福田首相辞任。驚きか、計画通りか?(小野盛司)
(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第113弾です)
福田首相が辞任した。驚きの声が多く聞かれたが、事情は1年前の安倍首相の辞任とは随分違い、沈着冷静な判断に思える。むしろ予定通り、計画通りの辞任のようにも見える。一ヶ月前の内閣改造は何だったんだと思う人も多いかもしれない。しかし、あれは支持率が回復するのかどうかを見るのが目的だったのだろう。もし大幅に回復するようなら、このまま人気を高めつつ、衆議院選挙に備える。そうでなければ、辞任して人気の高い麻生氏に政権を譲って選挙を戦う。これが自民党生き残り戦略と考えてもおかしくない。
パートナーを組んでいる公明党の要求がどんどん拡大してくる。景気対策、国会召集時期、会期、衆議院選挙の時期などの要求で、公明党は要求を受けなければ政権から離脱するとまで言っているのではないか。そもそも、公明党は与党に留まる意味がない。衆議院は公明党がいなくても過半数に達していて、参議院は公明党がいても過半数に達しない。キャスティング・ボートさえ無理だ。与党に埋没すると影が薄れ必ず選挙に負けるから、存在感を示そうとあれこれ要求するのは当然だ。
次期総裁は麻生さんが有力なのだろう。となれば、積極財政政策への転換が期待できる。あとは、「赤字国債は将来へのツケを残すことになる」という誤った国民の認識をどうやって正すかが課題になる。9月6日(土)20:00からのNHKの討論番組で、世論が動くきっかけになるかもしれない。赤字国債を出せば出すほど、実質的に将来へのツケは減ってくるという内閣府の試算結果を知れば、国民は驚くに違いない。気がかりなのは、麻生氏が消費税を10%に上げて年金財政にすると言っていることだが、今消費税を10%にすれば、中小企業の多くは潰れてしまう。売上の10%もの利益を出している企業は少ないからだ。この辺の事情は麻生氏も良く理解しておられるものと期待している。
積極財政がどれだけ素晴らしいものかを示すために、下の図を示したい。一人当たりの名目GDPの国際比較であり、これは、世界各国の豊かさ、所得水準の比較をしていると言って良い。トップはルクセンブルグなのだが、これは小国であり、しかも税金をうんと安くして世界の金持ちを集め、資金を集めて銀行業務で稼いでいるから「金持ちの国」になるのは当たり前で、これは例外として扱うべきだろう。
日本は黒く太い線で示されているのだが、1993年には、この例外を除けば、世界で最も豊かな国だった。しかし消費税増税などの橋本内閣の緊縮財政により世界6位まで転落、その後小渕内閣の積極財政により、ルクセンブルグを除けば、再び世界トップに極めて近い水準までに回復していることが分かる。この間、日本の成長率は世界の中で際だって高い。積極財政は極めて有効だったことが分かる。
日本の悲劇はその後だ。特に小泉内閣の緊縮財政が始まってからは、このグラフで分かるように世界の中での日本経済の停滞が際だっている。政府は、戦後最長の景気回復と宣伝していたが、この図を見て明らかなのは、世界的な大好況の中で、日本の成長率は極めて低かったということだ。デフレ下の緊縮財政が経済を停滞させた。
諸外国の何分の一かの成長率しかなくて、たくさんの国が日本を一気に抜き去り、貧乏な国に日本がなってしまったのが分かるだろう。実感なき景気回復と言われていた間に大変な事が起きていたのだ。しかし、小渕さんの積極財政を復活させれば、日本が再浮上するのは間違いない。日本企業のブランド力はまだまだ健在だから、今からでも遅くない。さすが、福田首相が積極財政へといきなり転換するのは無理だったのだろう。今まで言ってきたことと全く違うではないかと追求を受けるに決まっている。それなら、トップを変えて、ご祝儀相場で支持率が高いうちに衆議院選挙をやって与党が過半数を確保し、今度は民意を受けての政権運営という形で、思い切った経済対策を行うことができる。野党もこれなら政局に持ち込めない。これが福田―麻生の戦略だろう。今こそ財政政策の大転換を期待するし、麻生さんに頑張って下さいと言いたい。それに野党議員の中にも積極財政を支持する人たちもおり、彼らは麻生政権を助けるべきだと思う。
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コメント
麻生氏は本当に、やりたい事が出来るのか疑問。
少数派閥の大将が、自民党内で政治を行うためには、最大派閥の意向を聞く必要があるのではないでしょうか。
よって長期政権は難しいのではないでしょうか。
せっかくなら、もっと落ち着いた時に、実力を発揮できる政権の下で総理をやって欲しかった。
まだなってもいないのに愚痴ってみました。
投稿: 新三 | 2008年9月 3日 (水) 03時35分
麻生太郎は日本の英雄になりかねない
民主党は、福田退陣によって早期解散の可能性が高まったと判断しているようだが、わたしには余りそう思えない。なぜなら、麻生内閣が誕生し、麻生の述べた通りの大量の公共投資を実行すれば、景気が目に見えるように急回復し人気が高まるからだ。公明党の意向をくんで早期解散するよりも、衆議院の任期満了まで引き伸ばした方が景気回復の効果が明らかになって分かりやすい。積極財政の効果について麻生自身は完全な自信がなく、一世一代の博打だと思っているに違いない。しかし、ここの閲覧者なら誰もがご存知のとおり、麻生が口にした通りの政策を断固として貫いて実行すれば成功することは必定だ。今、国民から見下されている福田は後に「策士」として再評価され、麻生太郎は日本を救った「英雄」として崇められるようになるかもしれない。そうなれば、野党を支持しているわたしとしては実に面白くない。自民党政権がまだまだ続いてしまう。
次の点が問題になると思う。以下の「10要件」を本当に満たすことができれば麻生は「英雄」になってしまう。
1.正しい目標の設定(規模と期間)
財政支出の規模と実施期間が適正か?財政支出を30兆円程度以上の規模に設定し、継続的に実施することができるか?
2.手続上の制限
参議院の過半数割れの状況下で、経済政策に関する予算や法案を片っ端から3分の2条項を使って断固とした強行採決をできるか?
3.組織(1)
財務省など官僚の「財政再建論」を封じ込めることができるか?増税や支出削減を拒否できるか?役人は、瑣末な手続きミスを口実に「それはできません」と妨害してくる。こういった妨害を排除できるか?
4.組織(2)
日銀の早期金利引上げを牽制し、金融と財政が協調できるか?日銀はバブル時代のトラウマから直ぐに金利を上げたがるので、これに対して有効な手段を持つか?
5.外圧への対抗(アメリカ経済と中国経済)
アメリカ政府による過度の円安誘導の圧力を拒絶できるか?財務省にマル投げせずに、日本の財務省のしている為替介入を把握してコントロールできるか?中国の経済事情や、ドルにペッグしている元の為替レートに引きずられないよう、中国経済の状況を把握して事態の変化に即応できる態勢をととのえているか?
6.弊害の除去(1)
年金暮らしや生活保護世帯などの低所得者層に対する配慮は十分か?年金や生活保護費を増額できるか?
7.弊害の除去(2)
不動産バブルの弊害を除去できるか?物価一般はそれほど高騰しないが、不動産だけはその例外。不動産バブルが発生しかねない。なお、現在の不動産業界は連鎖的倒産を迎えかねないほどの深刻な状況下にあるので、これを乗り切った後の話だが。
8.使途の適正
不正・不当な支出を抑制できるか?介護ヘルパーや派遣やフリーターなどの困っている人には予算がつかないのに、誰も使わない公民館などには多くの予算がつくという状況にならないか?マスコミに揚げ足を取られるような無駄遣いを抑制できるか?経済学的には無駄遣いでも構わないのだろうが、困っている人が沢山いるのだから、無意味なものに使われるのはやはり問題だろう。
9.有害情報の遮断
マスコミは「ばらまきはいけない」と根拠もなく非難する。一部の学者や経済評論家は、奇怪な屁理屈を組み立てて、積極財政にケチをつける。こういった「有害情報」を断固として受け付けず、大規模な財政出動の実施を貫徹できるか?
10.政治スキャンダル
政治スキャンダルによって財政出動が頓挫するか否か?もちろん不正があるから責められるのだが、大臣になった者らの政治スキャンダルを探そうとマスコミは躍起になるので、これを予防しなければならない。
以上の「10要件」が特に問題になるはず。この「10要件」に照らして今後の推移を見守って行きたい。
投稿: 麻生太郎は日本の英雄になりかねない | 2008年9月 2日 (火) 21時09分
>次期総裁は麻生さんが有力なのだろう。とな
れば、積極財政政策への転換が期待できる。
03年1月、日経NEEDSを使った小野さん
のレポートを頂きました。そのころ、たまたま
地元のケーブルテレビに一緒に出演した麻生さ
んに、レポートを直接手渡しました。読んでく
れた結果が、その後の発言であると密かに期待
しています。
投稿: 渡久地明 | 2008年9月 2日 (火) 15時14分