだかわかります? 
雨宮:わからないです。
森永:普通の今までの日本社会だったら、もう偏差値50の大学出たって勝ち目はないわけですよ。だけど、もしかしたらホリエモンになれたら、将来の希望が持てるかもしれない、でもね、なれないんですよ。しかもそもそもホリエモンは詐欺師だったわけですから。
 「日刊ゲンダイ」の元編集長が、今の日本社会は「パチンコ型社会」だという名言を残してます。パチンコをずーっとやっていたら負けるのはわかっているわけです、平均としては。でも何で行くかっていったら、一発あてたら5万から10万になるという頭が、みんなにあるからで。だからみんな毎日毎日通って、ただでさえ貧しいのに、もっと貧しくなっちゃうんですね。 」
http://www.magazine9.jp/taidan/001/index.php

投稿: JAXVN | 2007年11月12日 (月) 17時00分

御サイトについて何か述べていましたので紹介します。発言者は「だめ狼」という人です。
http://shikaishi.de-blog.jp/shakaiwokiru/2007/11/post_3871.html

投稿: n | 2007年11月12日 (月) 13時40分

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