大不況克服へ巨額財政出動をせよ。債務増を心配する時でない クルーグマン(小野盛司)
(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第138弾です)
11月17日の朝日新聞に今年ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマンの主張が出た。以下、彼の主張の一部を引用する。
「大不況克服へ巨額財政出動をせよ。債務増を心配する時でない」
金融政策が影響力を失い、財政政策しか残っていないというのは、「不思議の国のアリス」の世界だ。この世界では、貯蓄を高めることが悪いことで、健全な財政も悪いこと。逆に完全にムダな政府支出が善いこと。「あべこべの世界」だ。
ここは長くいたくない。「奇妙な経済学」を永遠に続けたくない。しかし我々は今ここにいるのだ。
かねてから、財政出動に反対していた朝日新聞がこれを取り上げたことを我々は注目したい。やっと分かってきたのか。我々は平成20年10月24日に提出した質問主意書で麻生総理に対し次のような質問をした。
今年ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマンは、『グローバル経済を動かす愚かな人々』の中で日本経済に関して「まずは需要を増やすことである。そのためには信用拡大のための通貨供給の大幅増大だけでなく、公共事業の拡大、減税の実施などが肝要である。」と述べている。これについてどのように考えるか。
これに対し、平成20年11月4日に麻生総理からの答弁書(内閣衆質170第159号)が届いた。それによると
ご指摘の見解は、我が国経済が、バブル経済の崩壊により、極めて厳しい不況を経験し、ある時期には危機的な様相さえ呈していた平成10年当時において、極度の消費や投資の手控えから需要不足に陥っているという認識の下、通貨供給量の増加等の対応策について述べられたものと認識している。
だそうだ。「でも麻生さん、それっておかしくないですか。あなたは、今の経済危機が100年に一度と言ったはず。ということは10年前より今の方が悪いということでしょう」という内容で、質問主意書を書いておいた。それに対する答弁書では、10年前を今とでどちらが悪いとは一概に言えないと答えた。だったら、クルーグマンの言ったことが今に通用しないというのはおかしい。
100年に一度の経済危機と言いながら、どうも麻生氏には危機感が無い。3年後には消費税を上げるという発言も危機感の欠如が感じられる。麻生氏には是非11月18日の日経の大機小機を読んでいただきたい。キーポイントだけを以下に引用しよう。
1929年のクラッシュ時の大統領はフーバーだが、なすすべを知らず、不況の深化を傍観して任期を終えた。33年にフランクリン・ルーズベルトが大統領に就任してやっと「ニューディール政策」が動き出す。
フーバー大統領は健全財政こそが最良の策だとずっと信じ込んでいた。大恐慌への経済学の処方せん(ケインズ「雇用・利子・貨幣の一般理論」)が出たのは36年になってだが、すでに日本やドイツは戦時体制に走り始めていた。
ルーズベルト大統領が就任演説で語った次の言葉は今もあてはまる。「われわれが恐れるべき唯一のことは、恐怖それ自体だ」
今、日本が景気回復をするために最も重要なことは、日本国民に心配しなくてもよい、日本経済は大丈夫だという強いメッセージを送ることだ。お金がなければ刷ればよいのだから、口が裂けても増税を口にすべきでない。増税を提案するのは、名目成長率が他の先進国並の5%を超えたときだ。現実に戻ると、日本の名目GDPは1997年には513兆円であったが、2007年度は515兆円だ。10年間の平均成長率は僅か0.04%。低成長の世界記録としてギネスブックに申請したらどうだろう。2008年度は大幅マイナス成長だから、11年間の平均成長率はマイナスとなって低成長の世界記録を更新するだろう。
この最悪の経済から抜け出す唯一の方法は、クルーグマンが言っているように巨額財政出動だ。日経新聞も風向きが変わったのだろうか。11月17日に「日本は内需拡大を」という見出しでコロンビア大学のヒュー・パトリック氏のインタビュー記事を載せている。
日本は具体的に何をすべきかという問いに対し「公共投資の増額や減税を通じて、消費者の消費意欲を回復させるのが先決だ。もちろん時限的な措置だ。財政再建は重要だが、20年程度の時間をかけて取り組むべき課題だ。いまは経済の底上げ策を優先する時期だ。政府債務に対する過度な心配は不要だ。」
読売新聞も11月15日にポール・サミュエルソンの財政出動をせよというアピールを載せている。
景気対策で最も重要なことは、その対策が名目GDPをどれだけ押し上げるかを正確に予測し、日本の名目成長率を適正レベルまで引き上げることができるような規模で景気対策をすることだ。
麻生総理は、3年後に消費税増税と言った。景気回復という条件付きだったが、我々は、その条件を数字で示せよと質問主意書で要求した。答弁書には直接その数字を明言しなかったが、首相官邸で記者団の前でその条件は「成長率2~3%が続いた」状態だと言った。ということは、名目GDPが毎年10兆円~15兆円増えるようになったらという条件だ。現在のような政策でそのような成長はとても無理だということは上図で分かる。世界経済が30年で最も良い状態と言われ、大変な追い風が吹いていた小泉政権時代ですらそれを達成できなかった。現在金融危機の暴風雨から立ち向かうにはどれだけの財政出動が必要かを麻生氏はきちんと計算しようとしない。野村総研の試算も参考にすればよい。この逆風を打ち消すためだけで、第二次補正の3倍くらいの財政出動が必要なのだ。与謝野氏も言ってる。今年も来年もマイナス成長だと。情けない。プラス成長に、いや2~3%成長にするんだ。そのために○○兆円の財政出動をやれば、それが実現するんだと国民にアピールすればよいではないか。政府が自分で落ち込んでばかりでどうする。
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コメント
ニューディール政策が大恐慌を深刻化・悪化させたという事実を知らないのか?
投稿: 植草同期 | 2009年2月28日 (土) 23時22分
財政出動もさることながら、日銀の時代錯誤の金融政策が円高を誘発し、株安と実態経済の悪化を招いていることが、最大の問題ではないか?
日銀は、国際社会と協調して、一刻も早く金融緩和に舵をきるべき。
投稿: | 2008年11月23日 (日) 11時50分