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2008年10月 1日 (水)

現実は左右の桎梏を超えている

  ブログ世界の碩学である喜八ログの喜八さんは、左・右の区分けについては興味がないと言っている。左一色の社会(国家)、右一色の社会(国家)、またその他のある一色に染まったイデオロギー社会(国家)というように、百パーセントある種の考え方で統一された世界は地獄だという見解である。従って、ある社会(国家)にイデオロギーが発生するとすれば、そこには右派、左派、中間派、その他のさまざまな考え方が混在しているのが一番いいあり方なのだという。その理由を喜八さんは下記のように言っているが至極明言だ。
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結局のところ、意見の違いは社会にとっては「リスク分散」となっている。それは人類が存続するための安全装置なのだ。このように強く主張したいと思います。
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 私も強く同感である。この地球に存在する多種多様な人種・国家は、その個々の差異が争いの種になっている場合が多い。もちろん戦争の原因は一筋縄では行かず、ヘゲモニー(主導権)争いや資源争奪戦、宗教戦争、その他のさまざまな要因がある。理想的には互いの差異を認め合って、同じ地球の存在空間を共有するものとして共生共存をするしかないわけだが、どういうわけか、人類は優生主義や覇権主義がまかり通っている。だからこそ、私は日本人が古来から受け継いできた、自然を崇拝し、平和を祈る、わが国の神道的共生観念が世界平和に寄与すると思っている。

 もう少し、観点を小さくして、日本国内の右と左の思想に的を絞って考えてみる。純粋な意味における右翼思想と左翼思想は、わかりやすく言うなら国家観の違いであろう。右翼は天皇を中心とした国家の伝統的連続性を重視する。一方左翼はマルクス・レーニン主義を標榜し、労働者を搾取する悪徳資本家が存在せず、国境の垣根も存在しない世界を理想とする。この二つの対極的なイデオロギーには、両翼ともに、より良い人間社会のあり方を希求するという共通の目的がある。一昔前は互いに不倶戴天の敵としていがみ合い、憎みあって衝突を繰り返していた。しかし、昨今は言論界から左翼勢力が鳴りを潜め(駆逐されたわけではなく潜在しているだけなのだが)、自称保守や右派が優勢を誇っているように見える。この状況は社会の画一化を招来し、はなはだ良くない傾向となっている。

 私のような思慮の浅い人間が言うのも気が引けるが、言論界を席巻した感じの自称保守勢力の問題点は、ずばり言って、そのアメリカ観にある。日本は大東亜戦争に敗北し、ニュールンベルグ裁判を模倣した東京裁判という、アメリカに都合のいい私設裁判で裁かれた。戦後、日本は経済復興を通じてアメリカの言いなりに進んできた。反共を唱えていたアメリカは、日本と日米同盟を締結し、当時のソ連や中国等から共産主義の進出を食い止める盾として日本を使った。刀狩り(軍隊消滅)をされ、無力になった日本は米軍を各地に駐留させ、フィリピン憲法を草案としたGHQ製日本国憲法を国是とした。戦後日本の左右イデオロギーは、反米にしろ、親米にしろ、アメリカを抜きにしては成立しなかったという経緯がある。面白いことに、そして悲しいことに、今の与党連中も野党連中も判で押したように現行日本国憲法を遵守するという方針では一致しているのだ。現行憲法の淵源を冷静にたどると、これが自生的憲法でないことは明白である。

 憲法が民族の精神性を集約する重要な国家の精神的支柱であることを考えれば、この現状は正すべきものだと思う。だからと言って私はけっして改憲論者ではない。単純に、日本人の憲法は日本人の手で作るべきだという立場である。日本は戦争に敗北し戦勝国のアメリカに価値観を押し付けられた面は否定できない。そうではなく、先祖から連綿と受け継がれているわが国固有の精神性が反映されている憲法を作るべきだと思う。それが結果的に現行憲法と大差ないものになったとしても、それは構わない。重要なことは憲法に民族自決の精神が生きているかどうかなのである。他国の思惑だけで成立した憲法に遵法精神が永遠に続くとは思われない。

 これ以上、憲法成立論に入るときりがないので左右思想の話に戻るが、小林よしのり氏などが「戦争論」を描いた辺りから、左翼撃退の気運が起こり、結果的に言論界から左派思想が消滅してしまったかのように見える。ここに深刻な問題が派生してきた。それは中曽根政権当時から顕著になってきた新自由主義が日本の政財界を支配し始めたことだった。新自由主義については、あらためて考えてみるつもりであるが、年次改革要望書の存在を世間に出した関岡英之氏はその画期的な著書「拒否できない日本」で、新自由主義開祖であるミルトン・フリードマンの思想について、イデオロギー的に言えば、それは極左急進的な無政府主義であると語っている。(P209)

 つまり、1980年ごろから為政者や財界に侵食していた考え方はネオリベ思想、すなわち極左急進的無政府主義の考え方なのである。これを市場経済的にわかりやすく言うと、日本の経済構造を市場原理至上主義に構造換えし、なるべく小さな政府を樹立して、世の中を市場経済に委ねるべきだという考え方だ。この思想は経済だけに限らず、日本人の思想構造にも徐々に強い影響を与えてきた。つまり拝金主義の台頭である。こういう思潮の流れができあがり、それが2001年からの地獄の小泉政権に結実したのだ。日本人は左右の対立軸を離れて、いつしかマモン(金銭、富だけが唯一の価値だという考え方)の神に心を奪われてしまったのだ。金銭至上主義は弱肉強食を容認する風潮を生む。

 つまり、昨今の日本は現実のネオリベ思想の台頭の裏で、いわゆる純粋な意味での左右思想の対立桎梏は無意味化されてきたのである。日本の言論界にアメリカ化がすっかり浸透してしまったということだ。アメリカという国を近代民主主義国家の理想の国であるかのような幻想が日本にあるが、それは大間違いである。アメリカこそ、フリードマンが理想とした極左急進的無政府主義国家の典型である。この話は長くなるからはしょるが、いわゆるフランス革命の理想を体現した国としてアメリカが生まれた。そう言うと、いや、アメリカが無政府主義だということはあり得ないし、かの国には上院下院議院があり、大統領は民主的に選ばれている。確固とした政府組織があるじゃないかと反論があると思う。しかし、イデオロギー的にはこの国はフランス革命以前の伝統的社会を全否定するところに建国理念を持った国家であり、民族の寄せ集め所帯に一貫した伝統性は存在しない。いわゆるアンシャン・レジームの全否定国家なのだ。アメリカはずばり言って、フェルデナンド・ラッサールが指摘した夜警国家そのものである。アメリカが有する軍事力の強大さは夜警国家の警察が肥大化した最終形なのである。従って、人類の地球共生理念から言ってこれほど脅威になる国家はない。

 ここまで言うと、保守や右派にして親米ということが、いかに自己矛盾するイデオロギーであるかということがおわかりだろう。従って、アメリカの傀儡政治を断行した小泉政権を支持する保守や右派が、いかに思想的に破綻しているかお分かりだと思う。理論的には左翼思想とネオリベ思想には無政府主義を理想とする志向性において強い親和性がある。しかし、今の日本の党派的思想においては、野党が小泉政権を弾劾していることで、奇妙な逆転現象が起きている。国民生活の立場から見て小泉政権糾弾における、もっとも正しい指摘をしているのは日本共産党である。この事実を鑑みれば、今の日本を浸襲するイデオロギーが従来の左右対立を超えたところに起きている地獄のネオリベ思想にあることは明らかだ。

 誤解なきように言っておくが、私は共産党シンパではない。皇室を殲滅する思想を持つ限り、共産党は最大の敵である。しかし、国民生活保護の観点から言う限り、共産党の指摘は正しいと思えることが多々あることは認めたいと思う。大きく眺めて共産主義の対極はアメリカではない。アメリカは夜警国家の体裁を取ってはいるが、国家の内実は極左無政府主義社会である。従って極左社会を理想とするという意味では、アメリカも共産主義の行き着く社会とほとんど同じ世界を夢見る人工国家である。ここには先祖の威徳も伝統の血も通わない無機的な世界だけがある。日本人のアメリカへの憧れは間違っている。いつの間にか、わが国にも浸透していたネオリベ思想の弊害を打ち破る有効な手立ては、伝統の良さに回帰することである。ほんの少しの具体例を上げれば、日本人特有の相互扶助感覚の復帰であり、弱者をいたわる気持ちが社会に広がることだ。草木一草、弱小動物に慈愛の眼差しを向け、自然を無神経に破壊しない感性を呼び戻すことだ。昔はごく身近に溢れていた共生感覚が日本人の特徴であった。そういう日本人の感性の基底には「もののあはれ」がある。それを大事に考える規範感覚を社会に醸成することが肝要だと思う。

 アメリカが唱える自由は欺瞞であり、その内実は無秩序と自堕落である。強いて言うなら、アメリカという国家は旧約聖書に出てくる背徳の街、ソドムとゴモラの再現国家である。人種の坩堝からくる無秩序と金銭至上主義を最高の価値に置く強欲(ごうよく)性が瀰漫した社会、それがアメリカという国である。これを睥睨し、律する唯一の方法は規範感覚ではなく、銃やミサイルに象徴される徹底した武力鎮圧である。この形態こそが夜警国家そのものだ。夜警国家とはネオリベ社会の最終形態なのである。今の日本がたどろうとしているのは、そのアメリカが歩んだ道筋である。小泉政権をただの政策政権の一種だという捉え方は危険であり、伝統ある日本のベクトルを夜警国家へ向かわせた大罪政権であるという見方を突き詰める必要がある。

 今の日本人は左右の桎梏を超えてネオリベ潮流と戦うべきである。そしてネオリベが日本から消滅した暁には、また堂々と論戦すればいい。今の状況で右派と左派が戦うことは、日本にネオリベを注入した悪質な勢力が高笑いするだけだろう。

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コメント

アメリカ(ソ連も)が、ヨーロッパの階級社会に対するアンチテーゼとして成立した人工的国家であるだけに完全自由主義の美名の下、欲望全開、行き着くところまで行って、世界中に害悪を撒き散らすのは何となく理解できるが、これに対する警世の書というのは一冊しか読んだことがない。無論、私の読書範囲が極めて狭いからであるが。
獅子文六の「自由学校」がそれで、先日、数十年ぶりに読み返してみて若い頃の自分が如何にアホであったのかを改めて思い知らされた。獅子文六のフランス仕込み(ヨーロッパ伝統主義)の健全な保守主義(人間社会には、ある程度の階級と規律がなければならないという考え)が再評価されて良い時代が来たのかもしれない。

最近、高橋博彦先生や、いかりや爆さんの影響で多少なりとも読書に親しむようになったが、硬い内容は受け付けないという劣悪な頭脳のため、小説の題名しか思いつかないのは、まことに遺憾である。死ぬまで改まることはないに違いない。

投稿: kenkensya | 2008年10月 4日 (土) 17時05分

HIROさんお早うございます。雑談日記のSOBAです。

原子力空母の横須賀母港化反対の小さなバナーをはってくれませんか。クリックすると5月22日のような火災がもし起きて→冷却機能ダウン→炉心メルトダウンのような事になり原子炉が暴走した時の被害エリアを表示する地図が拡大してポップアップします。タグは

http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2008/09/post-4.html

で紹介しました。

投稿: SOBA | 2008年10月 4日 (土) 08時43分

管理人様に全面的に賛成です。

投稿: | 2008年10月 3日 (金) 10時57分

すみません、続きです。
解釈したのですが、或いは「東アジア共同体」という共同体への委譲だったのかもしれません。どちらにしろ私には絶対受け入れることのできない考えです。
そのときのキャスターは宮崎哲哉さんでしたが、反問することもなく黙って流してしまわれたことも異常なことに感じました。

三島由紀夫が全共闘に向かって一言「天皇陛下万歳」と言ってくれたら共闘しようと言ったということを知り、私は「これだ!」と思いました。
ガチガチの天皇主義者にはおよそ理解の外でしょうが。

投稿: 一葉 | 2008年10月 3日 (金) 08時51分

私は経済のことは全く分からなくて、ただ植草さんの言われることに全幅の信頼を置いている者ですが、しかし、植草さんがななぜあそこまで小沢一郎という政治家を無垢なまでに信頼されるのかが理解できません。
今回、民主党が掲げた政策に特に異論はありませんが、最大の福祉といわれる安全保障や国家観はどうなのでしょうか。
いつだったか「朝日ニュースター」という番組で、鳩山由紀夫さんが「主権は委譲すればいい」と発言されたとき、私は一瞬自分の頭が狂ったのかと錯覚するほどの衝激を受けました。丁寧に聞いていたわけではなかったので、私は勝手に「中国への委譲」と

投稿: 一葉 | 2008年10月 3日 (金) 08時32分

下記の亀井さんの名演説は、参院ではなく、『衆院の代表質問』でした。
感動で間違ってしまいました。

結局。NHKは夜7時のニュースも9時のニュースも肝心の部分は全然放送しませんでした。

NHKに抗議します。 

投稿: デカルト | 2008年10月 2日 (木) 21時29分

本日(10月2日)3時半過ぎ、参院での国民新党の亀井久興氏の質問は素晴らしいものでした。 
小泉竹中の悪政を厳しく問い詰めていました。

もし、明日の朝刊に亀井氏の質問が載っていなかったら、皆で抗議しましょう!

余り感動したので、投稿していまいました。
植草さん、テレビ見たかな?

投稿: デカルト | 2008年10月 2日 (木) 16時35分

「碩学」という表現はトンデモナイですね(大汗)。
いいトシをして無知無教養な私です。
最近は高橋さんの影響を受けて経済学を勉強しなおそうと思っています(いちおう経済学科の出身です)。

投稿: 喜八 | 2008年10月 1日 (水) 22時13分

高橋さん、こんばんは。
弊ブログ記事を紹介いただきまして、ありがとうございます。

> 今の日本人は左右の桎梏を超えてネオリベ潮流と戦うべきである。そしてネオリベが日本から消滅した暁には、また堂々と論戦すればいい。今の状況で右派と左派が戦うことは、日本にネオリベを注入した悪質な勢力が高笑いするだけだろう。

まったく、その通りだと思います。
むやみに左右に拘泥している人の中には「日本にネオリベを注入した悪質な勢力」の手先も混じっているでしょうね。
そういった亡国勢力には断固たる対応をしなければならないと思っています。
(断固としてスルーすることが多いのですが 笑)

お互い祖国日本をよりよい国にするため、負けずに戦い抜きましょう!

投稿: 喜八 | 2008年10月 1日 (水) 21時51分

私も左右のイデオロギーによる対立は今の日本では全く無意味だと思いますね。
かつての学生運動みたいなもんです。
反新自由主義、反売国改革でまとまれば良いんですよ。
他の違いは今は無視して良い時期なんです。
国家衰退、民族滅亡の危機に際してそんなのは些細な事なんです。
本当の敵は何なのかそれを見極めて一致団結する事こそ必要です。
敵は極めて巧妙で我々を対立させるように持って行きます。
味方面してる事も多いです。
小泉が右翼・愛国者を装ってたように。
一番簡単に見破る方法は今のマスメディアを信用しない事です。
プラザ合意以降、マスメディアは日本人の敵となってると言う事を認識しましょう。
バブル期にはバブルを煽り、その後は潰せの大合唱、挙句に公的資金による救済はまかりならんですからね。
もはや彼らの論調や彼らが推す人物は全て疑って掛かるべきでしょう。
メディア=反日工作機関と心得ればおのずと答えが出るはずです。
マスコミが批判しない政治家や省庁、企業は怪しいと見るべきでしょうね。

投稿: ななし | 2008年10月 1日 (水) 18時30分

とても解り易い解説ですね。日本が日本人らしく日本人として世界と融合していける日本社会とは、どんな形になるんでしょうね。人間の性質は宇宙と同じで千差万別在り難しい問題です。

投稿: Y | 2008年10月 1日 (水) 15時13分

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天木直人さんも下記エントリーで以下のように書かれています。 2008年09月26日 これからの日本政治の本当の課題ー政治における平和勢力の衰退 http://www.amakiblog.com/archives/2008/09/26/#001158 小泉元首相の引退のニュースが駆け巡った25日、米原子力空母ジョージ・ワシントンが横須賀の米海軍基地に入港した。  原子力事故や汚染だけが問題ではない。世界を攻撃する血塗られた米国の巨大な戦力の日本常駐が平然と始まったということである。  明らかな憲法9条... [続きを読む]

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