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2008年4月10日 (木)

内閣府の試算と日本経済復活の条件(小野盛司)

(※日本経済復活の会 会長 小野盛司氏の記事、第56弾です。)

 やっと日銀総裁が決まった。日銀総裁選挙が政争の具にされてしまうような現在の制度自体、大きな問題だが、白川総裁で本当によかったのか。就任したばかりで、断言はできないにせよ、これは日本経済にとって最悪の選択だったのかもしれない。日銀の金融政策決定会合では、景気判断を下方修正し、「景気は当面減速が続く」との認識を示した。白川総裁も「当面減速が続く」という認識を示した。これは恐るべき事態である。現在日本経済は14年前から続くデフレの真っ最中にある。一人当たりの名目GDPは世界2位から18位に転落、世界の株式の時価総額に占める日本のシェアは5分の1以下に低下、経済苦が原因で自殺に追い込まれる人の数は数倍に増え、不況のために年間数千人もの人を死に追いやっているのが実情だ。

 経済が大停滞している日本で、これから、更に景気が悪くなるということだ。しかも政府・日銀は景気をよくするための努力を行わないと宣言しているのは、日本にとっては悲劇だ。白川総裁は金利を上げたくて仕方ない人のようだ。金利引き上げは、間違いなく景気を悪化させる。確かに、利子収入を増やすために資産効果で可処分所得が増え消費を増やすという効果がある。しかし、それよりも設備投資や住宅投資を減らすというマイナスのほうがはるかに大きく、結果として景気を悪くしてしまう。

 例として今年の内閣府の試算結果を引用してみよう。短期金利を1%引き上げた場合どうなるかというシミュレーションである。引き上げた1年目はそれほど大きな影響はなく、本格的に影響がでるのは2年目なので、2年目の影響を引用すると

実質GDP    0.25%減少
名目GDP    0.38%減少
消費       0.17%増加
設備投資(実質) 2.42%減少
住宅投資(自室) 0.82%減少
消費者物価    0.16%下落
国の借金のGDP比  0.93%増加

 というわけで、日本経済への悪影響は歴然としている。特に設備投資の落ち込みが厳しい。それはそうだろう。デフレで利益が上がらなくなっている昨今、融資を受けようとして銀行に行って相談しても、支払わなければならない利子がかさむと返済が大変で、そんなに儲かるわけないから、止めようということになる。当然、金利引き上げは景気を悪化させデフレを加速する。つまり、デフレ下での金利引き上げは、絶対にやってはならぬことだ。金利を上げれば消費が伸びるから景気が良くなるという馬鹿なエコノミストがいたら、その人間は経済を知らないということだ。

 しかし、日銀は失敗を繰り返す。1999年末小渕内閣の積極財政が成功し、景気がずっとよくなってきた。しかし、それでもまだデフレは脱却できていなかった。愚かにも、2000年8月11日、日銀は政府の反対を押し切って金利引き上げを強行した。その結果、景気は再び悪化し、2001年3月には再びゼロ金利に戻し日銀の愚かさを露呈した。その後現在に至るまでデフレ脱却はできていない。その失敗に懲りもせず、政府の反対を押し切って、2006年3月には再び金利が引き上げられ、現在に至っている。今回、どん底のデフレ経済が更に悪化しようとしていることは、日銀の政策が再び失敗したことを証明するものだ。金利を上げてデフレを悪化させた責任は重い。景気が過熱したらいけないから、あらかじめ引き締めを行っておくなどと馬鹿なことを言っていた。食事をろくに与えないで、栄養失調になった子どもに、肥満になるのをあらかじめ予防するために、更にダイエットを強化するようなもの。

 2005年の経済シミュレーションには、「構造改革を行わなかったら、こんなに経済が悪化する」という試算が添えてあった。構造改革の意義をPRしようとしたのだが、明らかに国民を騙す試算だ。確かに急激に経済の悪化する試算になっていたのだが、よく見ると実質長期金利が7%にまで上がるという前提になっているのだ。7%まで金利を上げれば、景気が悪くなるのは当たり前で、これは構造改革をやるかやらないかを試した試算ではなく実質、金利を上げればどれだけ景気が悪くなるかを示したにすぎなかった。
 積極財政を行えば景気は良くなるが、すぐに金利が上がって、国の利払いが増え、財政が悪化するから、景気は絶対によくしてはいけないというのが、政府(内閣府)の論理だ。しかし、日銀が金利を抑えれば、金利は上がらず、財政も改善し続けるはずだと我々は政府を追及した。内閣府の試算に従うと確実にそうなる。これには、政府(内閣府)は反論できなかった。

そこで内閣府は驚くべき行動に出た。内閣府の経済モデルを自分たちに都合の良いように変えることだった。国民を更に騙し続けるため、内部の関数を変えてきたのだ。こんなことをすれば、どんな結果でも出せる。設備投資の関数と物価・金利の関係を示す関数をメチャクチャに変えてきた。結果はどうなったか。金利引き上げの影響に関するデータで言えば、2006年の試算では1年目の潜在GDPの減少幅が0.14%であったのに、2007年では0.01に減った。なんと14分の1にまで減らしたのだ。よくやるよと、呆れて物が言えない。ここまでやって国民を騙し続けるのかと怒りがこみ上げてくる。

 つまり、2006年の内閣府のモデルでは、景気対策と金利に低め誘導で、景気は回復し、財政も健全化してしまうので、景気対策が悪いと言えなくなってしまう。そうするとそれまで行ってきた政府の政策が間違えていたことになるので、モデルを作り替えてしまったのだ。2007年からのモデルでは金利低め誘導の効果を激減させた結果、景気対策と金利低め誘導を行っても、財政健全化は最初の2,3年だけで、それ以後は財政が悪化すると主張し始めた。我々の追求が無かったらこのようなモデルの作り替えを行うことはなかっただろう。積極財政で財政が健全化することに、国民が気付かなければ、今までの政策が間違いだったことを隠し続けることができるのだから。

 新しくした2007年のモデルは、全くひどい。例えば公共投資を5兆円増やしたとき、景気は良くなるのだが、民間設備投資が大きく落ち込んで景気の足を引っ張るような仕組みになっている。特に3年目から大きく落ち込むようになっているが、そんなことはあり得ない。景気がよくなり、政府からの注文がどんどんでてきたとき、企業は一斉に設備投資を減らすだろうか。そんな支離滅裂なことを企業経営者がやるわけない。日本経済新聞社のモデル(NEEDS)でも、公共投資が増えれば、民間設備投資は増える。当然のことだ。特に建築関連の業種では、注文に応じるために設備投資を増やすし、それと同時にそれに関連した業種までもが、投資を増やし始める。

 日本経済のこと、国民のことを真に思っているのであれば、この際、過去の政策の過ちを認め、政策の大転換をすべきだ。

 これらのことを含め、宍戸駿太郞vs大田弘子大臣の公開討論会には大いに期待している。それは先月14日の予算委員会の中で総理が約束をしたことだ。総理と大臣の発言を以下に抜粋する。

○内閣総理大臣(福田康夫君) 《前半略》
 ですから、それは、そういうような今難しい時点にあるんだということ、そしてその日本を間違いなく運営していくというためには、やはりそういうような英知を集めてそして結論を出していくという、こういう作業は必要なんだろうと思いますよ。
 ですから、先生の、公開討論会というのを提案されましたけれども、そういうふうなこともやってもいいと私は思いますけどね。いろんな角度からこの日本がどうあるべきかということを検討していくいい機会というか、本当にそういうことは必要なときだと、こういうふうに私は思っております。

○自見庄三郎君 今総理が公開討論会やってもいいという話ですからね。大臣、あなた、総理大臣の麾下にあるんですからね、公開討論会やってくださいよ、いいですね。

○国務大臣(大田弘子君) 宍戸駿太郎先生のお名前はよく存じ上げておりますし、お書きになったものも拝読しております。勉強させていただきたいと思います。
 討論会、総理の御指示ということであればやらせていただきます。

 何を躊躇しているのだろうか。一刻も早く行って頂きたい。

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コメント

こんにちは。
中川(秀)氏は確かに現在の自民党の中では、例えば下記の記事の与謝野氏よりはずっと「積極財政政策」に理解を示してくれそうですね。何とか積極財政に肯定的な人々の結集が出来れば良いのですが。そのための「大連立」なら歓迎します。少なくとも、与謝野氏や氏の考えに近い人物が「ポスト福田」となる事だけは絶対に避けねばなりません。

「「ポスト福田」政権公約? 与謝野氏初著書

 ■「堂々たる政治」消費税増税論を展開

 自民党の与謝野馨前官房長官が来週、初の著書を出版する。題名は「堂々たる政治」(新潮新書)。政治家の仕事を「全人格と人生をかけて大きな判断をすること」と強調、「いまさら人気取りする必要もない」と、持論である消費税増税の必要性を幾多にわたって触れ、永田町内では「ポスト福田」の「政権公約」(自民党関係者)ともささやかれている。

 一方で「時々の流れに迎合してはいけない」とも訴え、自民党の中川秀直元幹事長が主張する「上げ潮」路線を「だまし討ち」であり「『逃げの政治』の最たるもの」と切り捨てた。竹中平蔵元総務相ら「小さな政府」を進めた勢力にも「国家観の異なる政策に『抵抗勢力だ』とレッテル張りするのは見苦しい」と述べた。自らは、競争力向上と「社会の一体性」とを合わせた「温かい改革」を進めたいと主張している。」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080410-00000104-san-pol

投稿: JAXVN | 2008年4月13日 (日) 17時26分

JAXVNさん、こんにちは。

 日銀人事についてはたしかに小野会長と植草さ
んは異なった見方をしていますね。小野会長は
案外「円の支配者」を書いたベルナーと共通性が
あるかもしれません。

 中川秀直氏は祝辞を述べに来ます。綿貫民輔国
民新党党首も来ます。中川氏は小泉官邸主導政治
の中核だった人ですから、小野さんたちの積極財
政論に本音ではどういう考えを持っているか知り
たいですね。いずれにしても力の大きい人ですか
ら影響力はあるでしょう。私は彼が敵対してくれ
なければいいがと思っています。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2008年4月12日 (土) 13時57分

こんにちは。
小野会長が「最悪の選択だったのかもしれない」と危惧しておられる今回の日銀総裁人事についてですが、植草一秀氏は肯定的に考えておられるようです。
「日銀総裁人事についての補論(3)」
http://www.uekusa-tri.co.jp/column/2008/0408.html
私も、武藤氏の昇格でも事態はあまり変わらなかったと思います。そもそも金利をあげたがっていたのは福井前総裁も同じであり、武藤前副総裁も「福井路線の継承」を公言していたわけですから。また、財務省はそもそも「プライマリーバランス第一主義」であり、極端な事をいえば「プライマリーバランスが修正できるなら、景気などどうなっても良い」という方針ですから、政府の目論見どおり財務省OBの武藤氏や田波氏が総裁になったとしても、日銀から路線転換が始まる事はなかったと思います。結局は「どちらがより最悪でないか」という選択しかなかったのが今回の日銀人事なのではないでしょうか。
ところで、21日の出版記念パーティについてですが、中川元自民党幹事長が出席するというのは本当なのでしょうか?中川元幹事長といえば小泉政権の重鎮であり、「積極財政派」から見れば「仇敵」ともいえる人物です。しかしながら、その「仇敵」が今回のパーティに出席するとなれば、逆に「政策の大転換」が具体化するきっかけになるかもしれません。もし本当に中川氏の出席が実現するなら、小野会長やその他の積極財政派の論客の方々との討論あるいは対談にも期待したい所です。

投稿: JAXVN | 2008年4月12日 (土) 12時51分

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 政府の経済運営が間違い続けていると述べてきた。その根拠はまともな経済理論に基づくなら、デフレのいまは減税、公共事業の拡大、利下げを行うのが定石だからだ。高校の教科書にもそう出ている。景気の変動には様々な要因があるが、考えられるあらゆる要因を組み込んで経... [続きを読む]

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» 一昨日の小沢・福田党首討論は面白くて必見。ウータンが自身を「可哀想なくらい」と嘆いてみたり、青筋で今にも切れそうだったり、(笑) [雑談日記(徒然なるままに、。)]
 それ以外、内容的にもガソリン税・道路特定財源についてや、年金問題についての小沢氏と福田の考え方の差などがうかがえて興味深かったです。  TVでは見逃していて、同人作家の時事・歴史放談Blogさんの「今日の党首討論」に自分で自分のことを「可哀想なくらい」とかいったらダメというか終わりでしょう、福田首相は。こうなる可能性があるの分かった上で総理大臣を引き受けたんだから。泣き言を言う暇があったら、総理大臣辞めて内閣総辞職すべきです。その方が国民のためでしょうね。 正直、アレで完全に同情する気持ちが失せた... [続きを読む]

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