植草さんの国策捜査事件を生んだ小泉政権の政治土壌
2009年6月27日、10時40分のMSN産経ニュース「植草被告の実刑確定へ」には、記事の下部に小沢一郎氏と植草さんのツーショット写真が不自然に置かれている。その写真をクリックして拡大して見ると、写真の下に「新進気鋭のエコノミストとして活躍していたころの植草一秀被告(右)と、対談する小沢一郎氏(芹沢伸生撮影)【撮影日:2001年12月21日】」という説明文があるだけだった。
つまりMSN産経ニュースは、植草さんが実刑確定になったという本記事に、このツーショット写真が置かれた文脈をまったく説明していないのだ。これが、来るべき総選挙を想定した、民主党に対するブラックPRでなくて何だろうか。植草さんが実刑確定されたというネガティブ・イメージをそのまま使って、民主党の小沢一郎氏は有罪になったエコノミストの植草氏と対談しているんだぞという、ネガティブ・キャンペーンである。それに本文に掲載されている、目を剥いた植草さん自身の写真にも産経側の悪意が感じられる。私もそうだが、植草さんに直接会った人は、彼がいつも穏やかで上品な表情をした人物であることを知っている。
しかし、フジサンケイグループが取ったこの手法は、逆効果に出ているように思う。ネガティブ・キャンペーンの目的だったとしても、本文記事との何の内容的脈絡も説明もせずに、この写真を付加する構図は異様であり、見ている人は何かの印象操作だと思うだろう。この構図を考えて実行した者は、その不自然さに気付いておらず、稚拙な政治的意図を読者に気付かせるだけだということがわかっていないようだ。この配置自体が強く政治性を思わせるが、植草さんの実刑確定が、逆に政治的謀略だと思わせる、一つの傍証になっているとは思わなかっただろうか。
○国策捜査という言葉は四年の間に市民権を得た
私は、植草事件(2006年9月13日)の翌日に、2004年の植草事件も今回も、政治的謀略、すなわち国策捜査の疑いがきわめて濃いと書いているが、今から後二ヵ月半で、それを書いた時期から満三年になる。当時は佐藤優氏が「国家の罠」で説明していた「国策捜査」と言う言葉が、世間的にはほとんど浸透していなかったこともあり、私が唱えていた植草事件国策捜査説も、荒唐無稽な説だと思われていたきらいがあった。
三年前は政府関係者や政治家は誰もこの言葉を公の場で使っていなかったのだ。つまり、国策捜査という言葉は、あたかもユダヤ陰謀論のようなイメージで捉えられていたものと思われる。ところが、最近は小沢一郎氏の公設秘書が西松建設の献金問題で逮捕された件では、肯定、否定の立場の違いは別にして、この国策捜査という言葉が頻繁に政治家や評論家の口に上り、ごく日常的な語句のように使用されていた。それだけ、この三、四年で国策捜査という言葉は世間に流布し、市民権を得たと言っていい。
しかし、この言葉を知る多くの国民が、その正確な意味を正しく把握しているかとなれば、それは疑問である。この言葉の出所(でどころ)である佐藤優氏の「国家の罠」では、佐藤氏が国策捜査について重要な定義づけを行っている。それは、国家が時代のけじめをつけるために、前の時代を象徴する事件を作り出して断罪することだというのである。つまり、前の時代を象徴する人物を人身御供にして、時代は既に新しい方向へ舵を切り替えたんだよというアピールを人々に印象付けることだという風にとらえてもいいだろう。
大方の意見は国策捜査を、今までの政治謀略事件と同義に解釈しているような気がする。たしかに政治的陰謀という意味では、まったく同じ意味合いがあるが、国策捜査に「国策」が付いている理由は決定的だ。それは時代を決定する現今の国策トレンドを認めない、旧時代の国策を擁護し主張する有識者の象徴的血祭りである。ここに決定的な政府側の詐術がある。それは、現在の国策が進歩的で良いものであり、これに反対するものは前時代的で旧弊にしがみついた者という強引な二分論を設定することだ。
これは小泉純一郎氏や竹中平蔵氏が常套的に吐いていた「抵抗勢力」という言葉に端的に表れていた。現今の構造改革や民営化に賛成しない者は旧時代にしがみつく悪辣な抵抗勢力であり、時代を害するマイナス要因以外の何物でもないという一方的な決め付けである。つまり彼らが推進した「聖域なき構造改革」が如何に胡散臭いものであったかが、よくわかる。
抵抗勢力という言い方そのものに、彼らが設定したインチキで傲慢な単線的な進歩史観が見えてくる。アメリカ型市場原理こそが、唯一の正しい進歩であり、それ以外の考え方は進歩を阻む間違った抵抗勢力だという暴力的な決め付けである。彼らが進歩だと称したものの正体は、無茶苦茶な規制緩和によるセーフティネットの大破壊だった。すなわちグローバル資本主義こそ最高の経済価値だという、カルトに近い妄信状態にあったのである。すなわち新自由主義の迷妄に嵌っていたのである。
私は小泉政権を深いレベルで総括する必要があると言った。それはこの政権が、それまでの政権と比べて、何が本質的に変化したのか、何が一線を画しているのかを、社会学的に、政治学的に、経済学的に、日本の戦後史的に解明する必要があるということである。なぜなら、小泉政権の国策の性格をきちんと見究めなければ、傷ついた日本社会を修復できないからだ。今の国策トレンドのままで格差社会の是正や予算の配分、その他の行政的方法論を駆使しても、基本的な国策を切り替えない限り、何の解決にもならないからだ。
ネオリベ体制を保持したまま、どのような小手先の手当てを施しても、何の救済にもならない。方法論のベーシックは日本人の民族性に合致した政治経済の展望を取り戻すことにある。だいたいが、ワシントン・コンセンサスやハーバード・シンジケートの社会学を踏襲し続けている今の路線では、日本は衰亡一直線である。毀損された日本社会を建てなおすには、当面は小泉・竹中構造改革路線の逆ベクトルを志向する以外にないと思う。
健全な市場競争は必要だと思うが、それは国民生活のセーフティ・ネットの構築を優先した上で行うべきである。小泉政治はその真逆をやって国民生活を破壊してしまった。考え方として、ケインズかネオリベかという二元論的思考よりも、日本人の性向に合った「経世済民」的な経済機構を作るべきだと思う。それにはアメリカの経済戦略に負けない知恵を集結するしかない。
小泉政権を学究的にとらえて分析できる有識者は多くいるかもしれないが、植草一秀さんはその第一人者だろう。小泉政権の負の性格を知れば知るほど、それは将来の日本の刷新に役立つと思うからだ。問題は小泉構造改革は悪くはなかったが、行き過ぎた部分が人々を苦しめているなどと、寝ぼけたことを言っている学者や為政者は、完全に無能者であり有害である。
○日本の伝統文化を踏みにじった小泉政権の国策
その理由は、日本の伝統や文化、日本式ゲマインシャフトなど、それまで戦後日本が築いてきた良い物を、アメリカの言うがままに破壊しつくしたのが小泉政治の実態であることを充分に認識する必要があると考えるからだ。その国のマーケット形態は、その国固有の構造を持っているのが当たり前であり、そうであるからこそ、有効に機能すると思う。
アメリカは日本固有のマーケット形態を指して、不透明で閉鎖的だと、ヤクザのような難癖を付け、無理やり、グローバル資本主義に合致する形態に切り替えさせた。それは金融侵略の舞台を整える目的があったからだ。それに抵抗しなかったのは、日本人が反省する必要がある。アメリカが日本の国益を考えて内政干渉をやるはずがない。
小泉政権時代の国策は日本人を不幸にする隷属国策であったことを、肝に銘じる必要がある。植草さんへの二度の国策捜査がなぜ生じたかについて、深くそれを分析することはつとに有益であり、そこに日本の再出発のヒントが多くあると思っている。
← この記事に興味を持たれた方はクリックお願いします!!
神州の泉による「植草事件」関連記事
| 固定リンク









コメント
写真確かにおかしい
友人が、全く身に覚えのないことで、新聞に写真を掲載されたとき
凶悪犯と思えるような顔写真だった、「あれは警察が修正した写真を提供するのだろう」と言っていたことがあります
植草氏についての写真では、
・目をむいている
・座った写真は上半身が変、良い印象を持てないように細工している?
警察の提供した写真でないだけに、マスコミがここまでやるのか、という印象です
投稿: | 2009年6月30日 (火) 21時17分
神州の泉 様
今回の最高裁の上告棄却は、推測された通り小泉竹中一派の陰険な画策によることは間違いないですね。
このことは逆に見れば、彼らが国家への重大犯罪を実際に犯していることを証明するもの(そのような事実がなければ起こりえないアクション)であり、だからこそこのような不条理な判決を強いたということですね。
この判決の結果、植草さんは収監されることになり、ご指摘の通り最悪の場合は謀殺されることがないとは言えません。(植草さんの冤罪疑惑については、かなり世間に知られてきたように思いますが、まだ国民的な広がりとは言えませんので、その面からの歯止めはあまり期待できません)
となると、副島さんが主唱して結成される「植草救援委員会」で国民的総意を喚起する啓蒙運動を早急に開始することが喫緊の対策になるのではないでしょうか。
その一環として、国民的な抗議集会や国会や最高裁周辺への抗議デモなどを行い、(メディアの取材、記事掲載などを通じて)世間の関心を高めるなども有効だと思います。幸い郵政民営化については国会でも見直しの論議が盛んになってきているので、これと同調する形でその一環として運動するのがよいのではないでしょうか。これにより謀殺の危機を極力排除できると思います。
横須賀市長選でも小泉支持の凋落傾向は現れてきましたが、一刻も早く国賊小泉・竹中とその信奉者たちの末路を見届けたいと思います。
投稿: 純一 | 2009年6月29日 (月) 22時26分
植草氏が冤罪かどうかは分かりません。彼の人となりを知らないし、個人の性癖はステータスとは関係無いから。
ただ同氏の発信する内容は自民党やトップの官僚たちには痛いところを突いてるようです。現下の日本の惨状は小泉政権から始まってるのは事実。
なんでもアメリカ流にして喜ぶのは輸出に頼る経済人とアメリカ人くらいでしょう。全ての事を貨幣の量に換算してランクを付ける単純な発想は日本人やアジアの国民には理解し難い。
個人的には政党の時代は終わったと思うので民主も自民も選択肢には無いのだけれど、もう政権交代は必定でしょう。世界的に見ても今後は民族派か国際派かの争いでしょうかね。
投稿: エテポンゲ | 2009年6月29日 (月) 20時08分
こういう話は聞き飽きた。選択能力の無い国民性の問題である。明日何を食べるぐらいの責任は持とう。
投稿: | 2009年6月29日 (月) 16時57分
冤罪説、犯人説両方あり得る。ただ、被害者が逃げようと思えば逃げられるような場所でおしりを触ったぐらいで懲役4カ月は不当である。未決拘留130日も長すぎる。検察が自民党政権を擁護しようとするのは間違いないし、足利事件でも明らかなように裁判官に人権意識はない。
投稿: つーさん | 2009年6月29日 (月) 15時28分
産経は、ほんとうにおかしくなってしまいましたね。
最初に感じたのが、「正論」欄の変質です。一時購読を中止
して、地方紙に代えていましたが、面白くないので、また、
産経に戻しました。
それで、思い出したのが、フジとライブドアの顛末です。
和解の条件に「業務提携」が入っていましたが、これが、
変質の原因なのでしょうか。時期的には、ぴったり合って
いますが。
フジは、軒を貸して、母屋を取られてしまったのでしょうか。
株式を死守するために、魂を売ってしまったのでしょうか。
フジテレビの韓流による浸潤は、目を覆うばかりですが、あ
きらかに、日本人を挑発するための戦術です。ネットでは、
TBSが、特に、槍玉にあがっていますが、どこも、まった
く、同じです。NHKもひどいものです。どうなってしまっ
たのでしょう。狂ったとしか思えません。
先日の産経紙の「主張」は、郵政民営化に、新たに、諮問会
議が設置されたことで、株式上場が遅れるではないかと、懸
念を示していました!!
昨日の「報道2001」には、フジプライムアドバイザーの
肩書きで、元東大総長の小宮山氏が出演していましたが、専
門は、化学工学ということでした。専門分野に関係なく、大
学の先生は、政治に利用されてしまうのですね。利用されて、
魂の抜け殻になってしまったような先生方が、ごろごろおら
れますね。(小宮山氏のことではあ
投稿: 一葉 | 2009年6月29日 (月) 15時21分
コメントを以前の先週末の貴記事にしてしまいましたが、本記事に対しての方が妥当と思いましたので再寄稿させて戴きました。小生 植草さんの本を熟読した一人ですが、かなりの間 熟考して来たあとは神州の泉・管理人さんのご意見に全面的に賛同し、現在の蔭の政治家に憤りを感じるようになっています。悪徳の 小泉・竹中を中心とした利権グループですね。その中心で蔭の
汚れ役、と言うより陰謀をめぐらしたのは、元公設秘書の太っちょ、飯島某 が、直ぐにイメージ出来ます。
彼は陰謀の手先で警察・検事関係への指示に動いたのでしょう。怪しからん売国奴達です。彼等の施策の結果は、きな臭い匂いばかりがする事案のオンパレードです。
もう国民の全部が気づいて騒ぐべきです。
投稿: | 2009年6月29日 (月) 13時36分
ネット社会とメディアの論調がこうも違うのは異常に感じます。
この国は本当に日本なのでしょうか?
投稿: ketyappy | 2009年6月29日 (月) 13時21分
>フジサンケイグループが取ったこの手法は、逆効果に出ている〜見ている人は何かの印象操作だと思うだろう。
失礼します。
確かにそう思う人も多いかもしれません。インターネットの書き込みを見ても、副島隆彦氏の本の売り上げを見ても、植草先生の冤罪を信じる人が増え続けているようにも思いますが、例えば一時は小沢氏の「秘書逮捕は国策捜査だ」と意外なほど一般でも騒がれましたが、冷静に見れば陰謀説的な楽しみ方でしかなかったように思います。
ネットというものは、やはり少しでも政治に関心のある人が集まっているのですが、実際に周囲の人に「植草事件は冤罪だ」と言うと「ミラーマンでしょ?」「陰謀論?」と信じない(マスコミの情報を頑に信じている)人ばかりです。先日のインフルエンザ騒動で、あの時の市民のマスクを買いに走る行動を思い起こせば「やはり国民の8割は“B層”なんだな」と思って愕然としました。
ここに集まる私たちにしなければならないことは、実際に周りの人に話すことです。できるだけ信じてもらえるまで話すことです。分かってもらえれば、その人もまた誰かに話します。
ネット上で植草先生の支援者が増えたといくら喜んでいても、それは国民のごく少数です。ネット人口だけでは絶対に多数派にはなれない。本が売れているといっても、読書人口が急激に減少している中でのことです。
本当に支援したいのなら自分の言葉で周囲に話すことです。マスコミを使わず、自分の脚で地方を回る小沢氏の政治活動を見習いましょう。ネットに書き込んでいるだけならマスコミを活用する自民党といっしょです。
と、ちょっと大げさかもしれませんが、とにかく“生の声”も使いましょう。
投稿: マツヤマ | 2009年6月29日 (月) 12時13分
>彼がいつも穏やかで上品な表情をした人物であることを知っている。<
そしてそういう人に変な性癖をもっていたり、痴漢という卑劣な犯罪を犯したり、万引きをして人に迷惑をかけることに限りない喜びを感じるクズのような輩が多いことも知っている。
投稿: 越前谷 | 2009年6月29日 (月) 12時05分