基礎的財政収支の黒字化見通しに暗雲 -内閣府モデルに騙され続ける政府-(小野盛司)
(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第101弾です)
本日(7月23日)の新聞各紙には、「2011年度に基礎的財政収支の黒字化」という政府目標が厳しくなったと伝えている。それでも日経新聞は「黒字化の旗を降ろすな」などと馬鹿なことを言っている。この目標こそが、日本経済を急激に衰退させ国民を苦しめているものであり諸悪の根源なのだ。財政収支の黒字化と言えば、如何にも良いことのように聞こえるが、デフレ下においてこれほど害になる政策はない。デフレでお金が足りなくて国民が困っている時に、財政収支黒字化のために、増税で国民から金を取り上げ、歳出削減で国民に渡すべきお金を渡さない。
どうしてこのような世界にも例を見ない最悪の国家目標を掲げてしまったのだろうか。これは小泉内閣が終わりに近づいた2006年7月に閣議決定されている。小泉首相は自分の在任中に経済成長を高めデフレを脱却すると言っていた。構造改革なくして景気回復無しというのが元々の彼のキャッチであったが、デフレすら脱却できないのでは、景気回復とは言えないし、結局構造改革が失敗したことになるから、デフレはどうしても脱却したかったのだろう。デフレ脱却は積極財政を行っていたら簡単にできたのに彼は緊縮財政を続けて、デフレ脱却に失敗した。すさまじい外需の後押しがありながら失敗したのだ。あれだけの猛烈な追い風が増えていれば、何もしなくても大変な好景気になっていたのに、彼は緊縮財政で常に景気にブレーキをかけ続けていた。その結果世界経済の中で日本がみるみるしぼんでしまい、経済では一流でないと大臣が言うまでに堕ちてしまった。
小泉氏の最後の置きみやげが2011年度に基礎的財政収支の黒字化という国家目標だった。成長率を高め、デフレを脱却し、国の借金を返すという彼の目標は何一つ達成されなかったのだが、せめて「2011年度に基礎的財政収支の黒字化を」という目標くらい立てておけば、彼の後継者がやってくれるだろうと思ったのだろう。これが計量モデルを理解できない小泉氏の悲しさだ。なぜ2011年なのかと言えば、2006年度に発表された内閣府のモデルでは2011年に財政収支が黒字化すると予測していたからだ。しかし、ここに落とし穴があった。内閣府のモデルは、このままの政策を続ければ、あっという間に景気がよくなり、財政も改善しますよという大本営発表をするためのモデルだったのだ。国民を騙すために作られたインチキモデルであることを小泉氏も理解していなかった。このことは以前も説明した。念のため再度下の図に示す。このモデルでは1~2年でデフレーターはプラスになってデフレ脱却し景気回復することになっているが、現実はいつまで経ってもデフレは続いていっていることが分かる。
このモデルは国民だけでなく、何と小泉氏までも騙してしまった。本当は緊縮財政を続けていたら、デフレはいつまで経っても脱却できないし、当然財政収支など黒字化するわけがない。当然のことながら、発表のたびに2011年度基礎的財政収支の黒字化見通しは厳しくなる。このモデルは大本営発表にすぎないのだから、そんなことは初めから分かっていたのだ。実際に内閣府の発表で見通しがどんどん暗くなっている様子を書いてみよう。
①2006年7月の閣議決定 (対GDP比)
歳出削減がなくても2011年度に基礎的財政収支を黒字化する
国 0.8%赤字 地方 0.8%黒字
合計 0.0%
②2007年1月
14.3兆円の歳出削減を行えば
国 1.2%赤字 地方 1.5%黒字
合計 0.2%黒字
③2008年1月
14.3兆円の歳出削減を行っても
国 1.4%赤字 地方 1.3%黒字
合計 0.1%赤字
④2008年7月
14.3兆円の歳出削減を行っても
合計 0.7%赤字
お分かりだろうか。2006年度には歳出削減も増税もなくても2011年度には基礎的財政収支は黒字化するというのが、このモデルの予測だったのに今月の発表は14.3兆円の歳出削減を行ってもまだGDP比で0.7%の赤字ということだ。もちろんこれは大本営発表にすぎず、時間が経つにつれて嘘がバレる運命にあった。それは上のグラフでもはっきり分かる。政府が今の緊縮財政を続けている限り、国民の生活を苦しめ、経済を悪化させ、財政健全化など出来るわけがない。政府がやらなければならないのは、景気対策(これはお金を刷って国民に渡す政策だ)である。そうすれば、あっという間に財政再建も財政収支の黒字化も実現する。インチキモデルに振り回されるのを止め、真に国民のための政策を行っていただきたい。今日の日経には、国民新党がマニュフェストに16兆円の景気対策を提言するとある。国民の事、経済の事を考えてくれている政党もいるのである。
← この記事に興味を持たれた方はクリックお願いします!!
日本に希望を与える信念の男、城内実
| 固定リンク










コメント
こんにちは。
> ななし様
> 小泉氏はこうなる事は十分承知の上だったと思いますよ。
小泉元首相の慶応時代の同級生栗本慎一郎氏は、「小泉はとにかく頭が悪い。森元首相もさんざん『頭が悪い』と言われたがそれ以下だ。」とおっしゃっておられます。本当に構造改革の内容を承知していたかどうかはわかりません。しかし、少なくとも「日本のためにはならない」事だけはわかっていたのかもしれません。郵政民営化に執念を燃やしたそもそもの理由が最初の選挙で郵便局の組織が敵に回ったという「私怨」だったように、怨念については人の三倍はあるようですから。
ところで元信州大学教授の長尚氏が、日本経済復活の会定例会での紺谷典子氏のご講演について、ご自身のHPに感想を掲載しておられました。皆様もうご存知かもしれませんが、ご紹介します。
http://www.avis.ne.jp/~cho/koko.html
一部抜粋します。
「(紺谷典子氏のお話は)毎度聞いても誠に明快で、説得力がある。このような正論、特に不況の中の歳出削減や増税は誤った政策だと、世界の常識に基づいた指摘を言う識者・エコノミストは他にもリチャード・クー氏などがおられるが、いずれも最近マスコミ界からは干されていて、登場機会がほとんどなくなっている。これは明らかに強い勢力からの圧力によっている。国民に偏りのない正確な情報伝達が阻止され、結果的に言論統制という恐ろしい状況になっている(小野盛司・中村慶一郎著「お金がなければ刷りなさい」76ページ参照)。最近各種の偽装問題が表面化しているが、国家の基本にかかわることでの、いわば「情報偽装」という犯罪は、各種の偽装問題よりも遥かに罪深い大犯罪である。」
投稿: JAXVN | 2008年7月25日 (金) 07時20分
小泉氏はこうなる事は十分承知の上だったと思いますよ。
当時内閣府が出した経済成長の予測でもGDPは増えないどころか逆に減って行ってたように記憶しています。
ソースは残念ながらありませんが、某巨大掲示板に関連スレが立ってたのを覚えています。
確か、10年後くらいまでの予測だったように思います。
彼は確信犯ですよ。
投稿: ななし | 2008年7月24日 (木) 02時58分