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2008年4月 2日 (水)

内閣府の経済モデルは過去の日本経済を説明できるのか(小野盛司)

(※日本経済復活の会 会長 小野盛司氏の記事、第53弾です。尚、この記事は前掲記事コメントの渡久地明氏の質問に答えたものです。)

 内閣府のモデルは過去にさかのぼって現実経済を説明できるかどうかという検証はやっているのかという質問が読者から寄せられたので、それについて書いてみます。

 内閣府では1985年~2000年までのトレンドに合わせる形で均衡値を求め、それに合うようなモデルを作ったとのこと。つまり7割までがデフレ期間のトレンドを使っていて、これから永遠にデフレが続くのならどうなるかという予測ならできるのかもしれません。景気刺激をしても経済は伸びないように、細工がしてあります。彼らははっきりと新古典派だと言っています。これはフル操業、完全雇用の経済学です。

 彼らの考えている日本経済の現状は「超好景気」で、どこの会社も応じきれないほどの注文が来ている。だから、皆さんが家を建てようと思っても、それを受けてくれる会社はどこもない。もしも、政府が公共投資を減らせば、建築会社は人をマイホーム建設に回せるだけの余裕がでてくる。だから、住宅投資が伸びてくる。結局公共投資が減った分、他が増えるからGDPは減らない。つまり予算をいくら削減しても「超好景気」の状態は続いていくというもの。

 こんな馬鹿な経済モデルを使って国の経済政策を決定している国は日本だけであり、日本は世界の笑いものです。例えば日経新聞社のNEEDS日本経済モデルだと、過去の経済データをどれだけ正確に再現できるかをテストして公表しています。きれいに再現できていますし、そうでなければ、誰も日経にシミュレーションを頼まないでしょう。内閣府は過去の経済データを再現できるかどうかを公表していません。それをやればどれだけひどいかを暴露してしまいますから、絶対にやりません。

 マクロ計量モデルの専門家は皆さんよく知っておられます。内閣府のモデルがインチキだということを。でも、多くの方々は、財務省から委託を受けてシミュレーションをやっていますから、内閣府のモデルをあからさまに批判できない立場にあります。しかし、彼らのインチキモデルでも公共投資を増やせば、GDPは増えるし、デフレは脱却できるし、失業者は減るし、少なくとも最初の2~3年間は国の借金のGDP比が減って財政が健全化するのです。これだけでも、十分積極財政を支持する理由になります。3~4年以降、国の借金のGDP比が増えるかもしれないということが、唯一の懸念材料ですが、彼らのシミュレーションの説明書きの最初に次のような事がはっきり書いてあります。

 試算は誤差を伴っており、相当な幅をもってみるべきである。また、先の期間になるほど、不確実な要素が多くなることに留意が必要である。

 つまり、最初に2~3年は信頼できるが、それ以降は信頼に値しないということです。それはそうでしょう。2~3日までの天気予報は当たることが多いが、それ以降は当たらない確率がずっと増えるでしょう。それと同じです。彼らは新古典派の「完全操業・完全雇用」という考えを日本にあてはめて、無茶苦茶な論理で3~4年後に財政が厳しくなるという間違った結論を強引に引き出しています。しかし、内閣府のホームページにもそれが間違いだという論文が少なくとも2つ掲載されています。

 内閣府のモデルがおかしいと何回も質問主意書で質問しました。首相の答弁は毎回、「試算には相当の誤差を伴っているから」と言うだけで議論は一切拒否します。

 経済モデルの質を評価するのに、決定係数(R2C)を比べるという方法があります。これはどれだけ関数が過去のデータを忠実に再現できるかを示しています。例えば、内閣府(2005)で発表されたシミュレーションを例に説明してみましょう。これはその後の内閣府のものと構造は余り変わっていません。例えば住宅投資の方程式を見るとR2Cの値は僅か0.068014である。R2Cの値は1に近ければ近いほど信頼度が増すのであり、このようなシミュレーションで使うには0.8以上であるべきであるとされている。0.06という途方もなく信頼度の低い方程式を使ったシミュレーションを発表することは、内閣府の信用を著しく落とす。ちなみに経済企画庁(1995)では住宅投資の方程式のR2Cは0.926となっている。住宅投資以外の方程式も実にお粗末だ。各方程式のR2Cの値の分布図を図1で示した。0.1以下という無茶苦茶な方程式が3つもあり、それがしかも住宅投資や消費関数など極めて重要な方程式であるというのだから、このシミュレーションは重大な欠陥を持っている。

図1
21

 比較のために図2で経済企画庁(1995)のシミュレーションで使われた方程式のR2Cの分布を図2で示す。大部分の方程式のR2Cは0.9以上であり、最低でも0.5以上だから、その差は歴然である。内閣府(2005b)のシミュレーションがこれだけお粗末な結果であったということは、その職員の怠慢さを示しているというわけではなく、根本の仮説が間違えていたということである。つまり、内閣府(2005)のシミュレーションが失敗した原因は『1%需要が伸びると、生産部門の多くで供給が追いつかなくなる。』という仮説が間違えていたということにある。これは潜在GDPを低く見積もりすぎたということである。1%注文が多く入るようになったとき、生産が追いつかないという会社がどれだけ現在の日本にあるだろうか。極めて少ないだろう。このシミュレーションで使われた方程式のR2Cの値が極めて低かったことは、内閣府の経済モデルで使われた低い潜在GDPの仮説が正しくないということを意味している。日本の経済状況を説明できるモデルではないということが確認されたわけである。(小野盛司)

図2
1995

( 内閣府(2005) 日本経済中長期展望モデル(日本21世紀ビジョン版)資料集 平成17年4月内閣府計量分析室 経済企画庁(1995) 第5次版EPA世界経済モデル-基本構造と乗数分析-)

“お知らせです” 

 4月21日の出版記念パーティ

 4月21日(月曜日)、東京にて日本経済復活の会・小野盛司会長さんと評論家の中村慶一郎氏の共著『お金がないなら刷りなさい ―米国が16兆円を刷って国民に配っているときに日本は増税かーの出版記念パーティがあります。弊ブログで小野会長の積極財政論シリーズをご愛読して頂いている読者さんも参加してくださればうれしい限りです。出版記念会詳細は上記リンクにてどうぞ。(神州の泉・管理人)

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コメント

 政府のモデルの説明を読んでも精密なことはよく分かりませんが、精密なこと以外での疑問は次の通り。

 経済財政モデル(第二次再改訂版)資料集8ページ下の説明に

 「実質政府消費は、通常のマクロモデルでは外生変数として乗数を求めているが、本モデルの政府消費は、財政及び社会保障ブロックから内生的に決定される構造となっているため、外生化していない。したがって、一般的な乗数に比べ、振幅が大きくなる傾向がある。」
 
 とありますが、通常のマクロモデルを使わないのはなぜだろうか。通常じゃないモデルをわざわざ使う理由は何でしょう。
 
 また、政府消費をどのように景気回復のために動かすかが政治だと思いますが、それについては財政及び社会保障ブロックから内生的に決定されるというのもおかしいような気がします。
 
 財政になにかの制約があってあまり増えない、社会保障費は高齢化などでどんどん増えるという条件なら、政府消費は減るということでしょうか。
 
 それと、乗数計算を実質公的固定資本形成を減少させる、消費税を増税するなど8ケースで計算していますが、一つを除いて景気が減速する条件ばかりでは。
 
 除いた一つは、全要素生産性の継続的な上昇ですが、構造改革派のいう生産性の向上で景気回復ですか。
 
 生産性が向上したら需要が増えるという計算をしているようですね。

投稿: 渡久地明 | 2008年4月 3日 (木) 19時42分

高橋様、小野先生

ご回答ありがとうございます。

なぜ内閣府は1985年以降しか説明できないモデルをつくるのか理解できません。経済学の境界条件の変更がなにかあったんでしょうか。ないでしょう。

経済データがある戦前から現在までの全期間を説明できることこそが、最も正しい経済理論に基づくベストなモデルになるはずです。

内閣府資料の説明書を読んでヘンだなあと思われるところがありましたが、もう酔っ払っていますので、それについて明日また疑問を提起します。本日はありがとうございました。

投稿: 渡久地明 | 2008年4月 3日 (木) 00時21分

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