貿易赤字になると輸入ができなくなるのか(小野盛司)
(※日本経済復活の会 会長 小野盛司氏の記事、第三十六弾です)
http://tek.jp/p/
貿易赤字になると輸入ができなくなるのかという質問が読者から寄せられましたので、お答えします。そんなことはありません。財務省によると2007年の貿易収支は12兆3,781億円の黒字に対し、所得収支が16兆2,730億円の黒字となっています。所得収支とは日本が持つ海外の株や債券、つまり証券資産などが生む配当や利息を示しています。所得収支の黒字のほうが、貿易収支を上回る規模になっています。つまり黒字は貿易だけではないということです。
それだけではありません。赤字でも貿易はできます。アメリカなど、長年貿易赤字です。本当はアラスカにも油田があるのに、それは温存しておいて、その代わりにドルを刷って外国から石油を買いまくります。国益をどん欲にまでに守ります。日本の円は基軸通貨ではないので、アメリカほど派手にはやれないにせよ、円は国際通貨ですから、刷って使おうとすれば使えます。
将来、日本の企業が国際競争力を失い、貿易赤字になったとし、更に所得収支も赤字になったとしましょう。そうすると円の価値が低くなるわけですが、価値がゼロになるわけではありませんから、貿易はできます。輸入物価は高くなりますから、買いにくくなるかもしれませんが、お金を多く出せば買えます。かつての共産圏は貧乏でした。国産品はろくなものはなく、物不足で日用品ですら手に入りにくくなっていた時代がありました。自国の通貨をドルなどの外貨に替えてもらえず、闇で観光客から替えてもらって、ドルショップに行って欲しいものを買っていましたね。あれは国境が封鎖されていたので、そうでもするしかなかったのでしょう。まさか、日本が将来そんなことにはならないと思います。
今の日本は、政府が国民に十分なお金を渡していないので、国民は十分物を買えません。つまり、国産品も輸入品も十分買えないわけです。しかし、外国の人は十分なお金を渡してもらっているので、自国のものも、日本からの輸入品も十分買えます。ということで、外国人は日本の物を多く買い、日本人は外国の物を十分買えないので貿易黒字になります。こうして日本人はどんどん貧乏になっているわけで、十分輸入品が買えないから貿易黒字になっているのであり、黒字だから輸入ができるというわけではありません。所得収支でも同じでしょう。日本は発展しない国だから、投資の魅力はない。だからお金は外国に逃げていき、外国で収益を挙げるので黒字になる。
このような黒字は、結局ドルのまま海外の銀行に預けられ、海外で運用されますから、外国を豊かにするだけで、いつまで経っても日本は豊かになりません。お分かりでしょうか。黒字ということは、日本人が汗水流して働き、生産した代償がドルという紙切れに替わり、その紙切れがどんどん溜まるだけ、しかもその紙切れはアメリカの銀行に預けていてアメリカで運用されるだけ。日本を豊かにしません。決して良くないのです。黒字は善、赤字は悪と考えるのは全く間違いです。アメリカは長い間貿易収支も経常収支も赤字が続いています。膨大な借金が貯まっていると言えますが、逆にドルを刷って、そのドルが世界に流通して、世界経済を育ててきたともいえます。経済を知らない人は借金をいつか返さねばならないと考えるでしょうか。世界中からドルを引き上げたら、世界経済がマヒするのは明らかであり、これは返すべきではない借金です。アメリカが赤字なら、アメリカ以外の国を合わせれば、黒字で、プラスマイナスがゼロです。
日本の財政問題も同様でしょう。国が赤字なら、国民の側は黒字で、プラスマイナスゼロです。デフレということは、国民の側にお金が不足して経済が成長しなくなっているのですから、こういうときは赤字を拡大せよと、世界を代表するエコノミストは異口同音に主張しているのです。それが日本経済を拡大し、財政健全化にも役立つということです。何度も繰り返しますが、日本を豊かにするには、アメリカでもフランスでもやっているように、お金を刷って景気対策として国民に渡すことです。そうすれば、デフレ脱却ができ、国民が金持ちになり、国民はもっと物を買えるようになります。日本企業は、その需要増に十分対応できますから、経済は活性化し、企業も国際競争力を増し、しかも、国民は国産品だけでなく、輸入品ももっと買うようになります。輸入が増えると貿易黒字が減ってきます。
これは私も日経の経済モデルでも確かめました。外貨が溜まりすぎた現在、輸入が増えて貿易赤字になっても構わないのです。日本経済がかつてのように成長を始めると、日本が魅力的な市場になりますから、外国資本も入ってきます。もちろん、日本人にもお金が渡されるようになれば、海外への積極的な投資も活発になるでしょう。貿易収支や所得収支だけでなく資本収支も重要です。お金も日本国内で多く運用されるようになれば、企業も育ってきます。大規模な投資がされるようになり、地方経済も地方政府も潤ってきます。積極財政は、日本経済も、そして世界経済の均衡ある発展も助けます。(小野盛司)
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コメント
そもそも、黒字・赤字という概念がおかしいということみたいですね。
目から鱗でした。
勉強になります。
投稿: 新三 | 2008年4月 3日 (木) 23時21分
要はミクロの各企業体で使う「黒字」をそのまま国家運営や国際貿易のようなマクロに援用しているから意味がわからなくなるということでしょうか。
日本経済をトータルで考えて、合成の誤謬ではありませんが、各経済主体の事情をなるたけ排すのが肝要ということでしょうか。
このエントリーを読んで、国際収支を客観的に評価できていなかったんだなあと考えを新たにしました。
国際経済のときに用語を代へて欲しいなと思いました。黒字赤字には経営のイメージが強いと思うので入超出超とかで通じ合えればいいなあと思います。
投稿: minase | 2008年3月 4日 (火) 01時52分
日本の貿易黒字は良い事ではなく、お金が無く外国商品を買えないから売った分だけの所得が増える、これは決して健全な事ではなくお金を充分与えれば輸入が増えて貿易黒字は減る。
目からウロコとはこの事で、多くの人々は貿易黒字が無くなれば輸入できなくなり日本人は生活できなくなる、と考えていますから、驚きです。
いつもながら明確な解説恐れ入ります。
所得収支も同じで、本来なら国内に投資すべき額に汗した資金が海外に流出して得たものであり外国の役にはなっているが自国のためにはなっていない。
政府系ファンドなどが取りざたされていますが、個人レベルでどのような経済活動をしようと自己責任の範疇であれば非難されるべき事ではありませんが、国が税金を使ってバクチを行なう事など許されるはずもありません、
そのような余剰資金があるなら国家百年の計を以て超大型公共投資を計画するか、
さもなくば単純に減税すべきだと思います。
投稿: 安二郎 | 2008年3月 2日 (日) 16時24分