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2008年6月 9日 (月)

『植草事件』を惹起した巨大な闇(3)

  京急偽装事件の契機になったと思われる植草氏によるネット言論

 小泉・竹中構造改革、あるいはその継承路線に内在する真の本質構造は『買弁』である。植草氏は小泉政権初期から、その性格を見抜いていた。平成15年(2003年)5月9日には、全国木材産業政治連盟が主催した講演会において、次のような小泉政権批判を行なっていたことでよくわかる。

 「一般的には改革派と抵抗勢力に分けられるが、中身をみると「亡国派と救国派」勢力という表現の方が正しいような気がする。我々が日本の国益を守る。国益とは日本の物は日本人が持つ。これが民族自決であり、日本の資産を全部外国の人が持つ状態を植民地という状態で、それは避けるべきである。」(12、「国益を損なう政策に厳重な警戒が必要」より)
http://www.zenmoku.jp/moku_kankei/keiei/uekusa_lec/11.html#12

 「知られざる真実ー勾留地にてー」を参照すると、この講演から11日前の4月28日には日経平均株価は7607円に下落していた。また、この講演のわずか8日後の5月17日に、植草氏は大阪にいた。桂文珍氏が司会する読売テレビの報道番組「ウェークアップ」に出演するためだった。日経新聞の朝刊は「りそな銀行実質国有化」を伝えていた。「りそな銀行実質国有化」報道は、2001年4月の小泉政権発足当時から植草氏が“警告してきた”「金融恐慌リスク」が現実化したことを意味していた。大銀行が破綻すれば他の企業に余波が及び金融恐慌を引き起こす。植草氏は小泉政権発足時から、この政権が主張する政策を敢行し続ければ日本経済は最悪の状況に陥ると指摘し続けてきた。国全体が当時の小泉政権を熱狂的に支持していた時に、植草氏は政権の反国益性を見抜いていた。当時の有識者の中では彼は明らかに突出した異端児的存在だった。

 「退出させるべき企業は市場から退出させる」と、徹底した自己責任原則をぶち上げていた小泉内閣は、その予想される単線的な処理方策、つまり悪しき企業の市場退散をせずに、何と預金保険法の抜け穴条項を使い、りそな銀行を救済した。(この経緯については彼の著書を読んでもらいたい)この行為は小泉政権の存立基盤を自己否定するものだった。ところが当時は民主党もマスコミもそのことはいっさい追及しなかったし、今もしていない。それどころか当時、マスコミは、小泉政権が金融問題を見事に解決して日本経済の再生に成功したかのような報道を行なった。植草氏はこれを、日本が偽装の魔術に閉じ込められた瞬間だったと言っている。いわば金融モラルをぶち壊す行為を、非常に適正な処理であったかのように糊塗・偽装したという話である。この話にはまだ重大な本質(うら)がある。植草氏はこの一連のりそな銀行救済処置に巨大な胡散臭さを嗅ぎ付け、そこには金融操作によるインサイダー取引があったのではないかという強い疑念を抱いた。

 植草氏が京急事件で逮捕されたのが2006年9月13日である。これを読んでいる方々には是非確認して欲しいことがある。植草氏が宮崎学氏が主催するネット「直言」で、りそなインサイダー疑惑の闇を最後にダイレクトに指摘していたのが、何と、逮捕7日前の9月6日なのである。その6日の記事、「第12回『失われた5年-小泉政権・負の総決算(6)』」ではこう書いてある。

 『小泉政権が2003年に金融処理における「自己責任原則」を放棄して税金による銀行救済に踏み切ったのは、米国の指導によった可能性が高い。米国の政権につながる金融勢力は、日本政府が金融恐慌をあおり、株価暴落を誘導しながら最終局面で銀行救済に踏み切ることを指導し、日本の優良資産を破格の値段で大量取得することに成功したものと思われる』

 当時の政権が、メディアを使ってこのような疑獄的な金融犯罪を行い、国民に対しては洗脳的偽装手法でごまかしていたとすれば、この本質をまともに見抜いた植草氏を、買弁勢力筋ははたして放擲して置くだろうか。よく考えていただきたい。植草氏がネットで上の記述を行なってから、わずか一週間後に京急事件は起きたのだ。これが偶然だと言えるだろうか。買弁勢力筋はかなり以前から植草氏の言動に神経を尖らせてきたが、りそなインサイダー疑惑に植草氏が言及するに及んで、ついに抑制がはずれ、植草氏をかねてから計画していた偽装犯罪に巻き込んだのではないだろうか。筆者は植草氏の京急偽装事件が始動した直接の契機は上の「第12回『失われた5年-小泉政権・負の総決算(6)』」ではないかと考えている。この記述は一般人のブロガーが、その場の思い込みで書きなぐったものとはわけが違うのだ。経済政策に精通するプロのエコノミストが書いたものなのだ。いかにネットといえども、その影響力は圧倒的である。植草氏は明らかに言論表現を封じられている。
                                          
 前回でも書いたが、植草氏は2001年の段階で痛烈に小泉政権批判を繰り返していた。2001年12月26日の夕刊フジに載った「『小沢一郎&植草一秀』ビック対談」で、小沢一郎氏は植草氏に対して、無意識に植草氏の未来を予見したような話を振っている。

小沢 僕らは少数派だけど、賛否を別にして明確に自分たちの主張を打ち出す政治集団があるということが大事だと思う。いまは自民党も他の政党も主張が何だか分からない。誤解されることがあっても、合理的な政治判断を下していくべき。植草さんも政府ににらまれているかもしれないけど(笑)、きちっと意見をおっしゃってるでしょ、それが大事なんだ。誰の前でも自分の考えた結論をきちっと言うことが、健全な社会のために必要なんだよ。

  小沢一郎という、これも傑出した政治家の第六感は、植草氏が時の政府に睨まれていることをこの時点で見抜いていた。小沢一郎と言えば、現在の自民党は、メディアの印象操作を使って、毎日のように小沢氏のイメージダウンを計っている。植草氏がブログで語ったように、自民党は小沢一郎氏をそうとうに恐れている。そのために小沢氏のイメージを落とすことに躍起となっている。

(つづく)

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コメント

kenkensha様

 貴重なコメントありがとうございました。

>ワールド・ビジネス・サテライトに出演されて
いた植草先生は、「りそな銀行救済策が出た後、
意見と態度を180度変えた」木村剛氏と、この
件について番組の中で小さな論争になるという場
面があった。この時、ふてぶてしく居直る木村氏
に対してムキになって反論された植草先生の目に
光るものが、あったのを私は忘れることができな
い。おそらく、無念と、「してやられた」という
思いが交錯した、「悔し涙」だったのだろう。

 そういうことがあったのですね。木村剛氏は竹
中氏の頭脳的片棒でしたから、世の中が知らない
ところでも植草さんを敵視した行動があったかも
しれませんね。極端なネオリベ崇拝者の一人で
す。

>京浜急行沿いの高校となれば、記憶するところ
>では、横浜女子商業、東高、横浜外語の三つし
>か思い浮かびません。しかもスカートが紺色な
>のは、横浜外語高校だけ。

 これも大変貴重な情報をありがとうございます。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2008年6月10日 (火) 14時03分

下らない私の雑文に、わざわざご返答いただきまして、ありがとうございました。
凡そ六つの論点があるように思いましたが、雑駁な頭脳ゆえそのうちの四つに対して感覚的・経験的に(論理的にではなく)お答えできるのみです。お許しの程を。

① 随分以前のことになりますが、青森・秋田・山形の三県を仕事の関係で何回となく巡っていたことがあります(居住していたのは秋田市の山王でした)。記憶するところによれば、青森の青森高校、秋田の秋田高校、山形の山形東高校といえば、当該県のエリート高です。そこの卒業生が日雇いまがいの派遣社員をやっていることに、非常に驚きました。正社員になるのが、ここまでnarrow path(あえて竹中平蔵氏風の言葉を遣わせていただきます)になっているのでしょうか。
② 今回の秋葉原事件の犯人が、静岡県裾野市の関東自動車工業に派遣工として働いておったということを聞いた時には、多少合点がゆきました。私は裾野市の近くの静岡県某市の出身で、亡父の会社が関東自動車工業と取引があったのですが、常々「あの会社は、出すのは糞でも嫌だという会社だ。絶対に下には儲けさせてくれない」とぼやいていたからです。
③ 植草氏にからむ二つの事件は、「国策捜査」であると信じております。しかしそうなると、横浜市の首長クラス、及び植草氏を酒席に誘い出した人間の両者が神奈川県警と繋がっていないと、あの事件は起こしえないわけで、植草氏を嵌めた組織の大きさに慄然とした思いを抱きます。
④ ①の仕事とは別のものですが、横浜市に十数年住んでおりました。またその仕事の関係で神奈川県の高校については、たいてい知っているつもりです。京浜急行沿いの高校となれば、記憶するところでは、横浜女子商業、東高、横浜外語の三つしか思い浮かびません。しかもスカートが紺色なのは、横浜外語高校だけ。果たしてあそこの生徒が、品川駅から、あの時間に電車に乗るものやら。誰が被害にあったのか噂くらいはたつはずですが、寡聞にして耳にしておりません。

投稿: kenkensya | 2008年6月10日 (火) 07時57分

こんにちは。
>kenkensyaさん
そういえば、木村剛氏は「グレーゾーン金利」の廃止に強行に反対していましたね。まるで「町金の代弁者」でした。

http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu136.htmhttp://headlines.yahoo.co.jp/column/bp/detail/20070110-00000000-nkbp-bus_all.html

「典型的だったのが、グレーゾーン金利廃止の議論である(関連記事=森永卓郎:サラ金システムを支える生保・銀行・外資)。

 多重債務者問題をクローズアップし、金利を引き下げれば問題が解決するかのごとく吹聴。世間受けを狙って見せ物的に行政処分を乱発して、これで世の中が良くなるかのごとき誤解をまき散らした。これは、完全な失策である。

 予言しておこう。グレーゾーン金利の廃止を織り込んだ貸金業法改正の影響は、日本経済に対して2007年中に大きくマイナスに効いてくる。なかなか盛り上がってこない個人消費の背景には、このグレーゾーン金利廃止を決めたことも影響がある。良くも悪くも、貸金業者の貸し出しが日本経済の潤滑油になってきた現実を無視すべきではないのに、完全に無視してしまった。」
それからこの記事には、何とこんなくだりもあります。今回の通り魔事件の容疑者が派遣社員でした。木村氏は、今でも同じことが言えるのでしょうか?
「ところが、いつの間にか安倍政権では「格差ゼロ=非正規社員の正社員化」というばかげた公式の下で、格差社会論が一人歩きを始めている。「正社員=幸せ」「非正規社員=不幸せ」という画一的な価値基準を国民に押し付け、そういう押し付けこそが不幸な格差社会を生み出していることに気づいていない。

 「再チャレンジ」が重要だと言いながら、一度つまずいた人間を再起不能にするまでたたき続けているのは一体全体誰なのか、よくよく考えてみた方がいい。そういう人々が「イジメは問題だ」と平然とのたまわっているのだから、本当に呆気(あっけ)にとられる。」

植草氏のブログについて「なぜもっと経済の事を書かない」という不満を持っている人もいるようです。しかし植草氏のまきここれた事件が「ただの冤罪事件」なら、事件の事はほどほどにして本筋の話へ、としできるのでしょうが、これが「言論弾圧事件」となればそうはいきません。植草氏もその事を自覚しているからこそ、当事者として真相を語らなければいけないと考えておられるのではないでしょうか。
植草氏の経済理論に関しては懸念する事はないと思います。植草氏が「積極財政派」から転向して「緊縮財政派」(=「財務省派」)になる事は考えられないからです。今でも「財務省」は徹底して批判しておられますし。

投稿: JAXVN | 2008年6月10日 (火) 05時58分

2003年の「りそな銀行」救済が発表されて間もなくだったと記憶する。東京放送のワールド・ビジネス・サテライトに出演されていた植草先生は、「りそな銀行救済策が出た後、意見と態度を180度変えた」木村剛氏と、この件について番組の中で小さな論争になるという場面があった。この時、ふてぶてしく居直る木村氏に対してムキになって反論された植草先生の目に光るものが、あったのを私は忘れることができない。おそらく、無念と、「してやられた」という思いが交錯した、「悔し涙」だったのだろう。
「ああ、この人は誠実な人間なのだな」私は直感した。私は、それ以来二つの事件について、植草氏の「無実」を疑ったことはない。高橋博彦先生のブログに出入りさせていただいている由縁である。
余談になるが、この少し前、私の弟子を僭称する証券マンが夜遅く突如電話をかけてきて
「師匠、木村剛って街金のオヤジにそっくりだと思いませんか?」
私も思わず吹き出し「ははは、そりゃそうだが、あいつは日銀出身だぞ」
「いや、私、吃驚しましてね、何故、街金のオヤジが突如、経済評論家になるのかと」
「ははは、だからお前は馬鹿だと言われるんだ」

こんな会話の直後、木村剛氏が街金まがいの銀行設立に関係したと聞き、私は呟いた。
「あの野郎、意外と人を見る目があるのかもしれん」

投稿: kenkensya | 2008年6月10日 (火) 01時23分

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