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2008年2月 8日 (金)

昭和恐慌に学ぶデフレ脱却法(小野盛司)

(※日本経済復活の会 会長 小野盛司氏の記事、第二十二弾です)
  http://tek.jp/p/

 昭和恐慌の前には、やはりバブルがあった。下の物価指数のグラフを見ていただきたい。1914~1918年の間、戦争参加国の輸出の縮小や軍備品需要のため、日本の商品への需要が急増し、輸出が大幅に伸び、経常収支は大幅な黒字となった。これに対応し、生産力は飛躍的に増大、わが国経済の画期的発展の好機が到来した。日銀券の発行も激増、年率30%を超す経済成長が続いた。ただし、物価の値上がりも激しく、実質成長率は年率2%程度だった。商品投機・土地投機・株式投機が発生した。日本の商品は、欧米に比べ競争力は劣ったが、戦時中は欧米は出てこなかったので、中国などに進出できた。そこで設備投資計画も十数倍に増加し銀行も積極的に融資に応じた。

 1920年株式市場が大暴落し、反動恐慌が勃発した。戦後欧米企業が進出してきて、売れなくなった。そこで輸出が減少し、生産設備が過剰となり遊休化した。大量の不良債権も発生。1927年には金融恐慌も発生した。

出所:長期経済統計 国民所得 東洋経済新報社
Photo

 「失われた10年」の最後に、昭和恐慌を引き起こした浜口内閣は、小泉内閣と非常によく似ていると言われている。両者とも国民に対し「緊縮財政の痛みに耐えよ」と訴え、デフレ下の緊縮財政を強行した。浜口首相は1929年8月28日に「全国民に訴う」という署名入りの宣伝ビラを全国1300万戸に配布した。同日午後七時すぎには、全国中継放送で首相は国民によびかけた。「・・・今日までの不景気は底知れない不景気であります。前途暗澹たる不景気であります。これに対して、緊縮、節約、金解禁によるところの不景気は底をついた不景気であります。前途に皓々たる光明をのぞんでの一時の不景気であります。・・・我々は国民諸君とともにこの一時の苦痛をしのんで、後日の大なる発展をとげなければなりません。」

 デフレ下での緊縮財政が成功するわけがなく、それに対する多くの批判があった。例えば三土忠造は『経済非常時の正視』の中で次のように批判している。

 「一般国民は、経済上の知識が乏しく、唯古来の道徳上の教訓によって、節約と言えば無条件に誠に結構なもののように考えるのは無理もないことである。即ち自分だけ節約した場合と国民挙って節約した場合とを混同したのである。世間一般の人は従来の通りの生活をしていて自分一人節約した場合には、その節約しただけ懐に余裕ができることは言うまでもないが、世間一般が挙って節約した場合には、これとは全然相反する結果を来すのである。・・・国民挙って節約すれば、他人の生産した物を買うことが減少すると同時に、自分の生産した物の売行も減少する。従って売買の中間に立つ取引運搬等も減少して結局生産消費取引の減退、言い換えれば経済生活全体の縮小に終わって、国民の多数は消費節約による支出の減少よりも、生産品の売行不振・価格の下落・商取引の減退による収入の減少の方が大きくなって、国民全体の懐具合が悪くなるという結果になるのである。有益無益を問わず、ただ消費の節約と言うことは、道徳場から言っても意味を為さず、又今日の経済生活から言っても決して産業の振興、貿易の発展を促す所以ではない。」

 デフレの下で、定率減税の廃止による3.3兆円の増税、歳出削減、社会保険料の値上げ、平均賃金の下落など次々と国民に痛みを押しつけ、地方政府にも節約を強要してくる今の政府は、この批判をよく読んで教訓にすべきだ。すでに述べたように1920年代の「失われた10年」に終止符を打ったのは、高橋是清蔵相の大規模な景気対策であった。

出所:長期経済統計 財政支出 東洋経済新報社
Photo_3

 
 高橋蔵相による積極財政は1936年度まで続き、デフレは終わり、世界大恐慌から世界最速で景気回復したと高く評価されている。しかし、1936年、2・26事件で高橋是清は暗殺され、その後は軍部の独走で、行き過ぎた国債発行により過度のインフレ経済へと移っていく。

 下図は、国の債務のGNP比である。高橋蔵相による積極財政で巨額の赤字国債の発行により、国の債務は激増した。しかし、GNPも同時に激増したわけで、債務のGNP比を見ると、むしろ増加が止まり減少が始まっていた。それ以前、緊縮財政で借金を減らそうとして昭和恐慌を引き起こした時代には、GNPが減ってしまい、債務のGNP比は増えてしまったことが分かる。参考までにであるが、第一次世界大戦では、日本は輸出が急増し、成金が続出、銀行も設備投資に積極的な貸し出しを行い、経済は拡大しバブルが発生しインフレになった。財政拡大によるインフレではなかったために、国の債務のGNP比は逆に減少している。その後、バブル崩壊後の「失われた10年」では、デフレの中、国の債務のGNP比は増加を続けているのも、平成のデフレと共通している。(小野盛司)

出所: 明治以降本邦主要経済統計 日本銀行統計局編
Gnp

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コメント

マンガで 様

 石ノ森章太郎の「大恐慌」というコミックです
ね。覚えておきます。ありがとうございました。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2008年2月11日 (月) 07時35分

今売っているかどうかわかりませんが、
石ノ森章太郎の「大恐慌」という単行本
があります。

投稿: マンガで | 2008年2月11日 (月) 04時09分

>今私の住んでる地方では地方局が「ゼイリブ」
>と言う映画を放送していますが、今の日本に
>ぴったりの映画ですね。

 私も“ゼイリブ”は最初見たとき結構インパク
トがあって何度も見ました。映画ではコマーシャ
リズムを洗脳という手法でサブリミナル的に庶民
に撒き散らしていて、これに順応しない人間は出
世もできず、それどころか反逆分子として目をつ
けられ、狙われる。エスタブリッシュメント側に
いるのは人間に化けた宇宙人という設定だったの
ですが、私は見ていてアメリカの支配構造にそっ
くりだなと思いました。

 途中まで見ていて、ああ、これはアメリカを牛
耳る少数支配層への痛烈な皮肉だなと察しまし
た。監督さんは相当の覚悟でこれを製作したと思
いますね。これを見てだれも人間に化けた宇宙人
に支配されたSF映画だとは思わないでしょう。明
らかに国際金融資本の猛威を皮肉っている映画で
すね。SF映画にしては下層労働者たちの描き方が
リアルすぎますからね。おっしゃるように、これ
は新自由主義化した世界への皮肉と警告です。

 ところが、この映画に込められたリアルなメッ
セージは今の日本でも当てはまるようになってし
まいました。サングラス(リテラシー)を持たな
い日本人はB層という被洗脳者に成り下がり、いつ
までもアニマルファームで暮らすことになるとい
うことですね。学校で見せればいいと思います。
子供でもちょっとしたキャプションを付けてあげ
れば理解できるでしょう。この映画は稀少な傑作
です。言うなればオゥエルの「1984」に相当する
でしょうか。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2008年2月 9日 (土) 21時45分

今私の住んでる地方では地方局が「ゼイリブ」と言う映画を放送していますが、今の日本にぴったりの映画ですね。
この映画が作られた当時の米国はまさにレーガニズムの真っ最中だった記憶があります。
新自由主義の本質を突いた見事な映画だと思いますね。
ぜひ全ての日本人に見てほしいですね。
つうか学校で見せればいいと思いますw
残念な事に日本ではこのような映画や番組は出てきませんね。
日本人全員にあのサングラスを配りたいもんです。
ネットの出現にそれを期待しましたが、マスコミに比べればあまりにも無力でしたね。

投稿: ななし | 2008年2月 9日 (土) 20時52分

まだまだ日本にもまともな官僚は残ってるようで少し安心しました。
だから持ち合い解消・護送船団解消は駄目だつってるのに。
ファンド規制、害資規制しろって。
インサイダーしか儲からん仕組みになってるのに。
バブル期と同じように虚業と不労所得獲得ににうつつをぬかしてると更に日本経済が壊れるぞと。
ただこう言ったまともな官僚は左遷されるか潰されるんでしょうね。
改革派の政治家やマスコミによって。

経産省次官、短期的に株売買を繰り返すデイトレーダーや投資ファンドについて「最も堕落した株主」「バカで浮気で無責任」

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/unpleasant_affairs/?1202471307

投稿: | 2008年2月 9日 (土) 09時40分

今、岩波新書の「昭和恐慌」長幸男著
と言う本を読んでるところですが、小泉・竹中コンビと浜口・井上コンビがやった事があまりに似ていて笑っちゃいました。
置かれてる状況もよく似てますね。
どちらも国際金融資本の手先の匂いがしますね。
ただ現在と当時と決定的に違うのは浜口・井上はテロに遭ってますが、小泉も竹中ものうのうと生きてますし、メディアも財界も批判しませんしね。
当時はメディアや学者、財界からも相当叩かれたようですが。
特に産業資本主義の代表でもある松下幸之助は厳しくデフレ政策を批判してます。
その後、犬飼毅・高橋是清の積極財政によって日本経済は救われる訳ですが、現在の日本ではケインズ主義者の復権の芽は無いようです・・・
新自由主義勢力が完全に財界や学者、メディアをコントロールしちゃいましたからね。
当時より状況が悪いと言えるでしょうね。
同じ頃ドイツでもブリューニング内閣がデフレ政策を取って失敗してナチスの台頭を招いてます。
ナチスのヒトラーも大規模財出でドイツ経済を立て直しました。
アメリカでも新自由主義的な共和党政権が倒れ、ニューディールを掲げたルーズベルトが政権を握りましたしね。
歴史に学ぶならば今後、米国発の恐慌→新自由主義的政策の失敗→ファシズムの台頭→世界大戦となるかも知れません。
貧困層の急増、特に若者と農村におけるそれは戦争可能体制への移行でもありますから。
また戦争=余剰生産設備の破壊であるとするならば、東アジアでの可能性が非常に高いでしょうね。
日中韓台にそれは集中していますから。
もし世界の支配層がそれを目論んでいるのなら日本は絶対にそれに乗っちゃいけませんね。
先の大戦ではそれに乗っちゃって敗戦国になりましたから・・・
今度は巻き込まれないようにするか、勝ち馬に乗る事ですね。

投稿: | 2008年2月 9日 (土) 09時34分

時の宰相・濱口雄幸は国民に対してこう言った。

「 ・・我々は国民諸君とともにこの一時の苦痛をしのんで、後日の大なる発展を
とげなければなりません。」

本当だ!!小野さんの言ったように、このメッセージは小泉純一郎氏が『米百俵
の精神』のたとえを以って、国民に痛みに耐えてくれと言ったこととまるっきり
相似している。

 濱口メッセージに対して、三土忠造は次のように駄目押しをした。

『節約と言えば無条件に誠に結構なもののように考えるのは無理もないことで
ある。即ち自分だけ節約した場合と国民挙って節約した場合とを混同したのであ
る。世間一般の人は従来の通りの生活をしていて自分一人節約した場合には、
その節約しただけ懐に余裕ができることは言うまでもないが、世間一般が挙っ
て節約した場合には、これとは全然相反する結果を来すのである。』

 濱口雄幸の節約奨励も、小泉純一郎の国民へ痛みを強いることも、『合成の誤謬』
をもたらしているように思える。つまり、国民一人ひとりの節約や我慢は正しいが、
これが全体に及ぶと、総需要が逓減して全体として経済の縮小になってしまう。デフレ
下における不良債権処理加速も、緊縮財政も全体の活気を殺ぐということでは合成の
誤謬で説明できるのではないだろうか。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2008年2月 8日 (金) 11時20分

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