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2008年2月11日 (月)

年金問題の正しい考え方(小野盛司)

(※日本経済復活の会 会長 小野盛司氏の記事、第二十四弾です)
  http://tek.jp/p/

 年金とは本来人々に老後の安心を与えるものだったし、過去において確かに安心を与えていた。少子高齢化が進んだとしても、生産性の向上の速度はそれよりもはるかに速い。つまり過去より現在、現在より未来のほうが、より安心できる社会になりつつあるのが現実だ。それなのに、政治家やマスコミが誤ったメッセージを国民に送っているために、社会に不安を与えていることは嘆かわしい現実である。

 現在たくさん年金を集めてそれを蓄えておけば将来安心だろうという考え方は、全く間違えている。確かに、個々の家計では、今蓄えていれば、将来それを使えばよいので安心である。しかし、国全体となるとそれは違う。デフレの時代、どんどん集めると、それは増税と同じく市中からお金を吸い上げることとなり、デフレを悪化させ経済を縮小させてしまう。実際、世界のGDPに占める日本の割合はデフレのお陰で半減した。半減させてしまったら、年金の取り分も半分になってしまうのだ。もしも、逆に年金を集めないことによって景気を刺激し、デフレを解消したお陰で、世界のGDPに占める日本の割合が半減せず、現状維持ができたとしよう。そうすれば、年金の取り分も半減しなかったのだから、半減した場合の2倍もらえるのである。年金の積立金が無いのにどうやって年金を払うのかと思うかも知れない。2倍のGDPなら2倍の給料をもらっているし、その中から同じ割合で負担しても2倍の年金を払うことができる。お金は必要なら経済がしっかりしている限り、国がいくらでも刷って使うこともできる。

 景気対策とは、実質的にはお金を刷って使うということだ。生産力に余裕があれば、お金を刷ってもインフレにはならない。経済が弱体化していて生産力に余裕が無ければ、お金を刷ればインフレになる。これは年金積立金を使う場合でも同じだ。年金を取りすぎて、経済が弱体化した場合は、積立金を使えばインフレになる。つまり、年金財政を国の経済と切り離しては考えられないのである。

 ただし、国際競争の中、生産力とは単に物をつくる能力ではないことは明らかだ。国際競争力のない物を作っても、売れないのだから、そのような物の生産力は生産力のうちに入らない。売れない商品を作る生産力は、事実上遊休設備である。農業製品の場合は大規模化で価格競争力をつけるか、品質を向上させて高くても売れる物をつくるかである。工業製品であれば、どれだけ国際競争力のある製品を開発できるかがすべてであり、開発のためにはお金を出し惜しむべきでない。実際、確実に競争力のある製品が開発できれば、工場を必要なだけつくるだけだから、その製品の生産力増強は極めて簡単である。例えば、癌の特効薬が開発されれば、売れることは間違いなく、銀行もいくらでも融資するだろうし、工場建設で生産力はいくらでも増やせる。逆に、効き目が弱く、副作用の多い薬の生産力を増強しても何にもならない。その意味で、経済の発展とは国際的競争力のある製品を多く生み出すことと大いに関係がある。そのために国が行うべきことは、企業に、国際競争力のある製品を生み出しやすい環境を提供することであり、そのためにも国民に十分なお金を渡し、企業がよい製品を出したら、それを買うことができるようにし、会社に利益がでる環境を作り出す必要がある。結論はデフレ脱却を最優先とすべきだということである。

 ところで、現在の年金制度の基礎となっているシミュレーションはマクロ経済スライドという考えだ。これは今後100年間の財政均衡期間にわたり均衡が取れるようにするという考えに基づいている。100年後の2100年に、年金給付額が1年分程度になるようにしてある。なんと、現在のデフレ経済を脱却することより、100年先の財政の方が重要だというわけだ。つまり、現在の経済政策の大失敗から国民の目をそらして、100年後に注目させようというわけだ。100年後よりも今の生活を何とかしてくれという国民の声が届いていないようだ。彼らのシミュレーションに従うと年金は100年先に備えて、次のように上げなければならないそうだ。

出所 厚生労働省
Photo

 そしてこのように値上げした結果、年金積立金は次のようになるとのこと。つまり2035年頃まで積立金を増やし続けるということだ。平成18年度で年金積立金は149兆円ある。厚生年金責任準備金、共済年金積立金も加えると220兆円を超える。年金の6年分も積み立ててしまったということだ。他の諸国が数ヶ月かせいぜい1年強の積み立て金しか持たないのに比べ、突出しており異常な事態だ。これから更に社会保険料を値上げしてどんどん積立金を増やしていこうという計画だ。社会保険料をどんどん取るだけで、年金支払いを渋る。つまりデフレで実態経済にお金が足りなくなっている中、お金を吸い上げようということだ。これでは日本経済の成長を止め、国を貧乏にしてしまう。社会保険料の取りすぎが、実態経済にお金不足を引き起こし、それがデフレの一因になったとも言える。デフレが世界のGDPにおける日本の割合を半分に下げてしまったことを考えるなら、これは極めて重大な事態である。

出所 厚生労働省
Photo_2

 グローバリゼーションを主張するなら、まず最初に積立金を普通の国レベルまで下げるべきだ。お金を国民に戻すべきだ。それだけで200兆円近いお金が国民に渡ることになる。何と国民一人当たり百数十万円ものお金だ。お金が国民に戻れば、デフレ脱却ができ日本経済はかつてのように力強く成長を始める。グローバリゼーションを言うなら、真っ先にデフレ脱却をしなければならなかったはずである。デフレは経済において最悪の事態であり、アメリカも絶対に日本のようにならないように、日本経済の現状を詳しく研究しているほどだ。日本経済は重い病気にかかったようなものだ。その病人から巨額のお金を出させて将来に備えるという考えは全く正しくない。日本経済を健康体に戻し、その後に年金制度を考えればよい。年金の給付金が増えるから消費税を上げようなどという主張は全く正当化されない。デフレ悪化を招き、没落する日本経済を更に没落させるだけだ。積立金を取り崩すだけで十分であり、異常に増えた年金積立金を国民に戻すよい機会になる。

 余り知られていないが、年金積立金の149兆円だが、毎年株式などに投資され運用益がでていて、その額は平成16年度が3.96兆円、17年度が9.83兆円、18年度が4.56兆円にもなっている。今話題のガソリン税が2.6兆円と比較しても大きな額だ。もしも景気対策を行い、景気がよくなれば、これよりずっと大きな運用益が得られる。逆に福田内閣のようにデフレを放置すると株価は急落し、運用益がマイナスになってしまう。天国と地獄の差があるのだ。

 どこの国も公的年金は相互扶助を基本としている。つまり現在の高齢者を現在の働き手が支えるという「賦課方式」をとっている。これなら、年金積立金は必要ない。集めたお金をそのまま高齢者に渡せばよいのだから。働き手が少なくなるという問題を深刻に考えるべきでない。生産性が向上し、極めて少ない人数で全国民を養えるようになったのだから何の心配もいらない。労働生産性の伸びは1981年~1990年の間は年平均3.7%であったが、1991年~2000年にはデフレ経済のため平均2.0%にまで落ちている。その一方で今後30年間で減少する労働力人口は年率で0.67%しかない。つまり、労働力が少なくなった分の数倍の速度で生産性が向上し、結果としては生活は豊かになる一方なのだ。適切な年金制度(賦課方式)で、負担者も受益者も今後豊かになる一方であるということをしっかり認識しておくべきである。しかもデフレ脱却ができ、経済が活性化すれば、更に豊かになる速度が増すである。

 むしろ、働けなくなった高齢者や重度の障害者などを「働かざる者食うべからず」ということで切り捨てたら、その中の一部が強盗殺人や放火など反社会的行動をとるだろう。そうすれば、社会不安が増し居心地の悪い社会になってしまう。貧者を蹴落とすより、お互いに助け合うほうが、快適な社会になるのは間違いない。     (小野盛司)

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コメント

JAXVNさん、こんばんは。

>ここまで的外れな事ばかりやっているという
>のは、やはり「わざとやっているのではない
>か?」という「疑惑」を感じずにはいられま
>せん。

 おっしゃるように年金財源安定化のための保険料引き上げは実質増税だと思います。
しかも、可処分所得がますます減って、市中のお金も減って、デフレ度合いが高まる
以外の意味はないですね。無効じゃなくて有害ですね。

 食糧自給の問題ですが、日本の耕地は江戸時代に比べて圧倒的に肥沃さが低下して
いるはずですね。なぜなら自然林を人工林に置き換えて潅水機能を失わせ、広葉樹林
特有の自然の栄養素が河川に流れなくなりました。同時にダムや防波堤で氾濫するこ
とがなくなり、河川が運ぶ自然の肥料が耕地に流入しなくなっているからです。自然
のサーキュレーションを戦後日本の政策が破壊したんですね。よく窒素系燐系肥料は
輸入物で日本の土地は過剰栄養になっていると言う人がいますが、科学抽出した肥料
は量的にあればあるほど自然のバランスを崩し、生産力がないと思います。
 やっぱり自然林から出るものの方が、地場作物に対して圧倒的なパワーを持つので
はないでしょうか。日本は化学肥料に頼って地力を失わせています。自然循環は一見
微々たる感じですが、総合的に見れば力があるような気がします。まあ、日本人が今
のようなゲスな大食い飽食サイクルを持続させるなら無理ですが。考えとしては、科学
肥料で大きな白菜を三個作るより、落葉腐葉土を利用した自然の土で身の詰まった小
ぶりで栄養たっぷりの白菜を一個食卓に乗せる方が身体にもいいし、満足度も高いの
ではないでしょうか。欲望消費のライフスタイルをあらためて身体に良いものを感謝して
食べる生活様式です。食料自給率を減殺してしまうような文明スタイルを持つ国が享受
する文明をはたして文明と呼べるのでしょうか。以前から疑問なんです。これを言うと、すぐ
に今の人口キャパシティで自然農耕だけで自給ができるわけがないと思考を止めてしまう
人がいますが、江戸時代の自然環境には戻らなくても、日本国土に最適の生活様態を
模索し、食料や自然物の海外依存度を極力減らす可能範囲をさぐることです。当然適正
人口も見つけるべきでしょうね。


 自然のサーキュレーションでわかりやすいのはサケの河川溯上です。産卵しに来た
サケは熊などが森に運び、森の栄養となる。一方死んだ魚も河川の栄養になる。上流
の自然林に降る雨は栄養を河川に流す。戦後、日本民族がやったことで最も愚かなこ
とは人工林への置換でしょうね。これが災害を増幅させ、作物と沿岸の魚介類の自給
能力を著しく低下させました。あと一つは河川を完全に封じるタイプの巨大ダムの
濫造でしょうか。水利や発電をやるにしても、生態的な自然流を可能な限り損なわな
い工夫をすべきでした。戦後の国土企画は国土崩壊計画です。戦後は江戸の思想家・
熊澤蕃山のような国土思想が存在しない国土改変に奔走してしまいましたね。世界で
最も恵まれていた自然を日本人自らが破壊してしまった。

 戦後の復興があったので無理もない局面は存在しましたが、もっと早く豊葦原瑞穂
国の真のキャパシティに気付くべきだったのです。大東亜戦争後の日本は、国破れ
て山河荒廃なりだったのです。

 私は真の自然復興を城内実さんに期待しています。日本には国家二百年の国土思想
を描ける宰相が必要だからです。城内さんはそのグランドデザインを描けるお人だと
信じています。おお、長文になってしまいました。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2008年2月14日 (木) 00時13分

こんにちは。
加入が義務付けられている国民年金の保険料は実質的には税金と同じですから、「年金財源安定化のために保険料を引き上げる」というのは、結局「財政健全化のために増税する」というのと同じですね。増税と緊縮財政で財政が健全化した例が国、地方自治体共に無いのと同様、年金についても今の政府の政策は全く的外れな物、という事になりますね。ここまで的外れな事ばかりやっているというのは、やはり「わざとやっているのではないか?」という「疑惑」を感じずにはいられません。
ところで農業についてですが、「採算の取れる大規模農業経営」というのはその分リスクも大きい、という面もあります。昨年来の米価下落で最も大きなダメージを受けたの「採算の取れる大規模農業」を行っていた農家で、比較的ダメージが少なかったのは「国にとってはどうでもいい」はずの小規模二種兼業農家だった、という皮肉な事例もありました。「農業賞」を取るような革新的な経営を行っていた農家や団体が破綻する例も決してて珍しくないという話もあります。今朝のNHKラジオで餃子事件の関連として日本の食糧自給率についての話が出ていましたが、コメンテーターの教授(名前は失念してしまいました)が、「コストを考えると日本の食料自給率の改善は難しい」と言っていました。「完全な自由競争」では結局いくら大規模化しても限界があります。その土地に根ざす一次産業については、「完全な自由競争」は無理がある、とはっきり言うべきなのかもしれないとも思います。実際EU諸国等は農産物については輸入規制をしていますし。

投稿: JAXVN | 2008年2月13日 (水) 14時28分

HIROさん、お早うございます。TB通りませんのでコメントです。下記アップしました。

「東南アジア 海兵隊 児童買春」で検索するとブログ検索エンジン10個の内8個では全然検索結果が出てこない、この情報統制?
http://yuhodo.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_71b6.html

時事川柳とか、政治小話とか短文が腐敗政権を脅かすことだってある。今twitterが面白い。長短、硬軟織り交ぜてやりたいね自End。
http://yuhodo.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/twitterend_54eb.html

140文字のメッセージで、「トゥイッター(twitter )」は災害時のちょっとしたプライベート連絡システムにも使えそうです。
http://yuhodo.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/twitter_eea2.html

「岩国市の皆さん、井原さん、お疲れ様でした~350円1000万人寄付運動の今後について」がアップされてます。
http://yuhodo.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/3501000_3002.html

2005・9・11郵政選挙(ワンフレーズの騙し)⇒岩国(札束で頬引っ叩きの脅し)、騙しから脅し次はマスコミ使って再度騙しの筋書き。
http://yuhodo.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/2005911_7c5b.html


投稿: SOBA | 2008年2月13日 (水) 07時06分

○…孫様

 コメントありがとうございます。

>しかし、農業製品の大規模化、品質が高い農産
>物…これは具体的な方策まで落とし込んでみて
>考えると、非常に危険なことに繋がると思いま
>す。

 言われて見ますとそうですね。大規模化と集約
化。大規模化と高品質化は両立しない可能性が高
いかもしれませんね。この話はオルガニック作物
と高収穫化の二律背反と似ているかもしれませ
ん。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2008年2月11日 (月) 23時20分

独立党のリンクより訪問しました。
いつも感銘を受けて読ませていただいております。

一方、農政に関して思うのですが…

>農業製品の場合は大規模化で価格競争力をつけるか、品質を向上させて高くても売れる物をつくるかである。

経済原則としては、これは正しいと思います。

しかし、農業製品の大規模化、品質が高い農産物…これは具体的な方策まで落とし込んでみて考えると、非常に危険なことに繋がると思います。
(詳細割愛すみませんが…)

二律背反の問題ですが…気になった点です。

投稿: ○…孫 | 2008年2月11日 (月) 20時34分

ふじふじ様

 はじめまして。コメントありがとうございまし
た。

>私にとっては、大変タイムリーなエントリ
>をありがとうございました。

 そう思っていただけて嬉しいです。小野先生に
も伝えておきます。原油価格の高騰で物価が上が
っても給料は上がるどころか相対的に下がるよう
な気配です。悪魔のスタグフレーションが起こら
なければいいのですが。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2008年2月11日 (月) 16時50分

初めまして。

なるほどなお話しでした。

日本は今お金が回っていない状態です。
と言うのも、政府が定率減税を廃止したり、社会保障費を削減したりや、また、今、原油価格の値上がりで物価が上がっていて、国民に使えるお金が少なくなったからですが。

こんな状態でも年金を溜め込んで、国民に渡すのをケチるようでは、デフレを脱却できないですね。

私にとっては、大変タイムリーなエントリをありがとうございました。

投稿: ふじふじ | 2008年2月11日 (月) 16時15分

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