クルーグマンと与謝野大臣の対談を歪曲して伝えたマスコミ(小野盛司)
(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第169弾です)
前回、グルーグマンと与謝野大臣との対談を解説した。あのような形でクルーグマンが登場すれば、それなりのインパクトがあるのではないかと期待したが、残念ながらインパクトはそれほど大きくなかった。その理由は、景気対策は国のお金の無駄遣いと決めつけるマスコミの偏向からくるものだ。
クルーグマンは2度も繰り返し言っていることは、日本の景気対策は方向は正しいが規模が不十分で、もっと積極的にやれということだ。驚いたことに、マスコミはこれには全く触れず、「定額給付金は0点」というところをやたらに強調していた。そのような報道だと、あたかも日本の景気対策はやるべきではないとクルーグマンが言ったような印象を受けてしまう。日本経済はどうなってもよいから、ともかく緊縮財政に戻るべきだというマスコミの冷血非情な連中が、わざとそのような印象を与えるために事実を曲げて報道したかと思わせるような報道であった。
思い出していただきたい。11月17日の朝日新聞にクルーグマンの主張が出た。以下、彼の主張の一部を引用する。要するに、景気が十分回復するまで巨額のお金を刷って国民に渡せという主張だ。
「大不況克服へ巨額財政出動をせよ。債務増を心配する時でない」
金融政策が影響力を失い、財政政策しか残っていないというのは、「不思議の国のアリス」の世界だ。この世界では、貯蓄を高めることが悪いことで、健全な財政も悪いこと。逆に完全にムダな政府支出が善いこと。「あべこべの世界」だ。
ここは長くいたくない。「奇妙な経済学」を永遠に続けたくない。しかし我々は今ここにいるのだ。
残念ながら、彼の発言は日本人には十分伝わらなかった。その理由に一つには語学の障壁もあるし、マスコミが彼の言っていることを理解しようとせず、大きく歪めて報道していることもある。今のような経済政策を続けていれば、病院に入院中の日本経済が退院できるのは5年先になるかもしれないし、10年先になるかもしれないとクルーグマンは警告した。それなのに「アナウンサーは景気回復は5年先か10年先か分からない。クルーグマンでさえ分からない難しい問題だと」歪めて解説をした。
国民が政府への不満を持つ背景には、現在の生活の不安があるだろう。政権交代さえあれば、経済がよくなると考える国民が増えても不思議ではない。そうであれば、与野党で一体政策の違いは何かをしっかり議論していただきたい。本日(5月30日)の日経の2面に与党と民主党の政策の違いが比較してある。違いというより、よく似ているということが書いてある。
①省エネ家電の購入への補助
②環境対応自動車購入への補助
③失業者支援で月10~12万円(これは数字まで同じ)
④子育てへの補助⑤高速料金値下げ
など、そっくりだ。民主党は自民党が民主党案をマネしたと非難する。しかし、これは自民党が一刻も早く景気対策を行って経済危機を乗り越えようと、民主党案を丸呑みして早期成立を目指したということではないだろうか。与野党案が同じであるなら、合意できるものだけでも、早期に成立させて実行すべきであった。与野党の駆け引きのお陰で国民はひどい目に遭っている。
次のグラフにあるように2007年7月には3.6%だった完全失業率は5%を超えた。
一旦失業すると、次の職を探すのは大変だ。正社員の有効求人倍率は僅か0.27%だという。政権争いのとばっちりを受けて国民はひどい目に遭っているということが分かっているのだろうか。
先日の党首討論で麻生さんの「国民が最も知りたがっているのは西松問題だ」という発言が、マスコミで繰り返し流された。ここだけ取り出すと非常に違和感のある発言いになる。我々が知りたいのは、与野党でどこが違うのかということだ。やはり最も違うのは、財源だろう。与党は主として景気対策は国債発行を考える。これは事実上お金を刷って国民に渡すということであり、我々は支持している。民主党案では、公務員の給料や公共投資などを削って捻出するということであり、そうであれば削った時点でGDPへはマイナスの効果が生まれ、使ったらプラスになり、「国民にお金を渡す」という観点からすれば、一部の国民から取り上げ、一部の国民に渡すということだ。これは景気対策とは言わないのではないか。その点をしっかり分かる形で次回の党首討論はお願いしたい。
このような100年に一度の経済危機においては、十分なお金を刷って国民に渡すしか経済危機を回避する方法はないことを、民主党も理解してもらいたいものだ。
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コメント
JAXVNさん
>日本経済の復活を一番嫌っているのは、日本の
>マスメディアなのではないでしょうか。
そう思える節が多々ありますね。メディアは妙
に積極財政論に忌避感情を持っていますね。通常
はアメリカがそれを採用した時点で、何の考えも
なく日本もやれやれと言うところなんでしょう
が、不思議なことに積極財政発動に関しては、実
に否定的なんですね。何か理由がありますね。
投稿: 高橋博彦(管理人) | 2009年5月31日 (日) 15時44分
ななしさん
>財源に関しては私は従来の日本に戻せばイイだ
>けだと思いますね。法人税と所得税の最高税率
>を引き上げて国民に再分配する形がイイと思い
>ます
私もそう思いますね。従来の累進課税に戻すこ
とではないでしょうか。大企業を税制優遇しても、
その余剰が国民に再分配されないことがすでには
っきりとしていますからね。
>出て行きたい企業、個人は出て行けば良いんです。
そうなんですね。社会の構成要素としての企業
であれば、社会的責任は負うべきです。具体的に
は下請けや子会社をきちんと養って、社会機能が
健全化する役割を担うことです。ところが、ネオ
リベ企業は溜め込むばかりで、下請けや子会社を
搾取していますね。再分配は壊れるし、企業サイ
ドでは搾取原理が横行するから、そういうことを
是正し規制したほうが、全体としては健全化する
と思いますね。
投稿: 高橋博彦(管理人) | 2009年5月31日 (日) 15時39分
こんにちは。
「ノーベル賞・クルーグマン教授が日本の経済対策を嘲笑
ノーベル賞経済学者が定額給付金を一蹴だ。米プリンストン大教授のクルーグマン氏が与謝野馨財務・経財相と対談し、政府の2兆円の定額給付金について「米国など他国ではほとんど貯金に回り、使われていない。なぜ日本が実施するのか理解できない。0点だ」と酷評していたことが分かった。
フジテレビの報道番組が24日に放映した。日本経済の先行きについても、与謝野氏が「来年春にはプラス成長になっていると思う」と説明したのに対し、クルーグマン氏は「最悪の状況を脱したと思うが、いつ退院できるかは分からない。5年、10年先かもしれない」とヤンワリ否定。省エネ家電への買い替えを優遇するエコポイント制度についても「ポイントが何に使えるか分からないのに、ポイントが与えられる理由がよくわからない」と切り捨てた。
(日刊ゲンダイ2009年5月25日掲載)」
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/gendai-02041312/1.htm
メディアは「クルーグマン教授が日本政府の経済政策を批判した」とは伝えても、一体経済政策のどこを批判したのかは伝えません。クルーグマン教授は経済対策が「小さすぎ、遅すぎる事」こそを批判しておられるのですが。前ブッシュ政権の政策についても、オバマ政権の政策についても「これでもまだ小さい」事が問題なのだという事もはっきり言っておられたはずです。日本経済の復活を一番嫌っているのは、日本のマスメディアなのではないでしょうか。
投稿: JAXVN | 2009年5月31日 (日) 15時18分
ある樵が山林地主に一万円をはらって木を切り出し、二万円で材木屋に売った。それを家具職人が三万円で買い、テーブルを作って四万円で売りに出した。各人の収入はそれぞれ一万円で、四人の収入の総計は四万円である。左側には四万円の収入があり、右側には四万円の商品がある。
もし樵の取り分が五千円であれば三万五千円の総収入に対して三万五千円の商品になり、材木屋が自分の収入を一万五千円にすれば四万五千円の総収入が四万五千円の総商品に対することになる。さらに一人の商人が現れてそのテーブルを買い五万円で売るとしても同じで一方に五万円の総収入があり反対側には五万円の商品がある。総収入の額と総商品の額は常に等しい。この二つは違うことができない。だから収入のすべてが支出されればすべての商品が売り切れる。
このとき、収入の一部が支出されずに貯蓄に回されるとするとその分の商品が売れ残ることになり、その商品が売れればもたらされるはずの収入が実現しないことになる。そこに発生する貧困の量は貯蓄の量と等しい。使われずに残った貯蓄は世界の反対側に自分と等しい量の貧困を生み出す。
加賀百万石の国で百万石のすべてが消費に回されれば百万人が生きることができる。十万石が貯蓄に回されれば十万人が餓死する。十万人の餓死を防ぐには溜め込まれた十万石を没収して貧民に配ればよい。
貯蓄が残るということは、それがなくても生活が維持できるということなのだから、それを没収して貧民に配れば貧困を解決することができる。
現物のコメが溜め込まれてしまったら力まかせで放出させるしかないが、カネが溜め込まれている場合にはいくつか方法がある。木の葉っぱに「かね」とスタンプを押して貧民に配ることもできる。または、没収するのはカドが立つというのなら公営の銀行に預金を集め、その金を国づくりのためとかいう名目でバラまけばいい。これが要するに郵貯による公共事業だ。しかしこの、「郵貯による公共事業」という偉大な循環ポンプの一つが今機能を停止されようとしている。日本経済の急所が突かれたのだ。
先日中国商工銀行が預金額150兆円の世界一の銀行になったという記事を読んだように思いますが、この150兆円は中国人が預金したものなのだから逆から見ればこの銀行は中国人からいつかは返さなければならない150兆円の借金をしていることになる。
「大変だ、うちは世界一の借金王になってしまった。すぐ返すんだ…。」と、この銀行の頭取?が行員を集めて檄を飛ばしたとしたら、かえっておかしくはないですか。特に定期預金に目をつけて
「ほら、期限付きじゃないか」などとパニックになったとしたら。
国債は定期預金と同じではないでしょうか。
投稿: shn | 2009年5月31日 (日) 10時43分
民間エコノミストによる4-6月期のGDPの成長予測値がプラスに転じたそうですが、これをマスゴミやご用学者はどう評価するんでしょうかね~。
明かに財政・金融政策が効いたとしか思えませんが。
清和会にしろ当初は予算案を額が少ないだの遅いだの麻生氏を非難してたんですがね~。
それにしても野党は補正案をさっさと成立させるつもりは無いんでしょうかね。
国民の生活が第一って言うのは嘘っぱちなんでしょうか。
財源に関しては私は従来の日本に戻せばイイだけだと思いますね。
法人税と所得税の最高税率を引き上げて国民に再分配する形がイイと思います。
84年度以前の税制ですね。
出て行きたい企業、個人は出て行けば良いんです。
そんな愛国心の無い企業、個人はこっちから願い下げですから。
そうすれば日本もちっとは良くなるでしょう。
投稿: ななし | 2009年5月31日 (日) 09時58分