政府貨幣発行に対する国会議員の考え方(小野盛司)
(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第78弾です)
お金を刷ると言えば、すぐ思い浮かべるのが政府貨幣発行だ。日銀も刷れるのだが、紙幣をいくら刷っても、それだけでは、そのお金が国民に渡るというわけではない。日銀券発行残高は70兆円程度であり、実際大きくお金が動くときは、銀行を通じて行われる。会社間の取引では、ほとんど銀行を通じており、紙幣をカバンにつめて支払いに行くことは少ない。お金をいくら刷っても、使ってもらえないのでは景気を浮揚する効果は無い。もちろん、40万円づつ、現金封筒に入れて、国民全員にボーナスをして送るのであれば(「40万円をボーナスに」というのは丹羽春樹氏のアイディア)効果はある。
最も重要なことは、国庫にお金が入ることだ。おカネを合法的に刷る(つくる)ことができるのは日本銀行と政府である。日本の現行法で規定している「通貨」は、「政府貨幣」と「日銀券」がある。一般に知られている「1万円札」「5千円札」「1千円札」の日銀券と「500円硬貨」「100円硬貨」「50円硬貨」「10円硬貨」「5円硬貨」「1円硬貨」の他に政府発行の「記念貨幣(記念紙幣)」などの「政府貨幣」があり、「政府貨幣」には金属で鋳造されたコインだけではなく、「政府が発行する紙幣」すなわち「政府紙幣」も含まれる。「政府貨幣」は、通貨に関する基本法である「通貨の単位および貨幣の発行に関する法律」(昭和62年、法律第42号)では、「貨幣」(すなわち「政府貨幣」)の製造および発行の権能が政府に属するという「政府の貨幣発行特権」(seigniorage/セイニアーリッジ権限)が明記(同法第4条)されており、その発行には上限が無い。
刷った(つくった)お金をどうやって国民に渡すかは、すでに述べたので、今回は政府貨幣発行に対する国会議員の考え方をお話ししたい。筆者は2003年に日本経済復活の会を立ち上げた直前に『政府貨幣発行で日本経済が蘇る』という本を書いた。この考えに大賛成をしていた牧野聖修衆議院議員(民主党)は、この本を大量に買って、国会議員に配った。当時、スティグリッツや榊原英資や丹羽春樹が政府貨幣を発行せよと発言していたこともあり、国会議員の中にも、そんな手があったのかと、政府貨幣について勉強しようという気運が高まっていた。『政府貨幣発行で日本経済が蘇る』という本は、そのお陰もあり、国会議員が本会議中にまでも読んでいたとのことだった。
注意して頂きたいのだが、政府貨幣発行の意味も、主張している人によって随分異なる。例えば丹羽春樹氏は、政府貨幣発行権を日銀に売り渡して、その代金を国庫に入れるというもので、権利が動くだけで、政府貨幣は発行されない。貨幣回収準備資金に関する法律(平成十四年五月十日法律第四十二号)と貨幣回収準備資金に関する法律施行令(平成十五年一月二十九日政令第十九号)があるために、丹羽氏の方法ではうまくいかない。これらの法律・施行令は丹羽氏の提案を阻止するために作られたのかもしれない。
最初に予算委員会で我々の主張で政府を問い正したのは西村真悟衆議院議員(当時は民主党)である。2003年2月28日のことだった。詳しくは
http://www.tek.co.jp/p/reply/reply_budgetcommittee_030228.html
をご覧下さい。塩川財務大臣が相手だったが、彼は質問の内容がよく理解できなかったようだ。政府貨幣発行を主張しているグレゴリー・クラーク氏も谷垣氏に政府貨幣の事について話したそうだが、谷垣氏は全く政府貨幣の事を知らなかったそう。
斉藤斗志二衆議院議員(自民党)は政府貨幣発行大賛成の政治家である。2003年だったと思うが、筆者は議員会館に土曜日に出かけ彼に政府貨幣に関し色々教えた。斉藤氏は平成研究会の会合で政府貨幣を発行するべきだとはっきり主張したという。絶対やると言っておられたのだが、なかなか簡単ではなかったのだろう。
岩國哲人衆議院議員(民主党)も一貫して政府貨幣発行を言っておられる。彼の考えは実際に日銀券の替わりとして使うものだ。私は彼と直接話し、単純な通貨発行は、紙幣や硬貨の流通量が多くない現実を考えれば、工夫しなければ景気浮揚に役立たないことを教えた。政府貨幣発行を唱えながら、一方では消費税増税を主張しておられるのは、残念である。政府貨幣を発行するなら消費税を増税しなくても財源は十分だ。
私の提案は、政府貨幣は超高額にする。例えば、1兆円の紙幣を100枚印刷すれば、それで100兆円だ。それを日銀に持って行き、金庫に収めてもらい、その金額だけ国庫に入れてもらうという考え。しかし、これも上記の法律・法律施行令を変えなければうまくいかない。一つ気がかりなのは、もし政府貨幣を財務省が勝手に発行できるようになったら、そうでなくても強すぎる財務省が、更に強くなり、何をし始めるか分からないという怖さがある。誰がブレーキを掛けるのかを、余程うまく決めておかねばならない。
野呂田芳成衆議院議員(自民党)も政府貨幣発行大賛成である。計量モデルによる説明は難しすぎて、国民を引っ張っていくことはできないのではないかと言う。2003年8月に
野呂田芳成(衆議院議員) 今村治輔(清水建設会長)
香西昭夫(住友化学工業会長) 宮原賢次(住友商事会長)
奥井功(積水ハウス会長) 野村吉三郎(全日空会長)
荒木浩(東京電力顧問) 林有厚(東京ドーム社長)
岡村正(東芝社長) 植村伴次郎(東北新社会長)
飯島英胤(東レ特別顧問) 生田正治(日本郵政公社)
福原淳嗣(野呂田議員秘書) 田中順一郎(三井不動産会長)
佐藤和男(三井不動産顧問)
山口信夫(日本商工会議所会長、旭化成会長)
武井俊文(石川島播磨重工業株式会社相談役)
加賀見俊夫(オリエンタルランド社長)
和田紀夫(日本電信電話株式会社社長)
内田進(三井住友海上火災常務取締役)
といった方々を集め、筆者を講師に招いてくれた。積極財政が財政を健全化するのだという話をして、好評だった。
大前繁雄衆議院議員(自民党)は、丹羽氏を先生として政府貨幣の勉強会を開いている。
中馬弘毅衆議院議員(自民党)も政府貨幣発行論者である。ホームページで政府貨幣発行を訴えている。
http://www.chuma-koki.jp/special/2003/200307.html
このように政府貨幣発行を訴える国会議員は少なからず存在する。しかし法律を改定するほどの勢力になりうるのかは疑問である。かつて、丹羽春樹氏は積極財政を唱えていた志帥会で政府貨幣発行に関する講演を行ったが、そこでは強い反対意見が出たという。
私は、政府貨幣発行は分かりやすいが、多くの国会議員の支持を得るのは難しいと判断し、日銀が国債を買うことによってお金を刷り、日本経済を復活させる方法を提案している。2001年にノーベル賞をもらったスティグリッツがもっと強く政府貨幣発行を主張してくれたら、実現可能かもしれない。2004年4月24日、日本経済復活の会はスティグリッツを招いて、国会議員を相手に講演をしてもらうことにしていた。段取りはできていたのだが、スティグリッツがドタキャンした。どうも、彼は日本人は保守的だから、いくら教えてもここまでの改革はやらないだろうと思ったのではないか。
『円の支配者』で有名なヴェルナー氏にも政府貨幣のことについて聞いてみた。彼は大賛成だが、それを主張してもどうせ日本政府は、そこまではやらないだろうから、自分は主張しないと言っていた。
政府貨幣でなくても、日銀が国の借金である国債を買い取れば、同じ効果があり、日本経済は復活する。これなら法律改正は不要であり、買いオペはどこの国でもやっていることである。この効果は、はっきり経済モデルで示されている。後日そのことはもっと詳しく話したいと思う。国債発行なら国の借金となり、利払いが大変だが、政府貨幣発行なら借金でないからそれがないという意見がある。しかし、国債を日銀が買い取れば利払いは日銀を通じ国庫に返ってくるから同じ事だ。
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