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2008年11月 9日 (日)

麻生政権の運命(小野盛司)

(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第133弾です)

 衆議院選挙は暫くなさそうだから、少なくともその間は麻生政権は続きそうだ。しかし、この政権は前途多難であるのは誰の目からも明らかだ。第一、参議院では野党に過半数を取られているから、いつ問責決議案が出てくるかもしれないし、法案審議で、参議院で強い抵抗に遭えば解散に追い込まれるかもしれない。

 それ以上に大きな問題は景気の動向だ。麻生総理自身が認めているように金融危機で経済は100年に一度の暴風雨の中にある。株安・円高・海外の景気後退の影響が出てくるのはこれからだ。もし、麻生政権が経済政策を誤れば、国民の不満が爆発し、麻生政権は惨めな最期を迎えるだろう。アメリカはオバマ政権が誕生した。オバマ氏は公共事業による追加経済対策を主張している。かつてのルーズベルト大統領のニューディール政策のような大型財政出動になる可能性がある。アメリカには計量経済学の権威が政策を助けている。

 麻生総理は10月30日の記者会見で、事業規模27兆円の新総合経済対策を発表した。2兆円の定額減税が核となっている。果たしてこれで景気は回復するのだろうか。10月31日の朝日新聞に野村證券金融経済研究所による試算が載っている。それによると、5兆円の財政支出によるGDP押し上げ効果は計0.5%程度。一方、金融危機が深刻化した9月以降の円高と株安、世界経済の悪化は計1.4%もの押し下げ要因になる。ということは、この経済対策では景気を良くするどころか、景気悪化さえも不可能ということになる。

 ちなみに、この経済対策は1998年11月の小渕内閣による27兆円の景気対策に対抗して出されたようだ。しかし、中身は全然力強さに欠く。小渕内閣の景気対策のときは、政府による経済効果の試算が発表され、それによると名目GDPの押し上げ効果は2.5%、実質GDPの押し上げ効果は2.3%だから、麻生政権の景気対策の経済効果ははるかにインパクトが小さいと分かるだろう。小渕政権の景気対策は公共投資8.1兆円が含まれていたが、麻生政権の景気対策は減税や高速料金引き下げ等が中心となっている。額が同じなら、GDP押し上げ効果は公共投資の場合は所得税減税の4.1倍というのが内閣府の見解だ。小渕氏の景気対策は減税も9.4兆円という巨額だった。

 麻生氏の景気対策は減税額も定額減税と住宅ローン減税を合わせても3.2兆円しかなく、小渕氏とときの3分の1にすぎない。麻生内閣が、この景気対策を大きく見せたのは、中小企業の資金繰り支援である。信用保証協会を通じて金融機関への返済を保証する公的保証枠を、20兆円としたことである。これが本当に中小企業への融資を増やすかどうかわからない。それに、このように景気が悪いときに潰れそうな会社に対し、一時しのぎで、どんどん融資を増やしていると、更に景気が落ち込んだときに返済不能となり、倒産する会社が続出する。経済苦で自殺する人を大量につくりだす景気対策になっているのではないか。借りたお金ともらったお金では、威力が全然違うことも明らかだ。

 住宅ローン減税も危なっかしい。住宅を購入すれば減税があると言われ、無理なローンをして家を買っても、景気が悪くなれば、ローンが払えなくなる人が続出する。サブプライムローンの問題と同じだ。余り褒められた政策ではない。

 結局、麻生氏の景気対策は力不足で景気悪化を止めることもできず、景気は悪くなる一方という結果になる恐れがある。そうすれば、マスコミは言うだろう。やはり景気対策は効果がない。確かに0.5%の押し上げ効果は、無いよりずっとよい。しかし、金融危機で1.4%も景気悪化圧力があり、差し引きマイナス0.9%の成長ということになる。「効かない」となると、景気対策は二度とやれなくなるかもしれない。そうなると、日本経済は惨憺たる状況になる。世界は景気回復のため赤字国債を発行して景気下支えをし、それが成功する中、日本だけはデフレがずっと続くことになる。これが最悪のシナリオだ。世界大恐慌でのいち早く景気対策を行った日本が最速で景気回復した。景気対策が遅れたイギリスなどは、回復が遅れた。

 では、最良の選択は何だろう。もちろん、お金を刷って経済的に強い日本を復活させることだ。「環境エネルギー革命」を柱に強力に政策遂行したらよい。直接の財政支出だけで最低20兆円は出したい。エネルギー自給率を向上させ、CO2排出量を減らすという目標であれば、国民も納得するだろう。残念ながら、現在の日本政府は財政難を理由に自然エネルギー利用促進に対して極めて後ろ向きだ。世界がどんどん利用促進をしている中、日本だけが立ち止まっている観がある。

 風力発電に限れば、世界全体での発電量は1億キロワット(100GW)で、原発に換算して100基分である(つまり原発は1基約1GW)。2007年末にはドイツは22.2GWで、日本は僅か1.53GWしかなく、世界13位にまで落ちた。中国は内モンゴル地域に10GWの風力発電所を計画しているそう。この計画だけで、日本の全風力発電量の7倍だ。原発10基分もの電力をどうするかだが、ここに工業地帯をつくればよいと考えているそうだ。遠方まで電線で電力を運ぶと電気抵抗でロスが大きい。電気分解して水素に変え、水素として運んでもやはりロスが多いそう。超伝導で電気抵抗をゼロにして運ぶほうが現実的だという。

 タダの風を資源として利用する。素晴らしいアイディアだ。定額減税で一人1万2千円もらってもそれほど嬉しくもないが、このような夢のあるビッグプロジェクトを政府が計画していると、頑張って生きていれば将来よくなってくると国民は感じるものだ。日本政府にも是非、夢を語って欲しい。成長通貨を実体経済に流さねば経済は大きくならない。市中にお金を流すには、財政赤字を拡大すればよいのだ。政府の財政赤字は国民の側から見れば黒字だ。これはゼロサムゲームだから。

 本日(11月8日)の日経の17面を読んで頂きたい。米国の膨大な経常赤字の事について書いてある。世界経済が拡大するには成長通貨であるドルがどんどん増えなければならない。ドルを刷れるのはアメリカだけだ。つまり、アメリカの経常赤字で世界経済は拡大する。返す必要がないドルをどんどん刷れば、世界経済の発展に貢献できる。ドルが基軸通貨である限りこのようなことになる。日本も同じ。お金を刷ることにより、国の財政赤字が増えれば、お金が市中に流れ、日本経済が拡大する。将来につけを残すなんて大嘘だ。

小野盛司氏の日本経済復活シリーズ・インデックス

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コメント

JAXVNさん、こんにちは。

 よくぞ書いてくれました。おっしゃること、完
全に同意です。本記事でも考察してみたいと思い
ます。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2008年11月 9日 (日) 14時47分

ななしさんへ

 おっしゃるとおりです。自公も民主も新自由主
義の迷妄にまだ酔いどれています。今の状況は小
渕政権の財政出動規模にしてもほとんど効果がな
いと思われるのに、このスズメの涙では、逆に積
極財政が効果がないと不当な判断を恒久的に国民
に植えつけてしまいかねません。

 まったく八方塞ですね。

投稿: 高橋博彦(管理人) | 2008年11月 9日 (日) 14時44分

こんにちは。
小渕政権の経済対策についてさえ、「支出のわりに効果は無く、借金を増やすだけだった」という人がいるくらいですから、麻生政権の経済対策はさらにそう言われる可能性が高いです。そうなれば、小野会長が危惧されるとおり日本で積極財政政策が行われる事はなくなってしまい、それこそ中国の属国にさえなりかねない事になってしまいます。しかし、そもそもこれらの点はほとんどが「メディアのミスリード」による物です。小渕政権の経済政策については、平均株価2万円回復など少し景気が上向いた所で積極財政を中立財政に方向転換してしまった事、麻生政権の経済政策については規模が小さすぎる事と、消費税増税をセットで打ち出す等アクセルとブレーキを同時に踏むような事をしている事が問題なのです。さらに似たようなミスリードは小泉政権に対しても行っています。植草氏もすでにご指摘になっている事ですが「小泉政権は財政支出を行わず、構造改革で景気を回復させた」というのは全くの誤りで、実際は補正予算で財政支出を行って景気をかろうじて下支えしていたに過ぎないのです。そうなると、日本復活に必要な事は経済についても歴史認識等についても、まず「言論の自由を取り戻す事」にあるのではないでしょうか。その点からも、今週行われる田母神前航空幕僚長の国会参考人招致に注目しています。私は、田母神氏の真意は「日本はいつまでも米国に頼らず、自主防衛を目指すべきだ」という点にあると思っています。その事をはっきりおっしゃっていただける事を期待しています。
蛇足
オバマ次期米国大統領についてですが、「得票率以上の圧勝劇」「やたら『CHANGE』(=改革)を連呼」「具体策は乏しい」等、なにやら小泉政権との共通点が多い事が気になります。オバマ政権が「偽装CHANGE政権」である可能性も考えておく必要はあるように思います。

投稿: JAXVN | 2008年11月 9日 (日) 09時41分

マスコミはこの期に及んで未だにばら撒きと称して叩いてますからね。
与党内部、特に新自由主義的な清和会あたりは小渕級の景気対策やる事に反対してるでしょうし。
その辺は米共和党と一緒ですね。
麻生氏個人、あるいは非清和会系、特に旧経世会系の議員はもっと大型の予算を組むべきだと思ってるんじゃないでしょうか。
それをメディアや清和会が許さないと言う構図だと思われます。
彼を担いだのも森氏ですしね。
自民も民主も未だに新自由主義の迷妄から覚めて無いんでしょう。
日経を始めとするメディアもそうだと思います。

投稿: ななし | 2008年11月 9日 (日) 09時25分

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