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2008年4月24日 (木)

無益な経済論争をいつまで続けるのか(小野盛司)

(※日本経済復活の会 会長 小野盛司氏の記事、第63弾です。)

 Voice5月号に『大論争! どうなる日本経済』という特集が載っている。日本経済の大停滞は、無益な論争がいつまでも続いていることにある。これは水掛け論争の繰り返しである。

 武者陵司は、これから株が上がると言い、榊原英資は下がると言う。三國陽夫は円高で景気が拡大すると主張、藤巻健史は円安で消費が増大するのだと言う。中川秀直は法人税は全国民の利益だと主張(これだけは賛成できる)、与謝野馨は消費税10%が救国の策だと主張、その他様々な見解、提案が掲載されている。ここで若干コメントを書いてみる。

 榊原英資は日経平均は1万円を切ると主張する。彼の主張が正しいか正しくないかはコメントを避けたいが、2002年7月の中央公論に載った彼の主張を思い出していただきたい。彼は「日本が構造的デフレを乗り切るために政府貨幣の発行で過剰債務を一掃せよ」と主張した。つまり、お金を刷りなさいと言ったのだ。どうしてそのような主張になったかと言えば、来日したスティグリッツ(2001年にノーベル経済学賞を受賞)と話をしたとき、その話題が出たからだそうだ。その後も一貫して同様な主張をするならともかく、それ以後はそういった話は出てこなくなった。その時の思いつきで発言し、主張が一貫性を欠く人間でも、マスコミはいつまでも登場させる。

 ちなみに、私が「お金を刷りなさい」という論文を最初に書いたのは1995年であり、それ以来、一度も主張を変えたことはない。日本にとって最善の政策はお金を刷ることだからである。榊原さん、当たるか当たらないか分かりませんが、株が下がるという「予言」をしてもしょうがないのではないでしょうか。どうやれば、経済を良くし、日本株を上げるかという話をしなくてよいのでしょうか。

 三國陽夫は円高で経済成長率が上昇すると主張するが、マクロ経済モデルでシミュレーションをすると逆だ。円を高くすると、日本製品を一斉に値上げしたことに相当する。そうなれば、日本製品が売れなくなり、経済成長率は下がる。過去に何度もこのことは経験している。円をうんと高くして、恐慌を招いたのが昭和恐慌だった。1985年のプラザ合意の後、急激な円高となり、円高不況に陥った。円高は輸出企業にとって不利益をもたらす。円高のメリットもあるかもしれないが、メリットとデメリットを総合的に評価し、正確なシミュレーションをすると、円高は経済成長率を落とすことが分かる。

 「消費増大には円安しかない」という藤巻健史の主張だが、円安にすると果たして消費は拡大するのか。円安は輸出産業に有利であるという面で消費増大にはプラスだが、輸入物価は上がるので、その面ではマイナスだ。日経のNEEDS日本経済モデルで計算してみた。例えば強烈な円売りドル買いの介入をやって50円だけ円安に(つまり1ドル100円が150円となる)して、これを5年間保ったとする。そうすると実質民間消費支出は1%増えるという結果となった。僅か1%である。この間、大量の国債(毎年100兆円でも足りない)を発行し莫大な介入資金が使われなければならない。この資金を財政出動(減税と歳出拡大)に使っていたら、消費拡大幅はずっと大きくなる。例えば50兆円の財政出動を5年間続けた場合、実質民間消費支出は11%増加するという結果が出た。円安介入よりはるかに効果が大きいことがわかる。円安介入は苦境のアメリカ経済を更に痛めつけるが、財政出動はアメリカ経済だけでなく、世界経済を浮揚させる、つまり世界中から感謝されるのだ。

 森永卓郎はデフレが深刻化していると主張しているが、これには同意する。輸入物価が上がっているのに、全体のGDPデフレーターはマイナスということは、実は国内の景気は、輸入物価の下落を打ち消して更にマイナスということであり、景気が更に悪化しているということだ。しかしながら、彼の提案はいまいちだ。金持ちから税金をたっぷり取って、貧乏人に金を与えよという。しかし、今の日本は世界の中で見れば、金持ちも没落しているのだ。1989年には世界の長者番付で10位以内に日本人は6名もいたが、2007年には100位以内に誰もいなくなった。日本人の金持ちの没落は、貧乏人の没落以上なのだ。金持ちいじめをしたかつての共産圏はどうだったか。いくら働いてもどうせ金持ちにはなれぬと思って誰もまじめに働かなかった。だからみんな貧乏になってしまった。頑張れば、金持ちになれる、アメリカンドリームのごとくジャパニーズドリームがあれば、頑張る人間が次々登場し、経済が活性化し、国全体が栄えるのだ。デフレのときは、金持ちからお金を巻き上げて貧乏人に渡すのでなく、お金を刷って、国民全体にお金を渡すほうが良いのだ。

 フェルドマンは、賃金を上げたければ、労働者の生産性を高めるしかないと主張する。それは違う。例えば、日本全体の労働者の生産性が2倍になったとしよう。需要が伸びない状況で生産性が2倍になったら、経営者は、労働者の数を半分にしてしまうだろう。そうすれば賃金は半分で済み、利益が増える。労働者は半分になり、消費者は激減するわけだから、需要も激減する。つまりデフレスパイラルになる。賃金が上がるどころか、どんどん下がる。結局、お金を刷って、通貨の量を経済活動に十分なレベルにしなければならないということだ。マクロ経済というものはそういうものだ。

 何も、財務省造幣局の印刷機を増やして、お金を印刷するという意味ではない。地価の値上がりを容認するのであれば、それが担保価値を増大させ、銀行貸出が増える形でお金が増えるのでも良い。あるいは、会社で社債が活発に発行されるようになって、それで実質お金が増えていくのでもよい。株が上がり、時価総額が増えれば、事実上お金が増えたことになる。一度火が付くと、様々な形で、お金は増えていく。そのきっかけを作るのはやはり政府・日銀の役目だ。

 結論を言えば、やはりマクロ計量経済学できちんとシミュレーションをやれば、何が正しいか正しくないかが、すぐ分かる。馬鹿な評論家の馬鹿な論評ばかり掲載するのを止め、しっかりした理論に基づく議論をマスコミはもっと掲載すべきである。


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受信: 2008年4月27日 (日) 14時17分

コメント

日本が駄目になったのは日本が稼いだ金が国民に還元されなくなったからじゃないでしょうか?
企業利益の総計と株主配当金と役員給与だけは過去最高を更新し続けてますが一向にマクロ経済は良くなりません。
外人株主が急激に増えたせいでしょうか今年度の配当金見込みは8兆円を超えるそうです。
企業利益や配当金、そして外貨準備高の増え方を見る限り今の日本の状況はあり得ないんじゃあないでしょうかね?
労働分配率を見ると2000年前後から急激に下がり続けついに50%台に突入しました。
他の先進国は全て70%台です。
私には労働規制の緩和や税制の変更等で富の分配方法を間違えたからとしか思えませんが・・・
輸出型大企業の場合、95年以降で見ると7%以上の高成長を続けています。
プラザ合意以来、消費税を引き上げて法人税や株式の取引に掛かる税金や所得税の最高税率や相続税を引き下げる為の穴埋めに使われて来ましたが、これが実は間違ってたような気がします。
今日まで消費税による税収増は約160兆円あるそうですが、上記の減税分もほぼ同額になるそうです。
同時にそれらの減税分は今日の緊縮財政にも繋がって来ていますから。
これが国内需要、特に個人消費の低迷、引いてはデフレ不況、内需産業の不振、税収の低迷に繋がってる気がしてなりません。
この辺は私の見解と小野氏が決定的に違う所ですね。
私は税制や株式の持ち合いや談合・系列、土地による信用創造のやり方を含めて84年以前の日本型資本主義に戻すのが日本経済復活のカギなんじゃないかとひそかに思っております。
社会主義的だ、閉鎖的だと言われ欧米から散々非難されたシステムですね。
私は強過ぎたから叩かれたんだと勝手に思っています。
もちろん当時と違って為替は自由制に移行しましたが・・・
もっとも財務官僚も政治家も景気過熱による金利高騰を怖がってわざとデフレ不況を維持するような愚策を取ってるのかも知れませんが。
だったらなぜもっと早く法改正でもしてバーナンキやスティグリッツの言うように国債買いオペをしないのか?
幸いにして日本は未だ世界でも唯一のデフレ国です。
他国のようにハイパーインフレの心配は極めて少ないでしょう。
まあもし仮にハイパーインフレになっても私の預貯金なんて知れたもんですから痛くもかゆくもありませんがw
いずれにしろデフレ不況が続けば遅かれ早かれ財政は持ちません。
それこそ財政を極限まで切り詰めても庶民増税を馬鹿みたいにしない限り黒字化はあり得ません。
下らない見栄で破綻を先延ばしにしてるのならとっととデフォルト宣言でも買いオペでも
何でもしたらいいと思いますがね。
アジア通貨危機やロシアの通貨危機の後、彼らは高成長してるじゃないですか。
今すぐに黒字化出来たとして赤字国債の水準が危険水域以下に下がるまで100年近くもデフレ維持するなんてとてもじゃないが無理ですね。

投稿: ななし | 2008年4月26日 (土) 02時39分

(2)「蟻地獄」、さ迷えるニッポン経済

 『復活の会』の小野会長の『無益な経済論争をいつまで・・・』に関連して、本題に入る前に一言。

榊原英資氏について、
>その時の思いつきで発言し、主張が一貫性を欠く人間でも、マスコミはいつまでも登場させる。

会長のおっしゃる通り、榊原英資氏は昔から時流にのった場当たり的発言が目立つ人だった。
彼は、小野会長の本『政府貨幣発行で日本経済が蘇る』(2002・11発行)の「帯」に推薦状を書いている。「政府貨幣発行」について、彼は今はどう思っているのだろうか。

 一貫性のないエコノミストや評論家も多いけれど、政治家もそうです。

 中川秀直氏について、
 今回(4月21日)行われた小野会長の出版記念パーティー『お金がないなら刷りなさ・・・』は 中川秀直前幹事長が出席されたそうですね。
 ちょっと違和感を覚えたのは私だけだろうか。

 「ええー?なんで中川秀直なの?」

 彼は、小泉政権時の幹事長、「郵政民営化」選挙では、小泉首相の懐刀となって「刺客」送り込みに辣腕をふるった人物とちがいますか。

先日の参院予算委員会で「宍戸vs大田大臣の公開討論会」のお膳立て発言をした自見庄三郎氏も、「郵政民営化」に反対して自民党を追われ、「刺客」を送られて「郵政民営化」選挙で破れた(前回の参院選で復活)。

 中川氏は自民党内では、反増税派中川・竹中連合を組んで景気回復派らしい・・・彼は積極財政派に転向したのだろうか。転向の弁はなかったのだろうか。それとも、今回は自ら「刺客」となって「日本経済復活の会」の動きを探っているのだろうか。
 まあ、政治の世界は魑魅魍魎の世界というから、めくじらたてることもないか。

 本題に入ります。

  国は無為無策、無脳?景気対策は、にっちもさっちもいかない 「蟻地獄」に追い込まれているのです。
 「蟻地獄」に、追い込んだ奴がいるのですが、今回はそれには触れない。

  景気がよくなれば、金利を上げざるを得ない(これ経済の原理原則)。金利を上げれば、国の借金は雪だるま式に膨張します。仮に景気対策により国家の歳入(税収)が増えて、基礎的財政収支を黒字化したとしても、国の債務残高はそれ以上に増えて借金は膨張し続けます。

 具体的に例示しましょう。
 話をわかりやすくするために、、おおまかですが国と地方の借金の合計を1000兆円とします。仮に、5%の経済成長で、歳入は10兆円黒字化(現状では10兆円もの黒字化はあり得ませんが)、金利は3%とします。その10兆円分を丸々国の借金の返済に充てたとします。しかし、10兆円分では1000兆円の金利3%分30兆円にも満たないのです。

 莫大な借金を放置したまま、景気対策をするんですか。巨大な借金を抱えたままでは、景気対策も採るにとれない、「借金蟻地獄、手詰まり状態」汚い言い方ですが、雪隠詰(せっちんづめ)状態にあるのです。だから世界に類のない0~0.5%の異様な超低金利政策を続けているのです:超低金利は、銀行を救済し、米国への資金の流出を促した(米国への献金のため?)。

 繰り返しますが、「蟻地獄」から脱出するには、いったん「ご破算でネガイマシテハ・・・」が必要、多重債務者が出直すためには、いったん「自己破産」手続きが必要であるように・・・。

 結局は、愚かな政治家や官僚が考えることは「経済は現状の低空飛行」のまま、庶民いじめの消費税をアップするために国民を誘導している、後は野となれ山となれという無責任国家です。

 国は何をとち狂ったのか高齢者いじめまで始めようとしている。もの言わぬ後期高齢者だと思っていたら、そうでもなかった。やむなく後期高齢者医療制度を長寿医療制度と名称を変えた・・・2年毎に見直すという、2年毎に負担増間違いなし、そのうち「姥捨て山医療制度」に化けるのは目に見えている。
 郵政民営化だって、サービスは絶対低下させないと言っていたはず、民営化が始まって半年、サービスの低下は明らかです(それについては今回は触れない)。消費税は当初3%でスタートした、これ以上アップくしない筈だったが、5%にした。そして今は10%論が浮上している。

 余談ですが、
 郵政民営化男、小泉元首相がうごめいているらしい。
 小泉ー竹中の「改革」路線に踊った小泉チルドレンたち、君たちは議員になって何をしたのかよ?国民の税金でただ飯食って優雅な生活かよ?それじゃ、「食堂で飯の食い逃げ野郎」と変わりない、さもなければ、国会に巣食う寄生虫と同じじゃないか。「改革の流れを止めるな!」ってか?そんなに「改革」ごっこがしたいなら、「隗より始めよ」というではないか。自らが所属する国会議員のリストラでもやってくれ。いまの議員数は半分か三分の一で充分だろ?

 話を元に戻します。

 巨大な借金のために、金利さえも支払えなくなったら、個人なら自己破産、企業なら倒産です。だったら、日本は国家破産じゃないの?
 そーなんです、でも国家破産は起きていませんし、又その心配もありません。何故か?

 誤解しないで欲しい。国家破産というのは『対外支払いが不能(デフォルト)』に陥った時に起きるのです。

 日本国の借金は、例えば日本の国債は96パーセントまでは、日本国内で保有されている。つまり国家の借金は日本国民から借金をしているのです。いわば資産を共有する家庭内で、とうちゃん(政府)がかあちゃん(国民)にカネを借りている状態、もしこれが住宅ローンで金利部分さえも返済不能に陥ったら自己破産になります。

 財務省公表資料によれば、平成18年末 対外資産残高:558兆1,060億円、対外負債残高:343兆240億円、差し引き約215兆円の資産超過です。
 日本は対外的には借金どころか多額の債権大国です。繰り返しますが、国家破産というのは、対外支払いが不能(デフォルト)に陥った時に起きるのです。今のところ、先進国中日本は国家破産するには最も遠い国です。

  蛇足ですが、
 数年まえまで、本屋の店頭には、国家破産、国家倒産関連の本がたくさん並んでいました。なかには、「2003年日本国破産」とか「国家破産以後の世界」と言う本まで売られていた。
 今年は2008年です、2003年はとっくに過ぎています、彼らの言葉に従えば、もう既に「国家破産以後の世界」に入っているはずです。彼らは「国家破産」をネタにして飯を食っているのかも・・・。私は数年前から、自分のHPや「掲示板・阿修羅」で日本の場合国家破産なんてありえないことを述べてきました。そのことが、浸透したのか最近は「国家破産」に関する本はみかけなくなりました。

 最後にもう一言、
 私の考えは百ぱーセントではありませんが、基本的には小野会長の考え方と同じだと言っても差し支えない。「経済コラムマガジン」や丹羽春喜先生らの主張を取り入れたものです。

次回は、世界のなかで日本がどういう経済状況におかれているかについて言及します。
日本経済は世界各国からの「おちこぼれ」です。

投稿: いかりや爆 | 2008年4月25日 (金) 11時23分

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