大田弘子vs宍戸駿太郞公開討論会だったはずの討論会に出席して(小野盛司)
(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第107弾です)
昨日(8月8日)、大田弘子vs宍戸駿太郞公開討論会が開かれるはずだったが、実際は大田弘子が出席を拒否し、内閣府vs宍戸駿太郞の公開討論会になってしまった。それでも、筆者はこの討論会に出席し、発言をさせていただいたので、ここにご報告をさせていただくことにした。読者の方々でこの討論会に出席された方の多いのかもしれないが念のため会の概要を書かせていただく。
会は「第35回 ESRI-経済フォーラム」という形で13:00に始まった。最初内閣府経済社会総合研究所次長の中藤泉氏の挨拶、次に基調講演として内閣府計量分析室の齋藤潤氏による「経済政策とマクロ計量モデルの活用」というテーマで話しをされ終わったのが13:30だった。その後で自見庄三郎参議院議員が14:00まで、この公開討論会に至る経過報告を行った。そこで内閣府の経済モデルに対する問題点を話していただいたので、この討論会が内閣府ペースで進んでしまうのをそれなりに防ぐという意味があった。そして自見氏は出席を拒否した大田前大臣を激しく糾弾し、国会の場で参考人・証人として喚問し追求すると言っておられた。
パネルディスカッションが13:20から始まる予定だったが、実際始まったのは14:00になっていた。14:00になってから、また内閣府の齋藤潤氏のお話が始まり正直うんざりした。その後宍戸駿太郞氏の質問があり、それに門田治電力中研研究員が若干コメントし、それに対して齋藤潤氏が答えた。
宍戸氏の指摘は、世界的に見て余りにも低い日本の成長率だが、これでよいのか。景気対策が必要なときに、内閣府のモデルは景気対策をしても効かないことを示している。他のどのシンクタンクも景気対策は有効だという結果が出ているのに、内閣府のものだけ景気対策は無効だとしているのはおかしいのではないか、何か政治的な意図があるのではないかということだった。そして内閣府は過去のモデルを大きく変えたのはなぜか、モデルの責任者は誰かなどと質問した。
答える側の内閣府の齋藤氏は、政治的な意図は無い。モデルとして特に景気対策が効かないようにしたわけではなく、他のモデルと比べても特に異常なわけではないとした。齋藤氏の説明が終わったときは、すでに予定の終了時間をオーバーしていた。そもそも予定の終了時間が早すぎた。この種の討論会で1時間半というのは短すぎる。
元々の予定としては、会場からの質問を受ける予定だったが、時間が来たのでこれで終わると司会が言った。私はここで終わっては、討論会の意味が薄れてしまうと感じ、挙手し発言させよと要求した。司会は、それでは最後に宍戸氏にお話しをしてもらって、それで終わりにしましょうと言った。それからは宍戸氏と私の連係プレーだった。宍戸氏は「私の替わりに小野さんに話してもらいましょう」と言って下さったので、お言葉に甘える形で私が発言することとなった。
私がそこで何を話したかを説明する前に、福田改造内閣発足以来、極めて大きな変化が現れていることを指摘したい。小泉内閣以来、一貫して政府は構造改革中心の政策運営だった。そこでは財政再建と称し、歳出削減と増税、社会保険料値上げ、年金カットという国民に厳しく対応し痛みに耐えよ、そうすれば日本は良くなると訴えていた。それは昭和恐慌を引き起こした井上準之助蔵相の政策そっくりだった。井上蔵相の緊縮財政も結局不況を招き、税収が減り、国民の不満が高まり、井上蔵相は暗殺され、結局高橋是清による積極財政で日本経済は再生されたのである。
デフレの時には、お金がどんどん消えていくのだから、緊縮財政で経済が再生するわけがない。今回日本に不運だったのは、デフレ時に緊縮財政をやったにも拘わらず、30年間で最高と言われたほどの世界的な好景気の中で、大変な追い風が吹き、日本経済が少なくとも国内だけを見れば緊縮財政で景気が急激に悪化するのを免れたことである。世界の中の日本を考えれば、日本経済は急速に縮小していったのだが、国民はそれをそれほど大きな痛みと感じなかったために、強く景気対策を求めることはなかった。しかし、そのような外需依存による経済の下支えがいつまでも出来るわけが無く、世界経済悪化と共に、日本経済はデフレが更に悪化しようとしている。それが現在の日本である。
小泉流では、景気対策はやらないのだから、やらなくてもよいという理論的な裏付けを必要とした。だから、景気対策をやっても効果が無いという無茶苦茶な経済モデルを内閣府に作らせた。しかし、今や景気対策をやらなければ日本経済はもたないことがはっきりした。そこで福田改造内閣では景気対策をやると言い出した。実は「どうせ内閣府のモデルはデタラメなのだから」と心の中で思っているからこそ、そのような変化が可能なのだ。そうなると、この内閣府の経済モデルでは困るのだ。役に立たない景気対策をなぜやるのかと追求されるはめになる。
そこで私は、次のように発言した。
折角このような討論会を開いていただいたのですから、景気対策が良いのか悪いのかを議論すべきだと思います。景気悪化に伴い、政府は景気対策をやると言っております。それに対し、景気対策は将来世代につけを残すから良くないと政府を批判する人がいますが、それが正しくないということは、内閣府の経済モデルで示されています。宍戸氏の資料の23頁を見ていただきたい(私が説明をするということで、宍戸氏の資料の中にこの表を入れておいていただいていた)。
そこには、積極財政をした場合(つまり景気対策をした場合)と緊縮財政だった場合(つまり景気対策をしなかった場合)の比較があります。景気対策をすれば、間違いなく名目GDPも実質GDPも増えます。日本の低すぎる成長率が伸びてくるのです。デフレーターは改善し、デフレ脱却を容易にし、失業率も減ってきます。国の借金ですが、借金そのものには意味が無くて、意味があるのは借金のGDP比なわけでこれが実質的な借金です。これは景気対策によってGDPが伸びるので減ってきます。つまり景気対策によって国の借金は実質的に減ってくるのです。
こう言うと、齋藤氏は借金のGDP比は2012年からは増えてくると言われると思いますが(ここで齋藤氏は強くうなずいた)、しかし、4年後ともなりますと、モデルの不確定性が大きくなります。このことは、他のモデルとの比較で齋藤氏からの詳しい説明がありました。つまりこのモデルは2012年以降の信頼に足る予測は不可能なわけです。つまりこのモデルで結論できることは、景気対策によって将来世代へのつけは減るということです。この後、内閣府はデフレをどうやれば脱却できるのかを経済モデルで説明すべきだという話をした。
お分かりだろうか。私が作成したこの表は、小泉構造改革を進めるには頭痛の種だったのだ。景気対策をすれば借金が実質的に減るのであれば、なぜ景気対策をしないのかという議論が出てくる。反論するには内閣府のモデルが間違いだと言うしかないし、政府はそのような反論をするわけにはいかない。小泉内閣、内閣府はこの事実を必死で隠蔽しようとした。マクロモデル研究会に小野盛司を出席させるなと内閣府が命令したのも、隠蔽工作の一貫である。しかし、状況は一変した。今や景気対策を政府がやろうと言い始めた。それならこんな便利な表は無い。景気対策をやればやるほど国の借金は実質的に減るのであれば、誰に遠慮をする必要があるだろう。国・内閣府はこの表を堂々と掲げて国民に訴えればよい。次世代へのつけを減らすには思い切って景気対策をすればよいのだ。
ばらまきと馬鹿な連中が言う。国全体にお金が不足しているときにばらまきをやらず、特定の人間だけに巨額のお金をプレゼントするような政策にあなたは賛成しますか。たまたま、あなたがそのお金を受け取って大金持ちになればいいけど、そんな人は政治家に特別なコネがある人だけだ。それより、国民全体にお金が回るような景気対策をやったほうがはるかに良い。もちろん、日本経済をこれから引っ張っていくような産業への投資は最優先でやって欲しい。
景気対策とは、次世代につけを残すことではなく、お金を刷って国民に渡すことだ。お金が国民に流れれば、見違えるように活気にあふれた日本が出現する。
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日本に希望を与える信念の男、城内実
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コメント
残念ながら、その討論会には参加できませんでしたが、会場の雰囲気がよくわかりました。大田弘子大臣は出席を拒否したことは特筆すべきであるし、また、こうした理論的な対決の会合を提案した自見議員の努力に敬意を表する。
投稿: Orwell | 2008年8月11日 (月) 00時37分
この表は私のブログで使用してもよろしいでしょうか?
面白い記事ですね。
その場にいたような感覚になりました。
政治(政局)と経済がごっちゃになって、誰も自分の意見が正しいと言って曲げない。内閣は古い自民党に戻ってある意味ちょっと安心感も出た気がします。
麻生さんの経済対策は、上記だけで終るわけではないので大丈夫だと思います。
投稿: 新三 | 2008年8月10日 (日) 23時49分
ななしさん
上げ潮派、増税派、景気浮揚派、結局、いくつ
かの考え方が出たとは言っても、今最大限必要な
ケインズ型再分配が実現する政策を誰も上げない
ですね。結局は企業やバクチ的投資家を優遇する
方向性しか見出さず、サプライサイドばかりです
ね。国民生活の視点がまったくない。各家庭の可
処分所得は減るどころか、貯蓄を切り崩しながら
生計に当てています。近い将来、これも底を尽く
でしょうね。需要逼迫が加速しています。
プラザ合意辺りから、日本の市場構造切り替え
が始まり、小泉時代でなりふり構わずそれを急加
速して今日の事態に至ったということです。アメ
リカに利益誘導するシステム作りをアメリカがご
り押しし、アメリカ留学帰りの学生が政財界や官
僚の中枢に位置するようになり、日本の構造をア
メリカ型の市場構造(ネオリベ)に切り替えたせ
いです。アメリカ帰りの洗脳されたエリート達は
向こうで、数パーセントの金持ち連中が豪奢な生
活をしているのを目の当たりにして、熾烈な憧れ
を抱き、日本の我々も特権階級の蜜の味を味わう
べきだとグランドデザインを書いた。それが国富
移転の分け前を掠め取るシステム、すなわち構造
改革だったのでしょう。そのシステムを構築する
ためには、再分配は最も忌避すべき敵なんです。
つまり、国民生活を豊かにしては自分達が豪奢な
暮らしを維持できないと踏んだわけで、国民に金
が回らないようにしているわけじゃないでしょう
か。つまり、彼らにとっては需要サイドの喚起は
ご法度なのです。日本経済復活の会の積極財政論
が徹底的に敵視されていることが今回の件で明白
になりましたね。当然です。日本のエリート連中
が国民を捨てて自分達の豪奢な生活に憧れを抱い
たからです。彼らは根っからの売国奴と言えるで
しょう。この事実に国民が気付いた時、現代の内
乱が起こり、日本はシナやロシアに乗っ取られる
危険が出るでしょうね。
投稿: 高橋博彦(管理人) | 2008年8月 9日 (土) 23時18分
個人的には期待した麻生氏の財政政策に失望しましたね。
http://www.47news.jp/CN/200808/CN2008080901000689.html
結局、これまでと一緒ですね。
不労所得を優遇するだけ、金持ち優遇するだけ。
今の日本の家計で株式投資する余裕があるのは一体何%くらいなんでしょうかね。
家計の貯蓄率は改革以降急激に下がり続けてもうマイナス何じゃないでしょうかね。
結局、なけなしの金もインサイダー=金融資本に差し出す気なんでしょうか。
これならまだ上げ潮派の法人税減税の方がマシな気がしますが。
効果が極めて限定的、一時的で、極一部の人間しか得をしない事は明らかでしょうに。
小泉改革以降と言うより、プラザ合意以降、不労所得を優遇して勤労者を冷遇して来た
結果が今日の苦境を生んだ気がするんですが。
バブル崩壊やサブプラ問題で懲りて無いんでしょうかね。
正直、旧経世会的なケインズ政策による再分配を期待していた分失望は大きいです。
本人は税金を一銭も使わない画期的な景気対策だと自画自賛しておりますが、減税で
税収が減る事を考えて無いんでしょうかねw
これほど日本の有権者は馬鹿にされてるって事なんでしょう。
外需に頼れなくなった今やるべきは国民に広く再分配して内需を拡大する事だと思うんですが・・・
結局、清和会と麻生氏は慣れ合ってるような気がしますね。
まだ麻生氏の言う財政政策の全容は出て無い気もしますが、第一段がこれでは先が思いやられます。
投稿: ななし | 2008年8月 9日 (土) 22時03分